2-5 まだまだピンチですよ
更新遅れましたすみません。
あれです…
受験勉強です。
まだ2年だけどf^_^;
ヒデです。
一階です。
怖いです。
ケンを連れ戻しに来ました。
なんか空気が違います。
靴べらを武器として持ってきました。
役に立ちそうにありません。
心の中が箇条書きになるくらい怖い。もうさっきから家鳴りが大変なことになってる。
鳴ってない時間の方が短いくらい。家倒れないよね?そっちも怖いんだけど…。
確かケンが寝たのは一階リビング。この階段降りてすぐの廊下を抜ければある。
慎重に進まないとな…。
「っ!?」
今何か…
後ろにいたような。
勇気を振り絞り後ろを振り返ると…
「なんだ…ゴキブリかよ」
普段なら飛び退くほど嫌いなゴキブリも状況が状況だけに全く気持ち悪く感じないな。
なんか鬱陶しいから靴べらで駆除しとくか。
「ほ〜らよっと」
靴べらを構えて…
フルスイング!元野球部なめんなよ!?
バシン!
ん?
空振りか?
思いっきり廊下を叩いてしまった。俺が空振り?プライドが許さん!ゴキブリめ…絶対殺してやる。
で、ゴキブリどこ行った?
さっきまでここに居たんだからそんなに遠くに行くわけないんだが…
「俺の家を傷つけやがって」
誰だ!?
低くて野太い男の声がリビングとは反対側。つまり俺の目の前から聞こえた。
「貴様、廊下が泣いているじゃないか。あぁ可哀想な俺の廊下!見知らぬ人間にいきなり叩かれて!さぞかし辛かったろうに!痛かったろう!恐ろしかったろう!」
男はそう言うと泣き出した。とても正気の沙汰ではない。
しくしくとした嗚咽が響く。
「誰だ?」
とりあえず恐ろしいが聞いてみる。聞こえるのに見えない。
怖い。
「誰だ、と?何ということだ…この家の主も知らずにこの家に入ってくるとは!」
「主?矢萩の親父さんか?」
「矢萩?誰だそれは!!」
そう叫びユラリと姿を現したそれは、人間と呼ぶにはあまりに異質で…左の眼球は飛び出し首は右に90°傾いている。さらに体は所々腐りかけていて右手には明らかに銃刀法違反の刀身のながいナイフ…と言うよりサーベルが握られていた。俺はあまりにそれが恐ろしくて固まってしまった。
「コロシテヤル!!ケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケケェェッ!!」
それは叫びながら俺の息の根を止めようと奇妙な走り方で近づく。
しかし依然として俺の足は固まったまま動かない。
動けっ!!動けよ!!
俺とそれの距離はあっという間に詰められた。
「ケケケッ!シネェェェッ!!」
それの腐りかけの手に握られたサーベルが俺の体を真っ二つに切断する寸前という所でなんとか体が動くようになった。
後ろに少し飛び、靴べらで腕を渾身の力で叩く。
「ケケッ!なんだこりゃあ?こんなんで俺を倒せるとでも?」
当たり前だが全く効いていなかった。化け物(これを人間と呼べるのか!?)は靴べらを払いのけるとすぐに俺を殺そうとサーベルを突く。
「うおっと!」
間一髪かわしてリビングのドアを開ける。
すぐに急いでドアを閉めて化け物が入って来れないように体で押さえる。
「なっ!座敷っ!?」
そう、俺が開けたのは座敷のドアだった……化け物と戦り合ってる最中にドアを間違えてしまったようだ。やっちゃった、てへっ☆
ドン!
化け物がドアを開けようと体当たりしてくる。
てへっ☆なんて言ってる場合じゃねぇ!!
「逃がさんぞ!」
化け物は体が腐りかけている割には意外に強い力だった。
力勝負じゃ勝てないか…。
ドカン!!
化け物ドアを蹴破って来た。
「うわわっ!」
「あんまり逃げるなよ。殺したくてうずうずしてんだ」
とりあえず走って逃げる。家が結構広いから行き止まりに行くことはないだろう。
プルル!
こんなときにメールかよ…レイから?意識が戻ったのか?
適当な押し入れに入って身を隠す。本当に生活しているのか疑ってしまうほど何もない。
まぁとりあえずメール見るか。
『ケンを連れて早く家から出て』
絵文字も顔文字もない文章が事の重大さを教えてくれた。そういえばさっきから二階が騒がしい何かあったのだろうか。
携帯を閉じる時にふと何かの本が目に入った。携帯のライトを照らして本を見るとそれは卒業アルバムだった。昭和48年高城西中?ずいぶん古いな…両親のかな。
最初のページは教員達の写真で2ページ目から卒業写真だった。親の顔でも見てみるか。
こういうのが好きな俺は化け物の存在を忘れて見入っていた。
「えっと…矢萩…矢萩…えっ?」
3年2組矢島敏
そいつの写真は矢萩そっくりだった。顔も眼鏡も体型も何もかも。
前の住人は矢萩に似ていたのだろうか?
