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第三章 第27話 魔連弩

 ナスウェル街道脇 


 街道はナスウェルに向かう旅人で賑わっている。しかし、街道を脇に少し逸れれば人気はまるでない。コルセイはとある武器の練習の為一人で森の中に入って行く。


「この辺で良いかな?」


コルセイはアヤカに渡された新兵器を箱から取り出すと細かく分けられた部品を器用に組み立て始めた。


 〜〜〜


 時は遡る


「コルセイ貴方にはこれを使って貰います」


 アヤカの腕の中には籠手に着脱可能なボーガン。以前、黒狼傭兵団で見たボーガンより随分小型である。上部には何やらレバーがあり上下に動かすことができる仕組みのようだ。個人的にはボーガンは距離をとった戦いに重宝するもであり、近距離での戦闘ではあまり役には立たないと敬遠していた。


 単発的な武器としてはスリングも持っている、いまさら長弓やボーガンで使い慣れたスリングより効果的な戦いができるとは考えられなかった。


「ボーガン? ブリザーブドドラゴンの戦いに?」


「……相変わらずせっかちですね。これだけではありませんよ」


 よく見てみればボーガンの上部には何かを嵌め込む型がある。アヤカは道具箱から小型の箱を取り出すとボーガンの上部に嵌め込む。ボーガンには小さな蓋も付いており、その蓋を開けるとその中には薄らと緑に光る魔石が入っていた。


「いいですか? 見ていてください」


 アヤカがレバーを上げ下げするとプシュ! と蒸気が漏れるような音。ボーガンの先からは矢が連射される。矢の速度は中々であり、その数は十を超える。アヤカが構えた腕の先の壁はサボテンのようになっていた。


「おおっ!」


「魔石を使用した連弩です。そうですね《魔連弩》とでも名付けましょうか。達人の弓のような威力はありませんし、移動しながら使う為、命中もすこぶる悪いです。しかし三秒ほどの間に弾倉が空になる連射力は中々のものです」


「アヤカが作ったの?」


「はい。良さげなボーガンを購入し、弾倉、弓矢、魔石の制御装置で作り上げた特注品です」


 アヤカは腰に手を当て少し自慢げである。以前、うつろいの森でアヤカに道具のレクチャーを受けコルセイも炸裂弾や火炎瓶等を自作していた。


 しかし、アヤカの作り上げる道具は別次元の凄さがある。アヤカは仲間であると同時にコルセイの道具作りの師匠でもあるのだ。


「何ですか。その目は?」


「いや、相変わらず凄いなぁっと思ってさ。本当に尊敬するよ」


 アヤカの魔連弩を目の当たりにしてコルセイが熱い眼差しを送る。


「ちょ、ちょっと。そんな目で見ないで下さい!」


「?」


 アヤカは小さくため息をつくと新たな弾倉を取り出しコルセイに渡す。


「この魔連弩は非常に扱いが難しいです。簡単な着脱式とはいえ戦闘中に取り外しをしますし、動きながら的に当てるのは中々難しい、コルセイの器用さに期待していますよ。目標はこの魔連弩の矢を全弾ブリザーブドドラゴンに当てて下さい」


「なるほど。扱えれば凄い武器になりそうだね」


「はい。二週間でものにしてください。それでもブリザーブドドラゴンを倒すにはまだ足りません。コルセイがこの魔連弩を使えるようになったらこの次のステップに進みます。あ、それまでは作戦も教えられません」


「プ、プレッシャーを感じる」


「はい。プレッシャーかけていますので。コルセイ期待してますよ!」


 アヤカはコルセイの正面を向くと目を細め、白い歯を見せた。


 〜〜〜


「動かない的に当てるのはそこまで難しくないんだけどな〜」


 動力部の制御に慣れ補正が上手くいくようになった結果、動かない的で有ればそこそこ矢を的に当てられるようになった。しかし、換装作業と並行し動きながら的に当てる作業は思いの外、難しい作業だった。


「よしっ! 実践でコツを掴んでみよう」


 森の中の獣や魔物で実践をすべく、コルセイはズカズカと森に入って行く。



 〜〜〜


 数時間後


「はぁ。スリングの難しさなんて比にならないじゃないか」


 換装作業と動きながら的に当てる工程に意識を集中し練習してみた。しかし全弾当てるには程遠い。


「これを二週間以内。厳しい特訓になりそうだ」


 ※※※


「ランドルフさんにはこれを使って頂きます」


 ランドルフの目の前には大きな鋼の塊が転がる。馬鹿でかい鉄の延棒には無数に生える突起物。持ち手部分だけでもかなり太く、分厚い。ランドルフ以外にはまず扱えない代物であるだろう。いや、ランドルフにも扱えるかどうかも怪しい。


「ちょっと。いくら私でもこれは扱えないわよ」


「私もこれを通常の武器で使って頂こうとは考えていません。基本はこのバスターソードを使って貰うつもりです」


 アヤカが指差す先にはまたも馬鹿でかい剣が一振り。しかしこちらのバスターソードは何とか人が持てる範疇である。


「じゃあこの馬鹿でかいのはどうするの?」


「はい、初手の一撃でぶち込んで頂きたい。ちょっとお耳を拝借」


 ランドルフがアヤカに耳を傾ける。


「なるほど。なら問題ないわ。それならまずは場所よ、場所!」


 ランドルフはアヤカの背中を押すと二人はそそくさと移動を始めた。


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