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第一章 第13話 いや、俺関係ないでしょ

 

 うつろいの森に続く街道


「で、何で、俺もこのメンツに加えられてるわけ?」


 両腕を組み、額に青筋を立てているイケメンがこちらを睨みつけている。


「カルディナ様から貴方も連れてくように強い要望があったの。オルタナの捜索能力は必ず必要になるって」


 アヤカは口調に一切の抑揚をつけず淡々と話す。こちらの話をまともに聞く気はなさそうだ。


「で、コルセイ何だそれは? 怪しい服着てるものは? ゴブリンか? ま、まさかお前が動かしているんじゃないんだろうな」


 ゴブリンが歩き回るのは宜しくないと言うことで、アヤカ作成の特注品レザーマスクをゴブリンが被っている。魔法にも耐性のある、値の張るものだが、カルディナ様のポケットマネーらしいので詳しい額はわからない。ただ、マスクを被ったとはいえ、人にしては前傾姿勢過ぎるし、口を開ければはっきり犬歯が見えてしまう。よく見れば魔物とバレてしまうだろう。


 コルセイは一切こちらを見ない。下を向き、この世の終わりでも見ているかのような表情を浮かべている。それに対してゴブリンはコミカルな動きを混ぜながらオルタナに擦り寄り、コクコクと首を動かしている。


「はぁ。二人ともどういう事か説明しろよ」


 それからはオルタナの予想を超える答えが返ってくる。


「何々? 淡い期待を裏切られ拉致監禁。生命の危機に晒されながらも難題を出され、何とかクリアしたと思ったら、もう表の世界で生きてけない人間になりかけてた?うん。鬼畜の所業だな。


 んで、お前は? ただ、鑑定をして欲しいと言われたので来てみたら訳のわからないもの見せられて、もしかしたらこの世にいてはいけない人間かもしれないのに異形の森でその人間の成長を見守れって? うん。それも酷いな」


「「でしょ?」」


「まあアヤカは金貰ってるし、自業自得感あるけど。コルセイにはまじで同情するぜ。何でこうなったんだろうな。このままだとまじで面の世界で生きて行けないかもな」


「や、やっぱりぃ。う、うぉぉぉぉぉ」


 コルセイの目には一瞬で涙が溢れ出る。膝から崩れ落ち、地面に顔をつけると声を出し泣き始めた。


「まあ落ち着け。表向きはスタンピートの原因を調べに来てるという程で、この場には三人しかいない。そうでなくてもうつろいの森に人なんていない。この森にいる間はとりあえず安心しろよ」


「そうよ。貴方のその訳の分からない能力をサポートする為に私達が呼ばれたんだから。貴方がそんな調子じゃ困ってしまうわ」


「その事なんだがなアヤカ。隊長はコルセイの事を本当に育てたいんのだろうか? コルセイの成長目的以外にここには何かあるんじゃないか?」


「うーん。言われて見れば確かに不自然ですね」


「そうだろ。隊員二人と高い金を払ってアヤカを連れてくとか、普通に考えて有り得ないだろう。たぶん何かある」


「確かに」


「よし。じゃあ、とりあえずの当面の拠点探しと食い物集めだ。ほら、元気出せよ!」


 コルセイが渋々立ち上がり、とりあえずゴブリンを連れて森の中に入ろうとすると、後ろより呆れた声でアヤカが話しかけてくる。


「貴方達馬鹿ですか?お遊びで探索にきてる訳じゃないんですよ」


 あやかの後ろには巨大なバックパック、よく見ればコルセイとオルタナ用に同じ大きさのバックパックが用意されている。中を開いて見れば、野戦用レーションやナイフ、ロープ、携帯用火起こしから方位磁針等一通りの装備が入っている。感心して顔を上げるとアヤカと目が合う。アヤカは地図を広げイラついた口調でコルセイとオルタナに説明を始める。


「この地図はまだこの森に人が入っていた頃の地図です。もう三十年ほど前の地図ではありますが、何もないよりはマシです。この先十キロ程進んだ所にヒエルナの調査隊が当時使っていた砦があるはずです。この森での野営は本当に危険ですので、その砦を拠点として活動します。さて、この先については陽が落ちないうちに移動しながら話します。ちなみに行くつもりはありませんが、ラマダンの古城も砦を拠点になら行こうと思えばいけます」


 古ぼけた地図にはアヤカのチェックがあり、ところどころ注釈が加えられている。オルタナは地図を確認するとテンション高めにアヤカに話しかける。


「流石何でも屋頼りになるぜ! 良かったな、アヤカがいれば何とかなりそうだな!」


「私は一気に不安になりましたよ。はぁ。大まかな道は私が指示しますから先頭はオルタナ、中程にコルセイ、私は最後尾に着きます。陽が落ちないうちに早く行きましょう」


 こうしてちぐはぐな三人のうつろいの森探索が始まった。


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