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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第三号 異界接触編
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宇宙戦艦の活動大写真

 手始めに俺はAI達にお手本となる理想的なヒーローが登場する物語を探したが、その選定は予想以上に難しかった。なぜならば今回はこの異世界の住人に対応するために人間だけでもなく宇宙人や異世界人に対しても友好的であらなければならないからである。

 始めに思いついたお馴染みのバイクに乗ったバッタ風改造人間や遥か遠い星雲からわざわざ地球の平和のためにお越しになった全裸巨大宇宙人などが出る話であったが、よくよく考えてみればその殆どで相手に対して最終的にお命を頂戴する事で問題を解決しているのである。

 他に宇宙人やら異世界の住人が地球に到来する話のテレビ番組や映画のあらすじを思い起こしたが、同様に人間に対して悪逆非道を働いた末に退治されるというものが多かった。


 もしや、俺の思惑とは異なり宇宙人やら異世界人は世間一般において人間が憎悪すべき存在となっているのではないか? と考えもしたがそうでは無かった。

 ただ単に空想上の存在である彼らがそういった分かり易い悪役にする事が世間様的に差し障りが無いからそうなっているのである。これが実在する特定の人物や人種・民族・国家であった場合にはたちまち差別やら偏見とかの非難を受けるだろう。実在する対象で非道な悪役として何処からも問題視されないのはヒトラーとかナチスぐらいである。


 しかし、人間以外の存在に友好的に接するストーリーの創作物は全く存在しないわけでは無い。それで定番の微妙に可愛くない宇宙人を自転車のカゴに乗っけて月をバックに空を飛ぶ感動の映画を改めで見てみたのであるがそこで俺は疑問に思った。


 ――果たしてコレをAI達に見せたところで即座にこの世界の住人たちとおてて繋いで仲良しこよしとなるのだろうか?


 それは余りにも安直すぎるだろうと俺は考えを改めざるを得なかった。

 我々人間の良心や善悪を判断する思考はただ一本の映画やテレビドラマなどで形成されるものでは無いはずだ。それはもっと複雑で多様な経験を経て生み出されるのである。


 改めてそう考え直した俺はその創作物に善悪を問わず、人間以外の存在が登場するものであれば手当たり次第にAI達に鑑賞させて反応を見る事にしたのだが――。


「だから! この宇宙人を我々に置き換えてだな、ここに出てる地球人をこの世界の住人と考えたらどう思うかって聞いてんだよ!」


 一向に話が進まない事にいら立った俺は語尾を荒げて俺はアサシモに問い質した。


「そうは言ってもだな、マスター。

 我々の元居た世界の地球では魔法など存在しない。よってここの現状この世界で魔法にある程度依存しているAWIが人間に置き換わり地球に存在しても文明の進化が人間とくらべて大きく後退する可能性が大きいんじゃねえか? そうであれば、F/A-18(ホーネット)などの第4世代ジェット戦闘機なんかは作れねぇだろ。

 まあ、それ以前にあいつらAWIは人間じゃないし、それならこの映画の表現も全く何の問題無いな」


「ああああぁっ! もう! どっからだ!

 どこから説明すりゃいいんだ!」


 とまあ、俺の想像以上に彼女らAIの人間とそれ以外に対しての認識の壁は強固であり、その意識の修正は遅々として進まなかった。そして何故か冴えわたるアサシモの創作物の設定の穴に対するツッコミ能力(スキル)

 しかしこれでもAI達の中ではまだマシな方なのだ。カスミとアキヅキにも同様に映画を見せて反応を(うかが)ったがそちらはもっと芳しくない。カスミは素直なのだが反応自体が薄くて表面上変化が全く分からないし、アキヅキはアサシモと同程度の理解と思われたがしばしば俺の意図を読み取ってこちらの望んだ回答をしようとするので余計わかりづらい。

