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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第二号 異界探索編
30/64

宇宙戦艦の第三種接近遭遇

 衝撃の新事実! 俺はこの艦の主では無かった!


 ……んなこたぁない。(©タモ○)


「カスミ。この艦を統括する最高責任者は誰だ?」


 と、念のため目の前のヘビに聞こえないよう小声でカスミに確認した。


<はい、マスター。

 現在この戦艦『ヒュウガ』の制御についてあらゆる行動を含め決定する権限を持つ最終管理者は草壁総次朗くさかベそうじろうことマスターとなっております。

 太陽系を離脱してから現在までその権限を他者に移譲した記録はありません>


 微塵も疑っていなかったが当然そうだろうし、これからも誰かにこの艦の手綱を譲るつもりはない。

 というか、こっから離れたら本格的に異世界で宿なし無一文のしゃかりきロビンソンである。

 ちょっと図体がでかいからって調子に乗ってるんじゃないわよ! と内心オネェ口調で考えながら反論を試みることにする。


「あのー、ちょっとよろしいでしょうか……」


 と、おそらく異世界語に翻訳されているであろう言葉で話しかけようとすると。


「なんだ。言葉が通じ*のか、特*に許して*る。話し*みろ」


 などと上から目線の返答が。

 正直、ちょっとイラッとしたがここは抑えて会話を続けた。


「いったい、どなたがアナタをここの主人と決めなさったのですか?」


 そう、質問すると。


「決まっている**ないか。ワタシが決めたから**なのだ。

 ワタシが決めた**は全て正**、他の誰**許しを得る**は必要ない**」


 といった王様発言満載の答えが返ってきた。


 …………


 めんどくさい。


 リハビリがてらにちょっと外に出て艦内を見学して最後に簡単なお料理をして完了のはずが、何の因果で初めての冒険でスライムとかではなく、こんな中ボスみたいなバケモノと相対せねばならないのだろうか。

 しかも、オレ様キャラである。何故、せめて世間知らずのツンデレお姫様とかでないのか。モンスターペアレントならぬモンスターモンスターではないか。略してモンモン。


 だが、相手がジャイ○ンだろうが林真○子様であろうとも嫁がSNSで炎上してたとしても異世界で初めての知的生命体との接触である以上、ここで交渉に失敗するわけにはいかんのだ。

 なのでどうやってこのモンモンを説得しようかと悩んでいると。


「どうしたのですか?」


 と突然、目の前のヘビの横にもう一本ヘビの頭が生えた。

 俺がギョっと驚愕しているのを抑える間もなく次の瞬間。


「さきほどから騒**ですよ。何事**か?」


 さらに追加でもう一本ヘビの頭が生える。


 動揺のあまりついうっかり心の中の正直な感想が言葉となって口から発露した。


「バ、バケモノ……」


 その言葉は不幸なことに正確に異世界語に翻訳されてしまったようで、巨大ヘビ改め三又のオロチは激しく反応した。


「今、何と言**!」

「な**礼儀知らずな!」

「ワタシ達のよう*()()()()()になん**許しがたい言葉!」


 三者三様に激昂する様子の三又のオロチ。

 ジョーダンではなく又三もビックリであろう。


 その内容を聞いてさらに動揺した俺は、再び心の中で思っていたことが反射的に口から漏れ出した。


「え…………お前らメスなの?」


 はっと気づいた時には後のフェスティボゥである。


「有罪!」

「処分**!」

「懲**める!」


 即座に三又のオロチが身を震わせながら2本の足で直立した。


 俺は初めてその怪物の全容を目の当たりにする。

 赤銅色に鈍く光るボディは全身が爬虫類のようなウロコに覆われ、ヘビとは異なりかなり太い。

 それを支える2本の足はその巨体にふさわしく短いが太く強靭そうで、手は足とは逆にティラノサウルスのように小さいが、5本の指に鋭い爪が生えている。更にどこに収納していたのか不明だが蝙蝠のような翼が背中から広がった。


 正に三又のオロチ改めキングヒュドラである。

 いや、この場合はクィーンヒュドラと評すべきであろうか。


 こうしてめでたく俺の異世界初の知的生命体との遭遇は不幸な互いの文化の相違によって不首尾に終わって会話による交渉は決裂し、中ボスからラスボスにレベルアップしたバケモノ相手に否応なしにタイマンする次第と相成ったのであった。

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