第四章 第48話 黒鎧 vs コルセイ
黒鎧の一人に目掛けコルセイは走り込む。そんなコルセイに対し黒鎧は真正面より《土の刃》を放出する。
「直線状でなら!」
《土の刃》は直線での攻撃である。真っ直ぐにこちらから攻撃を仕掛ければあちらの攻撃の予測も難しくない。
予め先に走らせて置いたゴブリンが盾を翳すと《土の刃》は大幅に軌道を反らしてコルセイから離れる。
「食らえ!」
コルセイが黒鎧に火炎瓶を投げる。しかし、そのタイミングを見計らってコルセイを光が襲う。もう一人の黒鎧による《氷道》がコルセイのすぐ目の前へと迫っていたのだ。
【骸の道】
リュケスより放たれた【骸の道】が《氷道》を相殺し、間一髪の所でコルセイの命を救う。
次の瞬間。
パリンッ
小気味良い音と共に黒鎧のバシネットに炎が上がり黒鎧がもがき苦しむ。炎での攻撃が効くか正直不安ではあった。しかし、あの苦しみよう、効果はあったようだ。
黒鎧は地面に両膝をつき腕を垂らしている。
【骸の障壁】
一方、リュケスは氷使いの黒鎧と骸と氷の撃ち合いをしていた。リュケスの【骸の道】では相手を拘束することしかできない。しかし、相手が使う《氷道》との相性は悪くない。リュケスに《氷道》が当たったとしても致命傷にはならないからだ。リュケスは距離を詰めつつ黒鎧へと迫る。
《氷道》
黒鎧も焦ったのであろうか? リュケスの間合いに入る寸前で《氷道》を使ってくる。リュケスは落ち着いて【骸の道】で《氷道》を相殺しようとする。しかし《氷道》は不自然に勢いを失い、発動をキャンセルしてしまう。
「!?」
一瞬の隙をつきコルセイとリュケスの前には《氷壁》が出現。黒鎧を見失ってしまう。
「まさか!」
《氷壁》から少し離れた場所より発動される黒鎧の《氷道》がコルセイの片足を捉える。
「解除ぉぉぉ!」
骸の自分の左足を解除してゴブリンに自分ごとタックルをさせる。間一髪、自分が氷像になるのを逃れる。
(あ、危なかった。逆の足だったら死んでた……)
《氷道》を回避された黒鎧は再びロッドを前に掲げ、地面を芋虫のように転がるコルセイに魔法の標準を合わせようとする。
ゴッッ!
後方よりリュケスの一撃。黒鎧がリュケスにより袈裟懸けに斬られる。黒鎧は斜めに真っ二つに割れるとそのまま地面に倒れ込んだ。
※※※
一方、ガイブは赤鎧に対しかなり善戦していた。強敵であると踏んだガイブは赤いガラス管の薬剤を最初から使用し短期決戦を狙ったのだ。
何かしらのギミックがあると考えられる赤鎧の技。繰り出す前に瞬足による連打からの連打で赤鎧にダメージを与え、最後の渾身の一撃により赤鎧の身体が凄まじ勢いでコルセイ近くに飛ばされてくる。
「ガイブ。やったかのか?」
「ああ。今、とどめを刺す所だ!」
ガイブの凄まじい連打は地面を抉り、赤鎧は土煙に巻かれている。少しずつ晴れる土煙、赤鎧の上半身が見える。どうやら赤鎧はまだ立っているようだ。
「野郎。もう一発殴ってやらなくてはいけないみたいだな!」
ガイブが腕を回しながら赤鎧へと向かおうとする。
「ま、待てガイブ。何かがおかしい。あれは……」
赤鎧は剣を地面に突き刺し、それを杖のようにして立っている。しかしその剣の先には先程コルセイが火炎瓶で倒したはずの黒鎧が倒れている。
赤鎧の馬鹿でかい剣は脈打つように黒鎧の中身を吸収している。コルセイとガイブが呆気に取られている僅かな間に黒鎧は微動だにしなくなった。
「……コルセイすまない。仕切り直しになってしまったみたいだ」
赤鎧の全身は鎧に血管が張ったように脈を打っており、先程までの戦いの疲れなどはない。ただでさえ大きい体が更に肥大化したように見える。しかも赤鎧の能力は仲間を吸収して傷を回復するのではなく、回復しつつ能力を得るという極悪の能力のようだ。
赤鎧の眼が輝くとコルセイとガイブに向かい《土の刃》が発射された。




