2-4 ピンチ!
「おい!大丈夫か!?」
ヒデのただ事ならぬ声でリオと……アーンをしていた俺は声の方を見た。
するとレイが倒れてるじゃないか!!
「レイ!!」
俺が動く前にリオが素早く駆け寄る。リオがレイの体を揺すっても全く起きる気配はない。
「ノブ、二階のベッドまで運ぼう!」
リオはとても落ち着いて頼りになるる。ただのお嬢様かと思ってたけど…人は見かけによらないってことだな。俺は一つ返事でリオに従うとレイの足を持った。
「あ、俺が持つよ」
「はい」
暫くの間呆然としていたが、少しだけ冷静さを取り戻したヒデがリオに代わってレイの頭を持つ。
「二階のどこに運ぶつもりだ!?」
「矢萩君は寝てるだろうから両親の寝室を使わしてもらおう!」
俺たちはリオに従いレイを両親の部屋と思われる(パパ&ママという立て札がしてあった)部屋のベッドにレイを寝かせた。
「どうしてレイが倒れたんだろうな?」
レイをベッドに寝かせて皆が落ち着いた頃に俺は聞いてみた。
「レイは昔から霊感が強くて小さい頃から心霊経験をたくさんしている娘なの。多分本当にこの家は幽霊屋敷。レイは幽霊にやられて…。私が止めておくべきだった…」
そう言ってリオは涙目になる。
「いや、リオが悪いわけじゃないよ。俺だって賛成したし…」
しんみりとする3人……
1人足りねえ……
「やべ、ケン置いてきた…」
「あっ!ホントだ!どうしよう」
「お…俺が行く!ゆ…幽霊なんか怖くないもん!」
なんか口調が変になってしまったがそんなことは気にするな。それに…幽霊なんか怖くないもん!
「私が行くよ。レイと仲良いから心霊経験あるし」
「いやいやリオには行かせれないなぁ…だって俺は幽霊なんか怖くないもん!」
「でも…」
「俺が行く」
俺たちが言い争いをしているとヒデが小さな声で呟くように言った。
「何言ってんだ!俺が行く」
「いや、私が!」
俺とリオが抗議するとヒデは呆れたような顔をして言った。
「はっきり言うけどノブがビビってるのはバレバレ。リオは1人じゃケンを運んで来れないだろ?」
「…」
言葉に詰まる俺たち。確かに俺は幽霊が恐くて仕方がない。
リオも正論を言われて返す言葉が無いみたいだな。
「じゃあ行ってくる」
とか言いながら足が震えてるぞ、ヒデ。
「震えてるぞ、ヒデ。やっぱ恐いんじゃん。俺が行ってやるよ」
「バーカお前はさっきから震えっぱなしだ」
最高に引きつった笑みを浮かべながらヒデはドアを開けて降りて行った。
と、同時に…。
「キャッ!!」
リオが叫び声をあげる。
「うわっ!どどどどどどどうしたっ!?」
平常心で答える俺。…悪いがツッコミを受けつける余裕がない。
「今窓の外から女の人の顔が…」
「みみみみみみ見間違いだって。錯覚錯覚錯覚ぅ!!」
あくまで平常心な俺。幽霊なんか怖くないもん!
レオをベッドから引っ張り出しリオと一緒に窓とは反対側の壁に逃げると…
ドンドンドンドン!!
「キャッ!!」
「うひゃぁっっっ!!」
なんと逃げたほうの壁を叩く音が…。
「だだだ大丈夫だってただの家鳴り。女もただの錯覚だって…」
「お兄ちゃんたちなんであたしの家に勝手に入ってるの?」
壁の向こうから聞こえるのは小さな女の子の声?
どうも俺は怖さのピークを超えたら冷静になるようだ…。
そんな自分についての新発見をしながらふと窓を見ると。
その時俺は見てしまった…
血走った目をした恐ろしい憎悪の表情で窓に張り付いた女を…
そして口を開いたかと思うと
「私の家に入るな!!出ていけ!!デテイケ!!」
リオが恐ろしさに気を失う。俺も気を失いたいんだが、何故か意識ははっきりとしていてじっと窓の外の女を見つめる。
「う…ん……」
ナイスタイミング!!レイ!!
「ん…ノブ?ここは?」
「両親の寝室だ」
レイが覚醒したようだ。寝起きが悪いイメージがあったが…よかった。
「そうだ!この家本当に危険なの!早く矢萩君連れて逃げないと…」
「窓見てみろ」
「そんな…もう手遅れ…」
窓の女はこちらを相変わらず睨んでいるが、その憎悪の表情に少し驚愕と恐怖が混じったように見える。
「アサコ!その女を殺せ!!」
いきなり窓に張り付いた女が叫ぶ。
「はい、お母さん」
言い終わるとほぼ同時に小学校低学年くらいの女の子がドアから入ってくる。
その手には包丁が握られていた…
「ごめんね。お母さんの命令なの」
そう微笑むと女の子はゆっくりと歩いて来る。
一歩…また一歩…。
少しずつ迫る死の予感。
「今だっ…逃げるよ!リオ担いで!」
「えっ?あ…おぅっ!」
いきなりレイが叫び、立ち上がり走り出す。
やや遅れて俺もリオを担いで走り出す。
「逃げちゃダメ」
女の子はそう呟き、包丁をレイに突き刺そうとする。
しかしレイはポケットから木の小刀を取り出すと、包丁を弾いた。
すぐにドアに開けて逃げ出す。
「とりあえず矢萩君を起こしに行こう!早くこの家から逃げなきゃ」
急いで矢萩が寝ている部屋に入り、ドアを閉めて女の子が入れないように矢萩の勉強机でドアを防ぐ。
「ヒデとケンは?」
「一階で寝てるケンを連れ戻しに行った」
「ケンを連れて家から出るようにメールしないと…」
そう言ってレイは携帯を取り出しメールを打つ。
「俺たちはどうすれば…」
「矢萩君に抜け道を教えてもらおう」
「そだな…おい、起きろ」
矢萩はすぐに起きた。
「あれ、どうしたんですか?」
「とんでもない幽霊屋敷だったよここは…」
「えっ!?本当に…なにかあったんですか?」
んでさっき起こったことを説明する。
「そんな…やっぱり」
「で、今すぐこの家を出たいんだけど、抜け道とかある?」
「………ないです」ドン!!
「ひっ!」
女の子がドアを叩く音がして矢萩が小さく悲鳴を上げる。
「どうする…?」
「わからないよ」
俺たちは茫然とドアを見つめることしかできなかった。
この話オチを考えずに思いつくままに書いたので大変なことになるかもしれません…(^_^;)