宇宙戦艦の超弩級戦艦
「でけぇ……」
目の前の原寸大『戦艦日向』を見上げるとそんな陳腐なセリフしか出てこない。
ここに鎮座しているのは大日本帝国海軍の伊勢型戦艦の2番艦『日向』の航空戦艦改装後姿のレプリカだ。
全長219.62m、全幅33.83mというこちらは常識的なサイズで兵装は主砲の四一式45口径連装砲4基を始めとして八九式12.7cm連装高角砲8基、25mm3連装機銃19基を備え、内部に『瑞雲』爆撃機兼偵察機20機を格納する。3度の事故でも沈まずに米機動部隊の猛攻を回避し、太平洋戦争末期に呉で終焉を迎えた幸運艦である。
ネットダイブでこの艦の情報を漁っていた時にこれが存在する事も確認済みだったが、こうして自分の目で見ると実感が伴い、その大きさに圧倒される。
「カスミ、この『戦艦日向』の状態はどうなっている?」
<はい、マスター。
宇宙巡航船『戦艦日向』の稼働に問題はありません。
現在、宇宙空間、大気圏内共に航行することが可能な状態です>
「そうか、分かった」
そう、この『戦艦日向』はただのレプリカではなく動くのである。
例の未来の謎技術で宇宙だろうと惑星上であろうが空に浮く。
その上、顔色の悪いナントカ帝国の宇宙人総統とかが攻めてきた訳でもないのに搭載した45口径連装砲で砲弾からビームまでブッぱ出来ちゃう狂いっぷりである。
おまけに搭載されている『瑞雲』爆撃機兼偵察機は全機宇宙仕様の通称『リック・瑞雲』だ。
本来、例のイベントで建造するのはこの『戦艦日向』だけの筈だったのだが、クラウドファンディングの上位投資者に木星に向かって45口径連装砲4基一斉射をする権利を付けたおかげで予想を大幅に超える資金が集まった結果、めでたくこの宇宙戦艦まで建造する次第と相成ったのであった。
つまり、俺が今置かれている状況の元凶が目の前のこれであると言えなくもない。そう考えるとこの『戦艦日向』に思うところが無いわけでは無いが……
「いいわ……コレ」
いかん、オラなんだかワクワクしてきました。
『戦艦日向』を囲う手すりに近づくと喫水線から下は透明のアクリルのような樹脂で固められているのが分かり、その中央に甲板に上がれるタラップが見えた。
甲板に上がるためにタラップの入口へ向かうとその横に『戦艦日向』の案内板があった。
俺はその案内板を見て、
「案内板だ! 伝承の通りだ! 読めるっ! 読めるぞっ!」
と、正に機を見るに敏といった会心のリアクションの達成感に浸っている俺を見てカスミが、
<その案内板は日本語、英語、太陽系共通語で記述されていますので問題無く読めるはずですが、マスターの言語解読機能に何か障害があるのでしょうか?>
と無慈悲なツッコミをする。
……
「すいません、普通に読めます。問題ないです」
確かにツッコミあってこそボケが成立するのだが俺が望んでいるのとは違う。
ここら辺の機微についてもその内教育すべきだろうか……いっその事ツッコミプログラムとかあればそれをインストールさせて……いや、カスミがいきなり関西弁とかで喋りだしたらマジヤバイな……
などと、取り留めのない事を考えながら案内板に目を通す。
案内板には昔ながらの金属の板に『戦艦日向』の艦歴と要目が書かれていた。
外観は第二次世界大戦末期当時を忠実に再現しつつも、マッハ1での空中機動を可能とし、搭載された主砲、高角砲、機銃の各種兵装から実砲弾やら電子ビームとか発射可能であるという悪ふざけがこじれたスペックであり、量産された暁には連邦軍も目ではあるまい。
本当に23世紀の人類社会は一体何と戦うつもりなのだろうか……
ただ、艦首に何故か120%までエネルギー充填出来ちゃうあの砲を付けなかったことだけは評価したい。




