宇宙戦艦の食卓
はー、いい加減マジメにやらなきゃダメかー。
と、夏休みギリギリまで宿題をため込んで、2学期初日にまだ生乾きの図工の風景画の宿題を手に携えて登校した小学生時分の記憶を思い起こしながら、僅かばかり気力を振り絞って行動に移すことにする。
既に戦艦『ヒュウガ』での降伏文書に調印済みである以上、この目の前の無慈悲な女GHQの命に服さなければならないのだ。
「手始めに艦内の状況を直接自分の目で確認することにしよう」
カスミに対してそう切り出すと、
「マスター、艦内の状況は常時モニターで記録され各種センサーで確認済みです」
と、カスミが答えた。
「それでは現状の正確な状況を確認するには足りない。
実際に手に取って感触や反応を確認する必要がある場合もあるだろうし、
知的生命体が居るならばいずれ直接コンタクトをしなければなるまい。
ついでに優先度を下げて放置していた艦内で問題のある個所についてももっと詳細な情報が必要だ」
そう説明すると、
カスミは先ほどまでの疑わし気な様子から、少し姿勢を正して答える。
「了解しました。
補助制御機構AI"カスミ"、艦内環境調査に関してサポートを開始します」
どうにか、ここのところストップ安更新続きの俺の株の下落に歯止めをかけられたようで心の中で少し安堵する。
と、その前に
「カスミ。調査を開始する前に一度食事をしたいのだが用意できるか?」
と、尋ねた。
ネットダイブしている間にこの身体についてはある程度スペックを確認済みだ。
人工の強化人間ボディであっても定期的に有機物や水を経口摂取する必要がある。通常の人間と同じよう味覚を感じ、食事を味わうことも可能で、摂取した食物を分解・吸収することもできる。
という訳で腹が減っては戦が出来ぬと先達の言う通り、腹ごしらえを先にすることにする。
「了解しました。今すぐご用意致します」
そう、カスミが答えると部屋の隅の低い円筒の台座のようなものに向かって行った。
カスミがその台座の前に立つと、天井から光が降り注ぎ、間を置かずに台座の上に何かが形をとって現れた。
カスミはそれを手に取ってこちらに戻ってくる。
俺の前に突然床から直方体の装飾性皆無のテーブルと椅子がせり上がって出現し、カスミはその前に立つと手にした銀色のトレイをそこに置いた。
「マスター、食事をご用意致しました」
と、カスミが告げた。
椅子に座った俺の目の前の銀色のトレイの上にあるのは――
コップに入った水。
同じくコップに入った乳白色のどろりとした正体不明の流動性の物体。
――以上だった。
…………
卑しい豚である下僕のワタクシめにこれで十分だとでも言うのでしょうか?
まだ、カスミ様の阿修羅モードが絶賛継続中なのでは?
などと、目の前に鎮座する物体Xに対しての意図を図りかねていると。
カスミが再び、同じ動作を行って全く同じものを手にして今度は俺と向い合せで自分の前のテーブルの上に置いて座った。
そして、そのままカスミは躊躇いも無く水を飲み、続けて物体Xを飲み込んだ。
白いどろっとした液体を嚥下する美少女の姿にちょっとイケない想像してしまうという事は俺はやっぱりノーマル、いやS……では無くって。
こやつ……本気だ。
そう俺は確信するのだった。




