宇宙戦艦の納涼お化け祭り
少なからず動揺しながらイベントホールに鎮座する正体不明の物体をまじまじと見つめ、目の錯覚でないことを確かめると指で示しながら再びカスミに確認する。
「いや……あるって……そこに変なのが……」
あって欲しい。いや、間違いなくそこにあるはずだ。
というようなかすかな希望にすがりつつ言葉も途切れ途切れに指摘する。
<マスター。
指し示された場所には酸素、窒素等の大気以外の物質は存在しません>
と、一縷の望みを断ち切るような返答が戻ってきた。
同時に目の前に自分の肩越しから俯瞰した複数のホログラム映像が現れる。
通常のカメラ映像や赤外線・動体反応・生体反応・超音波エコーなど各種センサーを通じた目の前の光景がモニター映像として映し出されている。
そこに表示されていたのは指を伸ばして場所を示している俺自身と……。
その他には何も存在しなかった。
…………
…………
バッと直接自分の目で再び物体のある場所を凝視する。
ある……確かにそこに何かある。
そして、もう一度各種モニター映像を見るとやはり何も映っていない。
…………
おわかりいただけただろうか。
恐怖、ほんとにあった呪いのモニター映像である。
霊か! 心霊的なアレなのか!
知りたくなかった新○イワオが知ってる世界なのか!
そんな、千々に乱れる思考の混乱の中で咄嗟にある考えを思いつく。
「カスミ! 今すぐ俺の視線をモニターしろ!」
と、カスミに指示したが返答にはやや間があった。
<…………マスター。
分析結果とマスターの視点に解析不能な矛盾があります。
指示地点について追加で指向性精密素粒子測定を行います。
測定開始…………………………………………。
………………………測定中……………………。
…………………………………………測定完了。
指向性精密素粒子測定の解析結果を報告します。
指定箇所に不自然な素粒子質量差が観測されています。
また、太陽系内では認められない未知の素粒子が感知されました。
我々の科学技術では解析できない現象が発生している可能性があります>
やはり霊なのか! オバケか! 毛が三本の居候なのか!
ついに科学的に捕捉しちゃったのか!
と、またも困惑しきりな精神状態の中でカスミの言葉に引っ掛かりを感じる。
――我々の科学技術では解析できない現象
…………
「魔法かっ!」
俺は咄嗟に背中に回していた個人携帯用57年式2.5cm単装砲を手にして身構える。
そんな俺の行動に反応したのか次の瞬間、その物体が突然動き出して上に何かが突き出した。
にゅっと突き出たのは巨大なヘビの頭部だった。
暫しの間、お互い無言で見つめ合い対峙する。
…………
…………
そんな沈黙に耐えられずに俺は異世界初の大型生命体にコンタクトを試みたが……
「Wha、What's up?」
何故か英語の挨拶が出た。それもフランクな。
それに合わせて敵意が無い事を伝えるために威嚇してると思われないよう、歯を見せずにニコリとほほ笑む。
そもそもコミュニケーションが取れるほどの知性を持っているのかも不明だが、それに反応したのか目の前の大蛇は少し首をかしげるようなしぐさをした。
「え、えーと」
それに対してどう反応したらいいのか迷っていると。
「lOgsS(ae$d*Ad*「[s[-^dl;;e:??_;yLk_・grs-0qm;l」
と、目の前のヘビの口から何やら言語っぽい音声が発せられた。
アルトリコーダーの音色に所々金属を打ち合わせたような響きが混じる、生まれてこの方聞いた事の無い発音だ。
当然理解できるわけも無く困惑していると代わりにカスミが反応した。
<マスター。この言語は艦内の別の知的生命体が使用している特定の言語に類似していますが、現在の艦内でこの言語を使用しているのはこの個体だけです。
艦内のモニタリングでの複数の言語解析の結果ではこれに一致する言語はありませんが、類似した言語であれば部分的には解読可能です。その場合の言語解析率は43%です。
今すぐマスターの言語解析記憶領域に当該の類似言語情報をインストールします>
そう、カスミが答えてすぐに頭の奥で何かが接続されるような感覚があり、次の瞬間には目の前のヘビが発している言葉が意味のある形となって耳に入ってきた。
俺が異世界の初めて直接対峙した知的生命体から発せられた言葉は……
「ここの主で*る*の私*眠り*邪魔*る者は貴様か!」
…………
…………
えぇーー。




