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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第二号 異界探索編
35/64

宇宙戦艦の翔んじゃうみたいな

いい感じで各話タイトルの並びが酷い

 少し時間を置いて俺の仕置きによる激痛からようやく回復してきたヒュドラに対して俺は質問した。


「どうだ、分かったか。

 それとも、まだやるか?」


 そうして、俺は光子ブレードをヒュドラに向けて突き出した。


「ううっ……このような屈辱を*める訳には………しかし……」

「ぐすっ…………もういやだよぉ………………」


 二匹は戦う意思を打ち砕かれた様だが……


「はぁん! まだよ!! まだまだイけるわっ!!」


 残念ながらカンニングこと異世界特殊性癖所持者はまだ闘志を失っていないようだ。

 ド変態でなければ敵ながら見上げた心意気ではある。

 そんな俺の妙な感心をよそにして


「なっ! お前! 何*言ってるんだ!! ちょ、ちょっ*待て!!」

「そうだよぅ……もう、降参し**よぅ……」


 と目の前のヒュドラが仲間割れを始めた。

 二対一で首を突き合わせながらギャアギャアと言い争うヒュドラを前にして俺は途方に暮れる。

 多数決で負けを認めるならばそれでもいいので早く決めて頂きたい。


 そうして暫くの間その姿を手持ち無沙汰で眺めていると


「いやぁぁぁぁ! もっと! まだ、欲しいのおぉぉぉぉぉぉ!!」


 突如カンニングがこちらに首を向けて炎弾を放った。


「危なっ!」


 俺は咄嗟に小さく横にジャンプして回避する。

 それを見た残りの二匹が


「アンタっ! 勝手に何やってんのよっ!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁん! ち、違うの! これは違うのぉぉぉぉ!」


 と、慌てた様子で取り繕った。

 しかし、カンニングの顔を見ると目が座った感じで息も荒く、まったく引く様子が見えなかった。


「よおし……分かった……まだ続行でいいんだな?」


 やむなく俺はカンニングの意志を尊重して戦闘再開を通告した。


「ち、違うっ! 待てっ!! もう少し待ってください!!」

「違います違います違います違います違いますぅぅぅぅぅ!!」


 そんな他の二匹の哀願虚しく俺は


「問答無用っ! オラァァァァァァ!!」


 ヒュドラに向かって光子ブレードを大上段に振り上げながら突撃を敢行した。


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「だめよぉぉぉぉ! まだ欲しいのぉぉぉぉ!!」


 向かってくる俺の姿を見たヒュドラは多数決の結果によるものか背を向けて逃走し始めた。

 こうして長きにわたった戦いも終盤という所で花咲き乱れる原っぱで戯れる男女にも似たハートフルな追いかけっこが開幕されたのである。


 逃走に全振りしているのか巨体のわりにヒュドラの動きは素早く、暫くの間は距離が縮まらなかったが


「うおぉぉぉぉぉ! 待ちやがれぇ!」


 と人工強化ボディの能力で強引にヒュドラの背後まで迫ると


「とうっ!」


 と光子ブレードを振り下ろした。


 しかし、


「いやっ! いやぁぁぁぁ!!」


 とヒュドラはその巨体に合わない俊敏な身のこなしで俺の斬撃を回避した。

 ヒュドラを追いかけながら良く観察するとトンカチが前方を向いて逃走経路を確認し、チンプイがこちらを向いて攻撃回避に専念している。カンニングは俺に向かって時折、攻撃姿勢を見せるがその都度トンカチが頭突きをくらわしてその行動を妨害されていた。


 その後しばらく、イベントホール内で所狭しと追いかけっこが続いたが、ヒュドラは余程必死なのか俺の光子ブレードによる斬撃はすべて回避されてしまっていた。たとえ剣を手にしてもそれを使いこなせなければ意味が無い。地球に居た頃から棒きれ一本まともに振るった事の無い俺では無理もなかった。


 このままではラチが開かないと判断した俺は次の手を打つことにする。


 俺は追跡を続けながら頭の中でこの装備のオプションである武技スキルのリストを閲覧した。

 武技スキルは武術の心得が無い一般人でもSRNBA-SHSが楽しめるよう各武術の中級者程度の動作が即座にトレースできるようになるオプション機能である。動作がパターン化されているため本格的な試合では役に立たないがこのヒュドラ相手なら十分有用であろう。


 そうして頭の中で使用する武技スキルリストを確認するが……


 馬庭念流、小野派一刀流 、鹿島新當流、神道無念流、水鷗流居合剣法、聖徳太子流、リヒテナウアー式ドイツ流、キング・アーサー式英国流、真ヴァイキング本流、中国武当剣………


 ええい! 多いわっ!

