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第四章 第46話 騎士もどき

 

 階段を降りる。そこには台座以外何もない部屋があった。加工された石で部屋は作られており、壁や床に石が嵌め込まれている。部屋は暗く、ゴブリンは全ての松明に灯りをつけ光源を保つ。部屋の中心の台座の上には石板があり何やら文字が書いてあるようだ。


「これは神聖文字……か?」


 石板に書かれている文字はデュラハンの剣に書かれていた同じ神聖文字である。しかしそれが分かったからといって解読ができる訳ではない。コルセイは指で文字をなぞってみるが特に変化はない。


「ガイブ部屋を調べよう」


「そうだな。ここが行き止まりのはずはない」


 コルセイとガイブは部屋の隅から順々に床、壁、天井と探してみるが特に変わりはない。そんな二人を確認しながらナンナも自分にも何かできないかと護衛のゴブリンを足蹴に台座に登ると石板を覗く。


「ガウ」


 石板を指でなぞる。細いナンナの指は刻まれる文字に吸い込まれるように次々と文字をなぞってゆく。ものの数分も立たない内に文字をなぞり終わると今まで何の反応も示さなかって石板の文字が薄らと桃色に輝く。


「ガッ?」


 ナンナが間の抜けた声をあげるとガイブがすぐに異変に気付く。ナンナの元へ駆けつけようとするが、その暇もなく一瞬で部屋は暗転し、コルセイとガイブは内臓の浮遊感と共に身体を床に打ち付けられる。


「グッ」


 咄嗟の事態に状況を飲み込めないコルセイ。身体は動くようだ。大きな負傷もしていない。コルセイは回りにいるゴブリンを自分の回りに集合させるとほのかに視界が明るくなり始める。


(この灯りは?)


 コルセイの回りは高い壁に囲まれ、はるか頭上に桃色の淡い光が輝いているのが分かる。石板のある台座を中心にして部屋全体が陥没したようだ。


「ナンナ! 無事か!」


 ガイブの声が轟く。少し遅れて「ガウガウ」とナンナの声も聞こえて来る。どうやら二人とも無事のようだ。ナンナが台座で何かしていた時にこの事態が起きたように見えた。頭上の光っているところにナンナがいると考えていいだろう。


「ガイブどうなっている? 何か分かったか?」


「いや何も分からない。しかし、気付かないか? 部屋が明るくなってきている」


 部屋が徐々に明るくなっている。今では自分の周囲ははっきりと見えるほどだ。コルセイは立ち上がると注意深く壁や床を見る。


 ボッ


 コルセイから離れた場所の壁に松明が灯される。


 ボッボッ


 松明の灯りは距離をどんどん縮めながらコルセイの近くまで達する。全ての灯りがつき、壁は一定間隔で炎が灯される。温かみのある灯りがコルセイの回りを照らす。


「これは……」


 松明の灯りにより状況が明らかとなる。コルセイの周りを囲むように横たわる大勢の騎士。フルプレートを装着しバシネットを被っている。コルセイが騎士に気付くと小さな金属のすり合わせる音と共に騎士が立ち上がってゆく。


「試練を」


 声が部屋全体に響き渡る。声の主はどこにいるのだろうか? コルセイは目線だけで回りを確認してみるがそれらしき者は見当たらない。全ての騎士が立ち上がるとゆっくりと腰に着けられた剣に手をかける。


「「「試練を!」」」


 幾重にも重なった声が部屋に響くと騎士は一斉に抜刀し、コルセイに向けて剣を構える。コルセイはゴブリンで自身を囲むように隊列を組む。部屋の床が落ちた際にゴブリンは半分ほど逸れてしまったようでコルセイの回りには現在十匹ほどのゴブリンしかいない。


「うぉぉぉ!」


 ゴブリンを前面に押し出しコルセイは騎士を強引に押し退け壁際に突き抜ける。騎士は次々とコルセイに剣を振り下ろして来るがゴブリン達の重ね合わせた盾を突破する事はできない。


(囲まれたままで戦うのはまずい)


 コルセイは戦闘を最小限にガイブとの合流を目指す。ガイブの突破力ならこの騎士の軍団も相手にできる。自分はできるなら援護につき状況を見極めたい。


 ドンッ


 遥か遠くで何かが崩れるような音がする。あの派手な動きはガイブだ。場所は分かった、しかし、状況はあまり芳しくない。囲みを強引に突破してガイブに合流したいのは山々だがかなり距離がある。


「運に見放されているというわけではなさそうだな!」


 ゴブリンがコルセイのすぐ近くへ何やら運び込んでくる。


「デュケス!」


 棺の中からは黒い全身鎧に身を包んだスケルトンナイトのリュケス。棺の魔力が行き渡りカタカタと棺の蓋が開く。


 コルセイの反撃が始まった。



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