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第一章 第12話 女子会

 

「で、ランドルフさん。何で客室が座敷牢なんですかね?」


 コルセイが案内されたのは数人は入れるであろう座敷牢である。先程の部屋からさほど離れてもいない所にありトイレ完備、ベッド完備、小さめの机には牢には似つかわしくない豪勢な食事が用意されている。


「さっきも隊長が言ったけど、ここでの事は公にはできないわ。今、コルセイちゃんには外に出てもらっては困るの。ごめんね。お詫びという訳じゃないけど食事は美味しいわよー! ということでここで我慢してて」


 ランドルフが鍵を閉め、そそくさと逃げようとするのを急いで引き止める。


「ちょっとランドルフさん! まだ聞きたいことがたくさんあります!」


「コルセイちゃんとゆっくりとお話ししたいところだけど、私、隊長のところ戻らなくちゃ」


「ランドルフさん!」


「うーん。じゃあ一つだけよ」


 聞きたいことはたくさんある。あのアヤカという人物、ここまで秘密裏に行動させられる事情、さっきのゴブリンに起きたのは何なのか? カルディナの屋敷の事だって何で座敷牢なんかがあるのか不思議である。


「じゃあ、とりあえず鳥頭のアヤカさんについて教えて貰えますか?」


「アヤカは隊長の個人的な知り合いよ。魔法は使えないけど魔力の事に関しては精通してる。元々アヤカのお父さんが隊長とお付き合いがあったの。今は、アヤカが引き継いでやってくれてるわけ。ただ、あの格好から想像もつくかもしれないけど神殿騎士団とはあまりよろしくない関係よ」


「えっ。とういう事はそんなアヤカさんが俺の事見に来たって事は。それは」


「当たり前じゃない。死体のゴブリン動かすなんて異端審問官がすっ飛んでくる案件よ。じゃあ、また後でね。あっ、これ練習しといて」


 ランドルフは座敷牢の鍵をかけると、光の速さでその場を去る。気付けばさりげなく先程のゴブリンの死体がベッドの横に置かれている。


「あ、先に俺のこと聞けばよかった。いや、違うな……この状況やばくないか?」


 ※※※


 地下室訓練場


「ランドルフお帰りなさい。遅かったじゃない」


「申し訳ありません。コルセイちゃんが不安がっちゃって」


 こちらの部屋にも大きめのテーブルにこの場に似つかわしくない豪華な食事。アヤカとカルディナは黙々と食事を口に運んでいる。ランドルフが席に着くのを確認するとアヤカがカルディナに話しかける。


「で、彼はどうするんですか?」


「このまま隊に置いといても良いけど、さっきの能力は隊で使えないわよね」


「あたりまえです。コルセイちゃんが縛り首になっちゃいますよ」


 ランドルフは先程の不安そうなコルセイの様子を見て同情気味に進言する。


「アヤカあれは何かしら? ビーストテイマーとかモンスターテイマーになるの?」


「全く違うと考えます。テイマーは長い間の信頼関係を経てお互いにウィンウインの関係で行動するものです。そもそもあのゴブリン生きてないですし」


「じゃあネクロマンサーとか? まさかコルセイちゃんがリッチってことわないわよね?」


「リッチってことは流石にないと考えます。ネクロマンサーは可能性の一つとしてはあり得ますよね。ただ彼に触れた時に感じた魔力の流れから見ても、神殿騎士団に入ってきた状況を鑑みても、あの超稀少なネクロマンサーとは考えにくいです。そもそもネクロマンサーは魔法を生業とする魔術師ですし」


「そういえば、コルセイの様子はどうなの? ランドルフ、ちゃんと設置してきた?」


「はいはい。お言いつけの通りにしっかりと。後はアヤカお願いね」


 アヤカは経典程の大きさの金属板にボソボソと声をかける。金属の板には見た事のない文字が書かれており、しばらくすると金属板は薄っすらと光を放ち始めた。


「それ、魔法じゃないのよね?」


 以前にも見た事があるのかカルディナから確認される。


「はい父の私物です。レリックですので、練習すれば誰でも使えます。宜しければカルディナ様も使ってみますか?」


「いいわよ。貴方の商売道具なんでしょ? 壊したら大変じゃない」


「そんなに使い勝手が良いものでもないんですよ。遮蔽物が多いところや、魔力が濃い所でも色々拾って使い物にならないいですし。あ、映りましたよ!」


 金属板にぼんやりと座敷牢のコルセイの様子が映し出される。先程置いてきたゴブリンを使い、右に左にとステップを踏ませてみたり、ベッドの上によじ登り、上から飛び降りたりしてる様子が映し出される。


 コルセイは少し離れた所で椅子に座り、ゴブリンに集中しているようだ。そのうちに奥にあるモップを使って槍の真似事を始めるが手先の制御が難しいのかモップを落としてしまう姿が見受けられた。ちなみに机の上の食事は喉を通らなかったのかほとんど手がつけられていない。


「コルセイやるじゃない! ゴブリンをもうあんだけ動かせるようになってるわ」


 コルセイの気持ちを全く理解していようとしていないのは間違いない。カルディナはここ最近で一番の笑顔を見せ、その笑顔の先に見せる表情にアヤカとランドルフは凍りついている。不安になったアヤカがたまらずにカルディナに声をかける。


「それで隊長。この先、彼ををどうするつもりなんですか?」


「最初は隊に置きながら事の顛末を拝むつもりでいたんだけど、もう私の想像を超える状況になっちゃってるし、ひょっとしたらひょっとするかもしれないって思ってきたわ」


「そ、それでカルディナ様。どうするんですか?」


「結論を急ぐ男はモテないんじゃないの?」


「私は女だからいいんですぅ!」


 揚げ足を取られたアヤカが口を膨らませる。口元しか見えないがはっきりと怒っているのがわかる。


「冗談よ、冗談。うつろいの森に暫く行かせましょう! あそこなら人目を気にする事なくあのゴブリン使えるでしょ?」


「カ、カルディナ様、本気で言ってるんですか! あそこは未開の地、人の行くとこじゃないですよ。島の奥にはラマダンの古城もあるじゃないですか! 一般人とゴブリン一匹。確実に死にます!」


「あら、コルセイちゃんの事心配してるの? アヤカも気になっちゃった? コルセイちゃん可愛いからしょうがないわよね~」


「ランドルフさん冗談はやめて下さい。私は年上の男性がゴニョゴニョ」


 勢いに任せてうっかり自分の好みを話してしまったことを恥ずかしがるアヤカ。言葉を最後まで言い切れずに口をモゴモゴさせている。


「アヤカも可愛いわねぇ。大丈夫、安心して。うつろいの森には貴方も一緒に行くのよ!」


「――えっ! ちょっ、ちょっと」


(ひょっとしたらラマダンの事もわかるかもしれないしね)


「ちょっとは無し。今日は気分が良いわ! ランドルフ、奥に大隊長から貰ったワインがあったわよね? 今日は飲むわよ!」


「いいですね隊長! 今日は女三人でパァーッとやちゃいましょうか!」


 満面の笑顔の少女に、それに続く満面の笑顔の大男、そして膝をつきうな垂れるカラス頭の少女。その後、三人の女達による女子会? は深夜遅くまで続くのであった。


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