宇宙戦艦のブリーフィング
さて、探索の準備は完了したので今回の調査についての最終確認を行うとしよう。
この中央制御室はセキュリティ上、物理的に外界と完全に隔離されているので外に出るには転送装置で移動するしかない。サラッと転送とか言ったが例の素粒子とか量子とかの未来的謎技術に今更驚いても仕方がない。諦めが良いの俺なりの処世術なのだ。
俺は艦内図を空中に表示してカスミに今回の調査について説明を始めた。
「カスミ、今回の調査の最終目的地はイベント用厨房だ。
しかし、艦内の状況調査や侵入した植物や微生物のサンプル採取も同時に行うのでその周辺も含めて探索を行うこととする。
よって、最初にイベントスタッフ用の待機部屋に転送し、途中で調査を行いつつ歩いて移動して最終的にイベント用厨房に向かう」
映像の艦内図に自分の意識にリンクさせ、調査ルートに赤いラインを引いてカスミに説明した。
「マスター何故、最終目的地がイベント用厨房なのですか?」
と、艦内図をじっと見つめながらカスミが質問する。
「そこで調理を行って料理を作り、カスミに食べてもらうためだ」
「私に、ですか?」
「そうだ、カスミに人間が作った料理を食べて人間の文化について体験してもらう。
知識だけでなく実際に体験することが重要なんだ。
料理以外にもこれからは他のことについても色々と体験して学んでくれ」
「了解しました。マスター」
そう答えるカスミの態度はまだ堅苦しい感じがした。
カスミが一生懸命に使命を果たそうとする姿ははたから見るといつか破綻しそうで、どこか不安を覚えてしまうのだ。
任務に縛られることだけでなく、他の娯楽とかにも興味を持ってリラックス出来るようになって欲しいが、ここは時間をかけて学んでもらうしかないか。
そう頭の片隅にこれからの課題として追加した。
「探索は俺一人で行うこととし、
カスミはここに残ってモニターで監視してサポートしてくれ。
何か指示があれば随時命令する」
「了解しました。カスミは中央制御室に待機し、マスターの艦内調査のサポートを行います」
そして、出発する前にカスミに最後の確認を行う。
「この艦内の生物の侵入経路は判明しているか?
特に注意すべき危険な生物はいるか?」
カスミは改めて背筋を伸ばして答えた。
「当艦が機能停止していた間に解放されていた一部の搬入口や上甲板のハッチ、もしくは通気口より侵入したと思われます。
艦の装甲や上部構造物の外壁には破損がありませんので進入路はそれ以外には無いと判断します。
侵入した生物に関してはモニタリングした限りでは生身の人間には危険ですが、我々に損害を与えられる程の脅威となる存在は確認できませんでした。
現在は艦の運用について障害とならない限りでこの惑星の生命体調査サンプルとして放置しています。
しかし、一部の個体が有する未知の能力については不確定要素となりますので、遭遇した生物がマスターやこの艦の脅威となると判断した場合には適切な対処を行う予定です」
「ん、適切な対処とは具体的には何だ?」
「この惑星の生命体全般が酸素呼吸を必要とする事は判明していますので、脅威となる個体が確認された場合は当該区画を閉鎖し炭酸ガスを充満させて無力化する予定です」
それ無力化ちがう! 殲滅や!
1か0しか無いのか。聞いた俺も思わずドン引きです。
俺はカスミの目を見つめて告げる。
「生命体調査に支障をきたす対応は最小限に留めたい。
危険生物に対応する場合は俺の指示に従ってくれ」
「了解しました。マスターの指示にお任せします」
素直に頭を下げて了承するカスミを見て俺は再び頭の中の課題を追加する。
もっと、カスミに柔軟な思考を持つようにしてもらわなければ、いつまで経っても俺がサボれ……もとい、重要な任務を任せられないではないか、と。




