宇宙戦艦の展示場
廊下を歩いて奥まで進むとカウンターのある受付が見えた。
その横にイベントの展示エリアへと続く他より大きめの両開きのドアがある。
俺はドアの前にたどり着くとカスミに質問した。
「カスミ、この扉の向こうの状況はどうだ?」
<はい、マスター。
このドアを抜けるとイベント区画の展示エリアへ出ます。
展示エリアには大きな動体反応はありませんが、外部より侵入した植物が繁殖しています。
微生物や小動物程度の生命反応が確認できますが、大きな脅威は存在しないと判断します>
「そうか、引き続き隣接するエリアを含めて監視を続けてくれ」
<了解しました。
各種センサーでマスターの周辺環境の状況のチェックを続行します>
カスミとのやり取りを終えると、この世界の生命体――といっても植物程度だが――との初めてのコンタクトに備えて気を引き締める。
俺は改めて入り口に近づき、ドアに触れた。
ドアが今までと違い何かに引っ掛かりながら少しぎこちなく左右に開くと、その向こうにかなり大きな面積を誇る展示エリアが見えた。しかし、そこに見える光景は今までの艦内とはやや趣を異にした雑然としたものだった。
まず見えたのが見上げるほど高い天井より垂れ下がった多数の木の根。
その合間にワイヤーで吊るされた第二次世界大戦当時の戦闘機が幾つか垣間見える。
木の根は壁まで這ってそのまま床を浸食し、同じく大戦時の対空機銃や砲弾などの展示物に絡みついていた。
本来は広大な展示エリアをくまなく照らし出すはずの灯りも数多くの木の根に遮られて不規則な影のコントラストを作り出し、やや見通しを悪くしていた。
そんなディストピアっぽい光景を目の当たりにして俺は叫んだ。
「何だこれは! 木の根がこんな所まで、一段落したら全て焼き払ってやる!」
<マスター、
艦内の植物を排除する手段として火を使用するのは了承しかねます。
指向性分子分解処理で除去することを提案します>
「分かってるよ!
こういう時の決めゼリフなんだよ!
聞き流せよ!」
冷静にツッコまれるとかなりの羞恥プレイだ。
しかし、こんなセリフが現実に吐けるチャンスとくれば見逃す手はあるまい。
だって男の子なんだもん。
俺は改めて展示エリアに足を踏み入れた。
床は枯れた木の根やその枝葉の堆積物で覆われ、本来の床がまばらにしか見えない。
そばにある展示物の三連装対空機銃に近づき、よく観察すると木の根より伸びたツタに覆われているが腐食してサビが浮いている様子もなくそのまま使えそうなほど状態は良かった。
そのまま部屋の奥に進んで天井を見上げると、空中に吊り下げて展示されている零戦やアメリカ海軍のコルセアが目に入った。
それらの戦闘機も先ほどの機銃と同様に欠けた部品もなく状態が良い。何か特殊な劣化防止の処理が施されているのかもしれない。
今まで白黒写真程度にしか見たことが無いそれらの兵器を興味深く見つめながら俺は展示物の規模に少し驚きながら感慨にふける。
…………
一通り辺りを見回した後、部屋の中央に立ち、前方を見上げながらため息をついた。
さて。
いい加減、認めなければなるまい。
本当は展示エリアに入って否が応でも真っ先に目に付いたこの巨大な物体を。
ここに本当にあったのか、原寸大『戦艦日向』が……