 中にはSRNBA-SHSの演舞部門用の見た目だけの武技も含まれるのでどれが有用だか分からない。

 やむなく俺は再びカスミへ丸投げすることにした。


「カスミっ! 剣を使用する武技スキルで最も実用性のあるやつを俺にインプットしろ! 今すぐ!」


 そう指示すると


<了解しました。即座に条件に合致する武技スキルを追加します>


 とカスミから応答があった。

 間を置かずして頭の中に武技スキルがインプットされた感覚を認識すると、ろくに確認すらせずにソレを起動させた。

 よし、これで……


「きょえぇええええぇぇぇぇぇぇいっっっ!!!!」


 へ?


 俺は突然の奇声に混乱した。

 やがてその声が自分自身より発せられた物だと気付くと直ぐにヘルメットのディスプレイに表示されている武技スキルの名称を確認する。

 そこに表示されていたのは……


 『薬丸自顕流(やくまるじげんりゅう)』であった。


 * * * * *


 ――薬丸自顕流

 薬丸兼成(やくまる かねしげ)を流祖とし薩摩藩を中心に普及したそれは『一の太刀を疑わず、二の太刀要らず』と云われ、何を置いても先手必勝を旨とする超攻撃的剣術である。

 初太刀に全てを掛けて切りつけ勝負を決することを第一とするが、例え初太刀を外したとしても相手を打ち倒すまで攻撃の手を止める事はなく、自身の守りを顧みずに息をつかせぬ連撃を浴びせて相手を両断する勢いで圧倒するのが特徴だ。その裂ぱくの気合はおよそ人の発するものとは思えずに猿叫(えんきょう)と称され、幕末の薩摩藩主・島津斉興公がご照覧あそばれた際には「まるでキチ○イ剣術だ」とのお言葉を賜るほどの由緒ある実戦剣術であった。

 その威力は幕末において遺憾なく発揮され、受けた刀ごと脳天を叩き割られたり、胴体を肩口よりへそまで内臓が飛び出るほど切り伏せられるなどの無残な死体を量産したのである。


 * * * * *


 何でこれにした! よりによってこれかよっ!

 と慌てても後の祭りである。この武技スキルは完全自動でそのモーションが完了するまでキャンセルできないのだ。


 勢いを増した俺の身体は奇声を上げながらヒュドラへと迫り、その恐るべき斬撃を背中に向けて振り下ろした。不幸なことに突如発狂したかのような俺の様子に驚いたのか回避が遅れたヒュドラにそのまま光子ブレードが命中する。


「「ぴぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

「ああんっ!いっ、いくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」


 哀れな犠牲ヒュドラの絶叫がイベントホール中に響き渡った。


 しかし、まだ攻撃は終わらずに俺の奇声と共に続けて無慈悲な連撃がヒュドラを襲う。


「きょえぃ! きょわっ! ちえぃっ! ちょえぃ! きえぇぇぇぇぃっ!!」


 目の前のヒュドラをよく見ると首がだらりと下がったと思ったら次にすぐさまピンッ!と伸びたりする動作を繰り返していた。どうやらあまりの激痛で気絶と覚醒を交互に繰り返しているようである。

 さしもの俺もこのヒュドラが哀れになり、もし大人しく従うようであれば後でもう少し優しく接してやろうと密かに心に誓うのであった。


 十回にも及ぶ悪夢のような連撃を以てその攻撃が終了すると後には屍のように微動だにしないヒュドラが床に転がっていた。


 そんな姿を目にした俺は激闘続きですっかりハイになったあまり、


「どうだっ! 思い知ったか! この×××野郎っ!!」


 と正義のヒーローにあるまじき罵倒をヒュドラに浴びせかけた。


 しばらくの間、息を整えて冷静になった俺は未だうつ伏せのまま倒れ伏せているヒュドラに近づく。

 ヒュドラの間近まで来た途端にその体の下から床へと湯気を立てた液体が流れだしているのが見えた。


 そして……


「「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっっっっ!!」」

「も、もうダメぇぇぇぇ………………」


 全ての尊厳を失ったヒュドラの慟哭がイベントホールに共鳴した。


 このように気まずい雰囲気の中で終了した死闘は異世界の魔法を凌駕する人類の科学技術が勝利する結果となり、その上で私の華麗なる交渉術により異世界で初めての知的生命体との交渉は成功裏に終わって大団円を迎えたのである。

        ――宇宙戦艦ヒュウガ戦闘詳報第三号 異世界始末記より抜粋――

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