 自然、反応が直球なアサシモに対して映画やドラマを見せて感想を聞いているのだがご覧の通り現在までほとんど進展が無かった。


 ちなみに鑑賞させている映画やドラマは俺が地球に居た時分に見たものとなっている。何故なら23世紀ともなると『映画』というもの自体が俺の知っているものと根本的に異なるからだ。

 23世紀の『映画』は立体映像など当たり前で鑑賞者がその『映画』の中に立って見る事ができ、そこにある物を触って動かしたり臭いをかぐことも可能なのだ。しかもそれはフルダイブ型のVRなどではなく量子立体ホログラムによる実体なのである。

 さらに大きく異なる点は鑑賞者自身がその登場人物に置き換わって役を演じる事が可能なのであった。そしてその鑑賞者の行動の結果は動的(Dynamic)シナリオ(Scenario)生成(Generator)プログラムによって『映画』に反映されてその話そのもの自体が改変されるのだ。

 ちなみに動的シナリオ生成プログラムは既存の古い映画にも適応でき、試しに俺が定番の某ホラー映画をハッピーエンドにしてみたところ、お面をかぶった殺人鬼が被害者全員に返り討ちにあってナタやらチェーンソーを持った群衆に追い回された挙句に、いつの間にか登場した家族に雨の中で抱擁される被害者達をバックにパトカーで警官に連行されるという結果になった。

 ともかくも、未来の『映画』というものはその在り方も未来の時代設定も含めてHEISEIキッズの俺が理解しがたいものであったし、俺が見た事のある映画やドラマを動的シナリオ生成プログラムで改変させても思うような結果にする調整が難しかったので自分が知っているものをそのまま見せているという訳である。


 そんな余談は置いといて――とりあえずこの計画自体、一旦見直すべきなのかもしれない。

 元々、この艦の創造主達も地球外生命体との接触をろくに想定して計画を立てている様子が無い以上、それを彼女らに要求するのは無理筋であるし、そういった能力を即時に学習する事を期待するのは無茶振りが過ぎるともいえる。

 この映画などの創作物の文化より異世界に対してのコミュニケーション方法を学習させるというやりかたは継続するにしても、望むような結果が得られるのに下手したら年単位で時間がかかるものと考えて別の方法を並行に実施して模索するべきであろう。


 そうして俺が思いついたその別の方法とはこの際、手順をすっ飛ばして直接AI達にこの世界の住人へ接触させるというものである。


 結局のところAI達がコミュニケーションすべき相手は地球人類である人間ではなくこの世界の未知の知的生命体なのである。習うより慣れよの言葉通り、実地に基づいた経験に勝る学習方法が無いのであればいっそのこと多少強引であってもその相手との接触を積極的に推し進めるのも手であるかもしれない。

 言うまでも無く、AI達の異世界に対する認識と理解が不十分であるこの現状では何の方策も無くAWIと接触させることは互いに不幸な結果を生む可能性が大である。そこで不肖ながらこの俺自らが間に立ってその折衝をコントロールすればその過程でAI達もその機微を学習できるだろう。

 一応、既にAI達には例のヒュドラ三姉妹であるリースらとも俺の立会いの下でしばしば交流させているがいまいちお互いに反応がぎこちなく、まだ俺が望んだような結果には至っていない。だが、現状においてこの世界での唯一のAWIとの接触の成功例といえ、遭遇当時にオレ様キャラであったリース達がこの世界の一般的な価値観を有しているかというのはいささか疑問ではある。


 であるならばここはリース達以外のもっと常識的かつ性格が穏当なこの世界の住人を探してその異世界コミュニケーションのハードルを下げるべきであろう。で、その当の常識的な異世界の住人であるがリース達がそう望むべくも無い以上はこれから別途、またぞろこの艦内を探索してその伝手を求めなければならないのである。

 という訳で結果としてAI達の意識改革とは別に俺があれこれ悩んで構想していた対AWIコンタクトミッション計画を具体的に進める事と相なったのであった。

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