「どこに行きやがったぁ?ハァ…ハァ…」
っ!ヤバい!化け物がすぐそこに来た!頼む…通り過ぎてくれ。
卒業アルバムをそっと置き通り過ぎるように願う。
「押し入れにでも入ったか?」
っ!?
マズい!
…
「いや、密室に入り込むほどバカじゃねぇか…」
悪かったなバカで…
でも助かった。
「ま、一応見てみるか」
なっ!?
ひたひたと押し入れに近づく足音。イチかバチかやるしかねぇか…
ガラガラ…
押し入れが空いた瞬間
「うらっ!!」
「んなっ!?」
必死になってタックルする奇襲作戦は成功した。
化け物に触れないといけないし、相手が注意深かったら失敗に終わっていたが…どうやらこいつも頭が良いとは言えないようだ。
すぐに起き上がり逃げ出す相手より早く。
「くそっ!なめやがって!絶対殺してやる!!」
闇雲に走っていると呑気に寝ているケンが見えた。
…無事だったか。
「おいケン!起きろ!」
「ムニャムニャ…もう食べれないよ…」
放って行こうかこいつ!!
「オラ!起きろや!」
鳩尾を蹴ると、ぐほっ!と小さい悲鳴を上げてケンは起きた。
「早く立て!逃げるぞ!!」
「え?どういうこと?」
「見つけたぁ!殺す!!」
化け物来た。
「こういうこと」
「なるほど…ってうぇぇぇぇ!?」
「なんだもう1人いたのか。嬉しいなあ殺す人数が1人増えたじゃないか」
「なんだこいつは!」
「逃げるぞ!」
ケンの手をとって走り出す。
玄関のほうに化け物がいるから…
「玄関まで左から回り込むぞ!」
「何で玄関?窓から出りゃいいだろぉぁ!」
「ナイスアイデアァ!」
なんで気づかなかったんだ!窓から逃げればいいじゃないか。
ある程度化け物と距離をとって窓の鍵を開けると…
「逃がさんぞぉ」
突然怒り狂った顔の女が立ちふさがり、俺たちが窓から逃げられないようにする。
「うわぁっ!!もう一体いたのか!」
「待てぇぃ!!」
すぐ近くまで化け物(男)が来てサーベルを振り上げている。
「くそっ!」
「なぁヒデっ!なんて映画だ!?これ!」
「こんな映画絶対誰も見ねーよ!」
すぐさま他の窓から出ようすると…
「貴様らぁぁ!!許さんぞ!!逃がさんぞ!!私らの家を汚した罪は大きい!」
「くそ、この女速いっ!」
「早く逃げるぞ!」
窓から離れ、サーベルの化け物から走って逃げる。サーベルは足はそんなに速くないから逃げ切るのは簡単だ。
しかしおかしい。ある疑問が俺の頭に浮かんだ。
なんで俺たちが家に入った日に限ってこんなにこいつら活発なんだ?こんなだったら矢萩家族なんかとっくに全滅してもおかしくない……。
「ヒデ、もう少しで玄関だ!」
あの化け物は矢萩を知らなかった…ここで生活しているのに?それに大体1年2組なんて関わりがないから矢萩の顔なんか当たり前のように見たことがない。
それにあの卒業アルバム………やはりそうなのか!
くそっ!ノブたちが危ない。
「ケン先に外に出てろ!」
「なんで?」
「いいから!俺は1人でやりたいことがある」
「わかった。気をつけろよ」
ケンを逃がしてレイに電話をかける。
ノブは基本マナーモードで出ないからな。
「どうしたの?脱出できた?」
レイの声だ。よかった…まだ大丈夫だ。
「レイ、玄関から逃げれるか?」
「無理だよ。女の子が入ってこないようにドアを塞いでる」
まだもう一体いるのか。
「じゃあ窓から飛び降りてくれ」
「それも考えたけど…」
「女は俺が引き付けるから…早く!」
「でも、まだ他に策があるかも…それは最終手段として…」
「他の策なんかない!一刻も早く飛び降りるんだ!」
「なんでそんなに急ぐ必要があるの?」
そして俺は推測を言った。なんで今まで矢萩が無事だったか、矢萩を見たことがあるか、そして卒業アルバムのことも。
「でも…そんな訳…」
「信じてくれ!俺もただの勘違いであって欲しいけど。もし…」
「そこまで言うなら…うん、信じる」
「よし。じゃあ切るよ」
「うん、気をつけて」
「そっちもな」
ひたひた…
「ケケッ!ミィツケタ」
電話を切ると右からサーベルが来るのが見えた。
やってやるよ。
俺はサーベルから逃げて窓から逃げ出そうとして女の注意を引く。
「ハッハッ…」
くそっ疲れてる場合かよ!
サーベルには疲れはないのだろうか、スピードが落ちない。
俺、生きて帰れるかな…?
後ろを振り返るとすぐそこにサーベルの姿が…
うん、無理っぽい。