第一章 第17話 アヤカの指導
翌朝
話し合いの結果、オルタナは砦の探索。コルセイとアヤカは砦の周辺にて素材の採集しつつ、今後に向け戦闘訓練をする事となる。
「やっぱり砦の探索は三人でした方がよかったんじゃないかな?」
コルセイは昨日の件に負い目を感じているのか消極的な発言が目立つ。アヤカは眉間に皺を寄せながら注意を促す。
「砦の中を探索するのはオルタナが最適ですし、何かあった場合は深入りしないよう三人で話し合い済みですよね。今回の目的を達成する為にも、帰路を確保する上でも、コルセイの成長は必須です」
「……たしかにそうだね」
口から出る言葉は自然と小さくなり、昨日の自分の不甲斐なさを思い出す。やはり成長する事でしかアヤカとオルタナの気持ちに応える事はできない。何とか気持ちを奮い立たせるとコルセイは顔を上げた。
「コルセイは自分の能力を伸ばすつもりでここにきたのかもしれませんが、昨日の件もあり、悠長な事を言っているわけにはいかなくなりました。即戦力が必要です。私から戦闘の心得をいくつか教えますので自分のスタイルに合わせて取り入れて下さい」
コルセイは背筋を伸ばし姿勢を正す。
「因みにゴブの件は前例もありませんので、今後どの様になるかもわかりません。相談には乗りますが空いてる時間を使って自分で考えてみて下さい」
「まずは現状のコルセイですが戦闘の心構えが全く出来ていません。零点です。ゴブの戦闘準備だけではもちろんダメです。どの様な戦闘が予想されるか? アクシデントは何が起きるのか? 気候や天候。魔物の種類、わかる事は常に調べておいて下さい。装備品については騎士団からの支給品はそこそこ何処でも通用するものですが、常に最適化した装備を心掛けて下さい」
丁寧な言葉を使っているものの、カルディナと同じで言っていることはかなり辛辣である。
コルセイは気持ちを強く持ち、受け答えをしっかりしているつもりでは合ったが、情報量が増えるにつれ、自分で何を聞いているのかわからない状態となっていた。
「ゴブの準備に、気候と、えー。装備品は気をつけて、後は?」
「ゴホン。一度に覚えなくて大丈夫ですよ。私が一番伝えたかったことは全ての事について準備が大切という事です。今回はお金も頂いてますし特別にメモにしてきました。後でゆっくり読んで覚えといて下さい」
ずっしりとした重みと厚さある紙の束を渡される。これなら人を殺せる武器にもなりそうである。
「……メモ? 辞書ぐらいありそうなんだけど。あ、ありがとう。後でしっかり覚えるよ」
「では、具体的な話に入っていきます。ゴブと二人で戦うのも状況によってはありでしょう。ですが基本的にコルセイはサポートに回る事をお勧めします」
「理由を聞いても良いですか?」
アヤカの助言をまとめると大まかには三点。
※ ゴブを前線に出す事により自分がダメージを負う事なく一方的に戦える。
※ 状況を把握してその後の展開をしやすい。
※ コルセイ自体の耐久性を上げる事が難しいと考えられる。
「細かく上げるなら他にもありますが、大きく分けるとこんな感じです。こちらも詳細はメモを読んでください」
神殿騎士団に入って、基礎を学ぶ間もなくここまできたが、よく考えてみれば今生きているのも奇跡的である。自分自身を鑑みても何が弱点で何が強みであるかわかってない事に今更ながら気付かされた。
「っと言う事でサポート力を強化する為、貴方には私が使っている道具をいくつか教えようと思います。先程まで私の言った事を踏まえて、何を使うかは貴方が判断して選んで下さい」
アヤカに実践向けのアイテムを教えてもらう。数が多く覚えきれそうもないが先程のメモにも記載があるようなので自分の戦闘スタイル合った物を後で考えれば良いだろう。こうして半日に渡るアヤカのレッスンが終わり、コルセイはオルタナに合流すべく砦に向かった。




