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1日目の1 世界樹の森

西暦2025年5月、コロナ禍も漸く落ち着いた頃。


65歳の爺さんが憧れの電動キックボードで走っていた時、

突然現れた黒い渦に吸い込まれた。着いた先は、世界樹の森だった。


来月からは、苦労して手に入れた年金生活を前に、爺さんは絶望にくれる。

イタイイイーーーイ飛び起きた。


左膝がいままで感じたことのない痛み、耐えられず、大声で叫ぶしかない。

膝に目を向けるとジーンズが血で真っ赤だ。クソー痛みを消えろ、

「痛いの痛いの飛んで行け」叫んだ。子供かと自分でつ込みを入れる。


クソー「鎮痛、鎮痛、鎮痛、鎮痛、鎮痛、鎮痛」と何回も叫んだ。

あれー?突然に痛みが消えた。

痛みが無くなったせいで、少し冷静になる。


恐る恐るジーンズを膝上まで、捲ると膝が裂け血が鼓動に合わせ出ている。

こう言う時は病院では、止血してレントゲン撮影だよなと言い聞かせ。


よしと思い立ち、「止血、止血、止血」、「透視、透視、透視」3回ずつ叫ぶ。

血が止まり、目の前に白黒の画像が現れ、膝の皿の中心あたりが1cm程の楕円形

の陥没あり左右に膝の皿が割れている。


信じよう、何がどうなっている分からないが、まず、信じよう。

膝に向かって「殺菌、殺菌、殺菌」叫ぶ、効果は分からない。

次に「修復、修復、修復」叫ぶ、逆再生したように膝の皿が治った。


透視を解除するように念じ、血管と皮膚は、同じように修復と声を出したら

逆再生するように皮膚が元通りになった。

少し躊躇し鎮痛解除を念じた。よかった痛くない、本当に直ったようだ。


左足の靴まで真っ赤、ここはラノベお馴染み生活魔法の[洗浄]と唱える。

まさか全て、綺麗になるなんて。


ここは、どこ?見渡すと鬱蒼とした森に直経20M以上、高さどのくらいあるか

分からないデッカイ木があって、この付近にはたくさんの太い枝と落ち葉が散乱

している。さらに数十本折れて倒れている木が反対側にある。


静かだ、普段聞こえないシーシーと耳鳴り聞こえる。落ちてくる葉が重力に逆らう

ようにゆっくりと落ちてくる、葉が落ち葉の上に着地した時の「カサ」という音

さえ聞こえる。

そしてこの場所は、すべてを包み込むような安心感がある。


若い時、石○島で洞窟を見ようと森に分け入った時、拒むような圧力が歩くのを

躊躇させた。洞窟の前に立った瞬間、恐怖を感じて、引き返した。

この時は、自分は小心物だからと思っていた。


どのくらい物思いにふけっていたか分からない。思考が現実に戻って。

ここは、どこ?俺の電動キックボードは、どこ?


