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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第一号 異界覚醒編
6/64

宇宙戦艦のファッションチェック

 ようやく羞恥により荒れ狂った混乱状態から心の平静を取り戻すと俺はカスミに語り掛けた。


「すまん、ちょっと考え事をしてた。もう話して大丈夫だ」


<マスターの行動が理解不能です。分身であるインターフェースの体温が……通常の状態に戻っています>


 そう、カスミが返答する。

 なんとかあのこっ恥ずかしいコスプレ衣装を脱ぎ捨てたものの、現在は上半身裸で腰にはターザン然とした腰巻をしている状態である。早急に代わりの()()()な衣装が必要だ。


「ああ、もう落ち着いたから問題ない。それより何か他に着るものはないのか?くれぐれも普通の服だぞ、フツーのだ」


 非常に大切なことなので2回言う。大切だぞ。


<同じ服なら他にストックが……>


「これは普通じゃねぇ! …………ああ、すまん。指示が曖昧だったな。20世紀後半から21世紀前半で普通の服があるか?」


 そこで俺は気付く。

 どうも話がかみ合わない部分が多いと思ったら彼女の価値基準は23世紀のものなのだろう。昭和の昔に書かれた子供向け科学図鑑の未来予想図のようにこの艦の建造当時の風俗は俺が地球に居た頃と大幅に違うのかもしれない。この艦が建造された当時の未来のご家庭のよしお君は銀色の全身ぴっちりツナギに身を包み、エアカーやらチューブトレインで移動して凶悪なイルカ人間の侵略におびえる日々を過ごしている可能性も否定できないのだ。


 そう考えて自身の21世紀の固定観念を改める必要があると思いもしたが、もしかして単なる悪ふざけの可能性も否定できないのでもう少し会話をして様子を見るべきだろうと思いなおす。


<はい、ヒストリーアーカイブより服飾のデザインを検索し、その中からご希望のデータをご指定頂ければ、服飾生成プログラムにより今すぐご用意できます>


「へー、服飾生成プログラム?」


 また、23世紀の謎テクノロジーか……まあ、考えるのは後にして今すぐ普通の服を着たい。

 そう思った俺はどうせその技術の詳細を聞いても理解できるとは思えなかったので難しい事は省略して服を入手する事を優先させることにした。


「まあいいや、とりあえずそれでやってくれ」


<ヒストリーアーカイブ『文化・風俗』から該当データを検索………657816件該当がありました>


 ……………………


「成人男性の服だぞ」


<再検索を行います………231215件該当がありました>


 やっぱりか。危ねぇ……

 危うくスカートやら子供服を着せられるとこだった。もう、ツッコむの疲れた……

 だが、まだスコットランドのキルト衣装やアブナイおクスリでキマッた感じのパンクロッカー服とかジャングル奥地のナントカ族衣装とかが混入する可能性がある。

 やはり自分で目的の服が入手できるようにしっかりと詳細な情報を指示して変な衣装が選択肢として入り込む余地を無くすのが一番確実だろう。


 そうして俺は改めて目的の衣装の詳細な情報をカスミに伝えた。


「下は成人男性のブルージーンズと黒い革のベルト、成人男性の黒のボクサーパンツの下着。上は成人男性の無地の白のTシャツを用意してくれ」


<了解しました。再検索を行います…………896件該当があります。検索データより汎用量子定着装置で生成可能です。今すぐ使用しますか?>


「ああ。あとは適当に」


 …………


「ブルージーンズは半ズボンじゃないぞ、ロングだぞ」


<再検索を行います…………815件該当があります。検索データより汎用量子定着装置で生成可能です今すぐ使用しますか?>


 よし。

 ここまでやればもう罰ゲームのようなキテレツな服を用意される心配もないだろう。もう羞恥プレイもいちいちツッコミするのも勘弁して頂きたい。

 とにかく後は一刻も早く現状のマンモス狩りでもしそうな原始人のごとき風体(ふうてい)を改めるべきであろう。


「ああ、今すぐ着替える。だが汎用量子定着装置で生成可能って何だ?」


<汎用量子を使用して任意の分子構造を定着させ……>


「あー、もういいから兎に角ちゃちゃっとやってくれ」


 そう俺はカスミの言葉を遮って服を用意する事を優先させた。

 どうせ理解もできないし、いま必要なのはまとも着れる服が出来上がるという結果だけだ、


<了解しました。指定された衣服の量子解析設計完了後、マスターの身体表面に直接生成します>


 え? 今なんて言った? 身体表面に直接生成?

 次の瞬間、腰から下の衣服が発光したかと思うと光の粒になり拡散した。


 瞬時に全裸になるアラサー成人男性。当然前を隠すお盆も謎の光線も無しだ。


「きゃああああぁぁぁぁぁっ!! 何事だ!!」


 突然の事態に思考が混乱を来たしてあられもない悲鳴を上げた一方で、妙に冷静な頭の片隅で思った。


 ――これではまるでアニメの魔法少女の変身シーンではないか。


 こうして俺は見るべき観客も不在だというのに予期せぬお色気シーンを朝までふざけないワンマンショーで披露することになったのであった。

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