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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第二号 異界探索編
39/64

宇宙戦艦のしわよせレシピ

 予想だにしない事態が続いたため色々と脱線してしまったが今回の探索の目的は艦内の現状確認と調理した料理をカスミに食べさせることである。

 艦内の状況は直接自分の目で確認し、ごく一部ではあるが実態について理解はできたので取り敢えず完遂と言っていいだろう。


 残っているもう一方の目的であるが……どうしよう。


 問題は二つある。

 一つ目はリースら後から追加された異世界人らが何を食べるのか分からない事だ。見た感じは人間っぽいので地球の料理でもイケそうに見えるが、犬猫みたいに思いもよらない物が毒になる場合もある。

 二つ目は俺が素粒子合成とかいう謎技術で作られる食材にまだ抵抗が拭えない事である。23世紀の人間には当たり前なのかもしれないが、穀物程度ならともかく複雑な野菜とか魚や肉などの脊椎動物とかはまだ試せる勇気が無い。

 まあ、野菜だって元は何かの糞だったり、魚も何かの死骸やゴカイとかを食って育っているので気の持ちようと言えばその通りだがもう少しハードルの低いところから始めたい。


 そんな風にカスミとリース達を見つつ思案にくれているとカスミが俺に()()()で話しかけてきた。


「マスター。

 先程、この地球外知的生命体について簡易量子スキャンを行いましたが地球人類との差は2%未満です。少なくとも呼吸器官と消化器官は通常の人間とほぼ同じ構造となっています。ただし、味覚については脳の味覚中枢によるもので個人差もあるので人間と比較して同様かは不明です」


 それを聞いた俺は少し安堵して


「分かった。よく調査した」


 とのみ翻訳OFFにして答えた。

 思えば良くできたAI……もとい、俺には過ぎたパートナーである。まあ、一部ちくはぐなところもあるが彼女にはこれまで何かと助けられてきたのだ。ここはしっかりとまともな料理を提供することでその労に報いるとしなければならないだろう。


 で、まずは


「お前ら何が食えるんだ? 何か食べたいものはあるか?」


 とリース達に尋ねた。

 異世界の食材や料理など知らないがダメ元で聞いてみる。


「ワタシは主様に頂けるなら何でも構いません」


 とリースが頭を下げる。

 殊勝な心持ではあるが参考にはならない。


「ワタシは可能であればオルブクオムをミミス風に焼いたものが食べたいです」


 続いてミルノが答えた。

 うん、何の料理か全く理解できないね。


「わ、ワタシは主様の子種を頂きた……」


 そうエルベが最後まで言葉を続ける前にリースのローキックがエルベの右足に炸裂し、前かがみになった体にミルノのボディーブローが突き刺さった。

 そのまま床の上に崩れ落ちて艶めかしく痙攣する痴女にじょうろ砲を一発お見舞いすると俺はリース達にくるりと顔を向けて突如発生した重要事項を尋ねる。


「え? キミらはアレか? 異性の分泌物を(かて)にする種族とかなの?」


 地球の常識であれば完全にセクハラ案件の質問ではあるがここは炎飛び交い、ヘビが美女に変化する魔法の存在する異世界であるので必要とあらばその流儀に従わなければならない。

 誠に不本意ではあるが異世界コミュニケーションに役立つならば不肖ながらこの身体を提供することもやぶさかではない。仕方がないったら仕方ないのである。


 そんな俺の悲壮な覚悟をよそにリースとミルノが慌てて首が千切れんとばかりに横に振って必死に否定した。否定のジェスチャーも地球と同じなのかと思いつつ、俺は少しガッカリ……もとい、もう十分すぎるほど巻き起こった不測の事態が追加で発生しなかったことに安堵した。だいたい、どんな安ポルノだって話ではある。

 

 そうして気を取り直してミルノに向かって


「残念ながらその料理は知らないので希望には添えない。

 取り敢えず俺の知ってる料理を作るのでそれで我慢してくれ」


 と答える。

 まあ、変に凝ったものでなければ大丈夫だろう。何かあったらその時に考えようと一つ目の問題を棚上げにすることにした。


 さて、真面目に何を作るか考えなければならないがそこで二つ目の問題に突き当たる。


 例えば今、俺がブリの照り焼きをご飯とみそ汁でいただきたいとすると必要な材料は

  ブリの照り焼き=ブリ、酒、みりん、醤油、砂糖

  みそ汁=豆腐、味噌、ネギ、鰹節

  ご飯=米

 となる。


 これらを例の合成で用意するとなると気分的にブリは完全にアウトだ。まあ、米、砂糖、酒、みりん、醤油あたりはまだいいが味噌、ネギ、鰹節はちょっとご遠慮願いたい。


 とまあ、こんな感じで考えるとなかなか難しい。

 ではシンプルな握り飯とかどうかというと炊いた米を握っただけでは料理というのに簡素すぎるし、梅干しとかシャケを具にするとなるとそれを合成するのかという問題になる。パンとか焼くのはそれなりに調理が必要でいいのだが、それだけでは味気なさすぎるのでまた他の料理が必要となるだろう。


 いっその事、菓子とかにするか……クッキーとか。そう考えて5人で山盛りのクッキーを囲んで食べる図を想像する。


 んー、なんか違うな。


 そんな風にあてどもなくグルメラビリンスを彷徨う俺がなんとなしにカスミを見ると何故かソレが頭の中に浮かんできた。


 小麦粉とバター、卵、砂糖を混ぜてリング状にして油で揚げたアレ。


 そうだ、ドーナツを作ろう。

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