数メートル先あった。よかった。黄色いオレ電動キックボード。

最高速度30Km、1回の充電90Km走行可能。

年金生活になって、電動キックボードで日本1周が最近の夢で

もうすぐ現実になるはずだった。


月5万円生活を思い出すと悲しい気分なる。

60歳で定年、退職金でマンションのローンを一括返済して残金600万円と少し

65歳までの5年間を年間120万円で暮らしていた。

年間120万円といっても

マンション固定資産税 12万円

マンション管理費   24万円

電気、ガス、水道代  12万円

国民健康保険等 計   5万円

通信費等        7万円

年間合計       60万円

残高60万円で月5万円で生活なる

食事代は、1日当り1000円として

約800円で3食、あと牛乳65円とヨーグルト125円。

1万円で、日用品、、煙草(1日5本)、健康維持の為のサプリメント。

残りは、1万円は貯金とした。


でも貯金は、

61歳の時に、ウオシュレットが故障して交換代が4万円。

62歳の時に、ガス給湯器が故障して交換代が25万円。

63歳の時に、洗濯機が故障して交換代が6万円

64歳の時に、エアコン故障して交換代が10万円。

で使用して残高5万円。


電動キックボード代14万円は、リボ払い5回で購入、支払いは年金を当てにし、

原付登録料、保険、ヘルメット等は、貯金残高5万円で賄った。

来週の月初め1日に企業年金が支払われ、15日には老齢基礎年金と老齢厚生年金

支払われる。


所得税、市民税、県民税と国民健康保険等増加分は正確に分からないが、

月12万円前後は使用できる計算で、やっと楽に暮らせるはずだったのに。


気を取り直して、取りあえず散らばった荷物を。


ショルダーバッグは、体に巻き付いいたのでOKと。

バッグに入れていた、スマホとマンションの鍵ない。


電動キックボードが倒れたそばにスマホとマンションの鍵とヘルメットがあった。

電動キックボードのハンドルにぶら下げてくくりつけた○友で買った物もレジ袋

から飛び出さずにある。

さらにその先に金色の毛皮等がある。


電動キックボードと手荷物があったので安心したら腹がぐーーーと鳴った。

そう言えば朝か何も食べていなかった。


レジ袋をキックボードのハンドから取り外して、レジ袋からおにぎり弁当を

取り出す。

おにぎり弁当は、三角おにぎり4個にミートボール2個、魚フライ、磯辺揚げ

たまご焼き4きれ、スパゲッティサラダ、梅干しのおかずという組合せ、値段

498円と超お買い得。


夜ご飯のことを考えて半分だけ食べよう。


ショルダーバッグから加熱式煙草の○コス取り出し、食後の一服。

煙草の煙を吐きながら何気なくスマホを手に持ってMAPアイコンを

タッチした。画面が森林の絵になり、現在地[森]と表示される。


いやいやアンテナが1本たっていないのになぜ?表示される?

[森]と表示された所がアンダーラインとなって画面移動可能な点滅している。

タッチした。

[ナビAI]に画面移動するか聞いて来るので「はい」をタッチした。


[ナビAI]に画面移動しメッセージは、[MAP] [鑑定]レベル共「1」

で、これ以上の詳細を知りたければ、[MAP] [鑑定]を使用してレベル

アップが必要。


[MAP] [鑑定]を回数使用してレベルアップしろと言うことなのか?


画面の[ナビAI]と表示された所がアンダーラインとなって点滅している

のでタッチしてみた。


[ナビAI]からのメッセージは、

この世界の時代は中世、人族、エルフ、ドワーフ等多様な種族で構成されている。

争いの絶えない弱肉強食の世界で、弱者は理不尽な扱いを受け奴隷制度が有る。

地球の何倍も濃い魔素が溢れ、超自然現象の魔法の発動を可能としている。

魔素により生まれた動物は、魔物と呼ばれ、頂点はゴールド種のドラゴン。

世界管理者は(この世界の住人は神様と呼んでいる)スマホのオーナーが転移に

耐えらるよう肉体を65歳から18歳とし最低限の強化、スキルを追加した。


転移時に持っていた道具類は、魔法道具に改造されている。

本スマホは、魔法道具となり、追加機能として[ナビAI] [鑑定] [スキル確認]

[ログ]等が追加された。

既存の[MAP]等はこの世界の仕様に改造されている。

あらためてショック受けた、うすうす異世界ではないかと思っていたが、現実を

突きつけられた。


あーあー電動キックボードで日本1周の夢が、それより俺の年金はーーー。

40年ほど一生懸命働いて、5年間の極貧生活でやっと年間約240万円を

来週からもらえるのに。


財産的には、240万円を20年貰うとしても4800万円それにマンション

の価値約2000万円で、合計6800万円が0円になって、来週から悠悠自適

の生活をおくれるはずが、こんな知らない世界で18歳からやり直せと神様は、

言うのか。

65歳まで生きて色々と理不尽なことがあったが、これ程酷いものは・・・。

ああーー神様。涙が留めなく溢れている、頭は真っ白に。


「ピッコ」と音がしたが、神無 悟は、気がついていない。


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