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第三章 第35話 違和感の正体

 

 翌朝


 皆でハドリスをナスウェルの入り口まで見送る。ハドリスの告白にはあんなに複雑そうな顔をしていたランドルフ。しかし、ハドリスが街を出て行くと滝のように涙を流し泣き崩れている。


「アヤカお願いできる」


「はい。任せて下さい。さあ行きますよランドルフさん」


「ウォォォォォン。ヒッグ。ハドリスじゃぁぁぁん」


 ランドルフをアヤカに任せ、コルセイは目的の場所にオリビアと向かう。街中をしばらく歩くとオリビアより質問が投げかけられる。


「コルセイ。その足の秘密、そろそろ教えて欲しい」


「ああ、これね」


 前日のやり取りからオリビアは気になっていたようだ。コルセイはズボンの裾をめくり得意げな顔をする。


「凄いでしょ!」


 ズボンの中には太い骨が二本。白い脛骨(けいこつ)腓骨(ひこつ)が綺麗に並んでいる。骨は関節部分を崩す事なく器用にコルセイの足を支えている。思わずオリビアは目を大きく見開く。


「凄い」


 オリビアが詳しい説明を求めるとコルセイは少し自慢げな顔でオリビアに説明を始める。


「スケさんの足を借りてるんだ。自分の足と一体化させるのが少し大変だったけど、今までの応用だからね。慣れれば一部分を拝借して歩くのは難しくなかったよ」


「以前と同じ位動けるの?」


「それは難しいかな。多少走ったりはできるけど剣で踏み込むような事はできないと思う。まだ実験の段階だから、今後どうなるかはわからないけどね」


「そっか。良かった! でも、無理はしないで。何かあったらすぐに私に言って」


「うん、ありがとう。あっ!」


 コルセイは何か思い出すと突然そわそわし始める。


「どうした?」


「いや、あのブリザーブドドラゴンはどこにいるのかなっと思ってさ。オリビア知ってるかな?」


「ああ、あれならマフィアが近くの倉庫に運んでくれた。ピレシーから運んで来た氷と一緒に保管してあるから腐敗もしてないはず」


 焦っていたコルセイが胸を撫で下ろす。自分が使役する魔物の事になると必死になる様子が最近顕著になってかた。


(後で会いに行かないと)


「……今、何を考えてた?」


「あ、いや後で見にいこうかなって。そういえばブリザーブドドラゴンなんだけど《亜種かな》って以前は言ってたけど、どうやらあの甲冑の奴に寄生されていたみたいなんだ。使役した時にドラゴンの感じていた苦しみとか怒り、自分が乗っ取られるもどかしさ、焦りなんかが伝わってきたんだ」


 オリビアはブリザーブドドラゴンの真相を知り少し驚く反面。魔物の気持ちを自分の事のように話すコルセイに若干引いていた。


「じゃ、じゃあ今後は大切に扱ってあげないとね」


「うん! そうするよ」


 まるでおもちゃを与えられた子供のようである。


「それでコルセイ。私達はどこに向かっているの?」


「うん。人気もなくなってきたし、そろそろいいかな」


 路地裏を出て少しひらけた場所にでる。目の前には数本の木が生え、空き家がある。空き地に人のいる気配は感じられない。


「おーい。いるんだろう。出て来なよ」


 空き家に向かい声をかけるの。オリビアがコルセイに向かい怪訝な顔をすると、「任せて」と一言、今度は空き地に向かい再び声を上げた。


「俺たちも敵対するつもりは無いですよ。でも出てこないなら警戒せざるをえない。姿を現して頂けるとこちらも手間が省けます」


 しばらくすると二人の人間が姿を現す。建物の影に隠れていたのはローブに全身を隠す長身の女とプレートメイルを着た繊細そうな男である。


「あっ!」


 オリビアが声をかけるとヨルムが気まずそうに顔を逸らす。プレートメイルを身につけたミドガーは少年のような笑みを浮かべるとハグをしようとコルセイに駆け寄る。しかし、そんなミドガーをコルセイは気怠そうに躱す。


「やはりミドガーさんでしたか」


「久しぶりだねコルセイ君。気づいてくれて嬉しかったよ」


 突然現れたミドガーとヨルム。オリビアが戦鎚を構え戦闘体制をとるとコルセイにより手で制止させられる。


「どういうつもりですか?」


「どういうつもりとは?」


「質問を質問で返すのはやめて貰えませんか?」


 少しだけコルセイの口調に苛立ちがみえる。


「落ち着きたまえコルセイ君。ドラゴンとの戦いでは()()()()が役に立っただろ?」


「はい。お陰様で戦闘には勝つ事ができました。しかし、助けてくれるならもっと早くに、そして直接助けてくれても良かったんじゃないですか?」


「はぁ。私も助けたかったんだけど、こちらにも都合があってね。直接手を出す事はできないんだ」


 ミドガーはヘラヘラと笑うとコルセイの話しをまともに取り合おうとはしない。


「まあ、そう怒らないでくれよ。お詫びと言ってはなんだが君の友達にも私は助言をしたよ」


(やはり。昨日は聞き間違いと思ったがナースミルが話していた金貨二千枚は聞き間違いではなく、三つの条件にクリアに対する対価だったのか)


「街道で襲って来た盗賊の手引き……ミドガーさんですか?」


「あ、それ聞いちゃう? はい、私です。ただ、勘違いしないで欲しいのですが私は君を殺す気はありませんでしたよ」


「それは分かっています。ただ、ハドリスさんの友人の亡骸を弄んだのを俺は許せません」


「ハドリス? ああっ! 君といた女の子か。そりゃそうだよ私が手を貸す約束をしているのはコルセイ君とオリビアさんだけだからね」


「約束? 誰かと契約してるんですか?」


「あ、しまった! コルセイ君ここから先は何も言わないよ」


 口を真一文字に閉じるとわざとらしく何も喋れないというジェスチャーを送ってくる。


「分かりました。では、最後に一番聞きたい事を聞きます。ミドガーさんはやはりネクロマンサーなんですか?」


「……そうだよ。私は君と同じ、ネクロマンサーだ」


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