宇宙戦艦の戦艦鑑定団
船首を後にしてこの戦艦を航空戦艦たらしめる飛行甲板を見るために船尾へ向かった。行きと同様に甲板を覆うツタに足を取られないように注意しながら歩みを進めながら思考を巡らす。
この展示場全体を覆うように伸びた木々の様子から数年程度の時間経過ではないように感じられる。艦内ネットの記録ではこの惑星上についての記録は過去5年までしか存在しなかった。
――ではいつからこの艦がここに存在しているのか?
最初は艦の壁面の年代測定でもすれば分かると思ったが残念ながらこの艦全体に付属物に至るまでナノレベルで劣化防止処理が施されているので艦外部の別のものが必要だ。
その疑問を解き明かす物証としてこのツタの年代を調べるべきだろうがその前に確認しておくことがある。
「カスミ、さっき採取した枝の分析結果を教えてくれ」
そう、カスミに確認する。
<報告します。
先ほどの植物は地球上の物と同様の構造で光エネルギーを生化学反応で化学エネルギーに変換する光合成生物です。
光合成により水と二酸化炭素から炭水化物を合成し、その過程で発生した酸素を放出するという点も同様です。地球上に該当するDNAを持つ個体が存在しないという事以外は地球上の植物との差異は認められませんでした>
帰ってきた答えは平凡でさんざん警戒していた自身が滑稽に見えるものだった。まるで俺がピエロの高○ブーようではないか。雨の日に排水溝から子供を見つめるピエロメイクの雷様を幻視する。
まあ、であれば取り敢えず手近な古い枝を年代測定すればいいのだが…………光合成?
「カスミ、この艦の照明の制御はどうなっている?
艦の機能が停止していた間はどうなっていた?」
そう疑問を投げかけるとカスミが答える。
<お答えします。
艦内照明は通常時には中央よりの一括制御と各部屋のスイッチでの直接制御が可能です。この場合の照明の電源はこの艦の通常動力より供給されます。
艦の制御が不可能となった場合の緊急時では太陽系連合が定める安全規格により照明を含む生命維持機能が各区画毎に独立した非常用機構で制御されます。
この場合は電源も同様に各区画に設置された非常用電源より供給されます>
とりあえずこの艦が動いてない間でも光合成が可能なのは判った。
しかし……
「その非常用機構の管理ログは残っているか?」
再び疑問を投げかける。
<太陽系連合が定める安全規格では非常時の記録の管理は対象外となっていますのでこの艦での非常用機構の管理記録は存在しません>
ダメか……
まあ、このそつが無いカスミのことだ。残ってたら当然チェックしているだろう。
ついでに思いついた疑問も聞いてみよう。
「艦が制御できない非常時では出入口はどうなるんだ?」
<太陽系連合が定める安全規格に従い、艦外が人間の生存できない環境である場合は基本的にすべての出入口はロックされます。
外部からの救助で定められた手順であれば出入口のロック解除が可能です。
もし艦外が人間の生存可能な状況である場合は自動的にすべての非常用出入口が解放されます>
ぐうの音の出ない正論に返す言葉もない。
そりゃあ宇宙空間で漂流する宇宙船の外部ロックなんて人間を苗床にする二重あご異星人でもいない限り開けないし、運よく地球上に着陸できても船底のプロペラシャフトまで行かないと出られませんとかなったらガッカリだ。
何はともあれこちらのあずかり知らない間に勝手に艦内が廃墟っぽいジャングル装飾で一色になり、よく分からん有象無象が入り込んだ過程は理解した。
いい加減あきらめて当初の方針通りに侵入植物の年代測定を行うことにして檣楼下部に絡みつく一番太そうなツタをマチェットで切断して採取する。
すぐさま適当な大きさにツタをカットして筒形容器に突っ込んでカスミ鑑定団に鑑定を依頼する。
無論、初代の司会者は世間様的にはアウトの黒い交際で交代済みである。
間を置かずして帰ってきたカスミの返答は
<採取したツタの年代測定が完了しました。
測定結果として当該のツタが発生してから最低でも60年が経過しています>
…………
はーー……そうなりますか……
宇宙戦艦なんで年齢なんて今更気にしないでいたが60歳追加ですか。そうですか。




