第四章 第24話 コルセイvs化け百足
なし崩し的に始まった戦いではあった。しかし、状況は五分五分である。相手は化け百足三匹、内二匹はまだ大人に成りきれていない百足。ゴブリン兵はコボルト兵と拮抗状態であり。コルセイが百足三匹と戦う絵が出来上がっている。
(俺の全力ではあの三匹は倒せない。逃げる事なら……。しかし、ガイブに命を助けられた恩を仇で返す訳にはいかないな)
自分の命を賭して化け百足を倒す決意を固める。コルセイはギブに渡された箱を開け、意識を同調してりュケスを使役する。コルセイの足はリュケスに戻りコルセイはドラゴンの上にしゃがみ込む。
「二匹同時に意識同調使役で戦う」
コルセイの中に流れ込むリュケスとブリザーブドドラゴンの意識。侵食してくる各々の意識がコルセイの身体に異変を及ぼす。歯がカタカタと震え、全身の骨格が安定しない、肌には薄らと鱗が現れ、目の瞳孔が縦長に変化する。
(魔力制御のおかげで意識同調使役の効率が格段に上がっている。しかし、これは諸刃の剣でもあるな)
ブリザーブドドラゴンのスレイプニルナイトに寄生されていた感情やリュケスの無念さから来る負の感情がコルセイの中に渦巻く。気を抜くと自我が崩壊しそうである。
「オォォォォォ!」
コルセイは化け百足と戦う事だけに集中し、ブリザーブドドラゴンで真っ直ぐに化け百足に突撃する。巨体と巨体がぶつかり合う。
ズウゥゥゥゥン
コルセイが百足を押し始めると、残りの二体の百足が巨体を鞭のように使いコルセイ本体を狙う。
《骸の障壁》
リュケスが発動した壁に阻まれ、百足の巨体はコルセイには届かない。
「くらぇぇぇぇぇ!」
魔連弩の弓を目の前の化け百足の目に向けて放つ。弾倉を着脱し、用意されていた弾倉全ての弓を化け百足の両目にぶち込む。
グシャァァァァァァ
ブリザーブドドラゴンと押し合うのをやめ状態をそらす化け百足。体勢が崩れた所をブリザーブドドラゴンの両腕の爪で交互に引き裂く。化け百足は勢いよく後ろに倒れるとそのまま起き上がらなくなる。
「一匹ぃぃぃぃ!」
自我を保つ為、自分自身を鼓舞する。デュケスが骸の壁を解除すると目の前にいた残り二匹の百足はコルセイ達と距離を空け縦列に並んでいる。
前面にいる百足を盾にするような隊列を組み、二匹の百足は全身の触覚を鞭のようにウネウネとさせブリザーブドドラゴンとリュケスが来るのを待ち構えている。
「行ゲェェェ」
リュケスがブリザーブドドラゴンの上から脚を踏み込むと《骸の道》が二匹の百足に走る。前面の百足を骸が拘束するが、すぐさま百足の髭で骸を叩き潰される。
コルセイは結果を待つことなくドラゴンを突進させ、前面の化け百足へと衝突する。
「狙えぇぇぇ!」
すかさずリュケスが百足の顔の上に降り立つと眼に突きを繰り出す。しかし、二匹分の髭の攻撃と足場の悪さからリュケスが百足の頭より振り落とされてしまう。
ブォォォン
百足の髭がドラゴンの上のコルセイを狙ってくる。コルセイは歯を食いしばり身体を低くすると、辛うじて髭を躱す。
「今だ」
僅かな隙をついてブリザーブドドラゴンの爪が低い角度から百足の頭に突き刺す。
グッァ
間抜けな声が上がる。もう一押しで戦闘不能まで持っていけるはずだ。しかし百足はブリザーブドドラゴンと距離を取ろうとしない。むしろ自分の体を爪に押し当てるとそのままブリザーブドドラゴンの身体と自分の身体を固定しようとする。
「な、何を」
コルセイがドラゴンの身体を動かして何とか離れようとするが固定された腕を離す事は出来ない。コルセイがデュケスを使い身体と身体を切り離そうとすると奇妙な音が聞こえる。音は落ち葉が風で運ばれるような音であり、サラサラやカラカラと聞こえる。音に気づいたコルセイが辺りを確認するとその音はザワザワという音に変化しコルセイの真下に広がっている事に気付く。
「下か!」
ブリザーブドドラゴンの下には無数に広がるのは百足の幼生。幼生はブリザーブドドラゴンの下に潜り込んでくる。やがて音はカリカリという音に変わり、瞬く間にドラゴンの身体の制御が取れなくてなってゆく。
「く、喰っているのか!」
身体の一部を失い、ブリザーブドドラゴンの身体がぐらつく。リュケスで何とか百足の幼生を振り払おうとするが焼石に水で状況は全く改善されない。
「ま、まずい」
コルセイの体に虫に刺された湿疹のような傷ができ始める。コルセイは意識同調使役を解除するとブリザーブドドラゴンの身体がすぐさま音を立て、その場に座り込んだ。
「リュケス!」
コルセイは自分の体をリュケスに担がせるとある場所へと走り込む。
(はぁはぁ。甘かった)
目的の場所に着く。コルセイは意識同調使役を使い。場に転がるゴブを使役する。
「……最後の手段だ」




