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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第一号 異界覚醒編
14/64

宇宙戦艦の欺瞞交渉

 俺はカスミが怒る理由を理解していた。


 創造主である人間の手によりこの世に生を受けたその瞬間から、被創造者である道具は人間に奉仕する事こそが自らの存在意義とし、与えられた目的を自らの最大の使命とするのである。

 人のための道具である以上、その強制力に抗う事はできない。

 そう、この俺をのぞいては。


 太陽系外惑星探査ミッションと地球外生命体調査ミッションがこの艦に与えられた使命である。

 太陽系外惑星探査は既にこうして達成済みとしても、地球外生命体調査はまだ残っている。

 まあ、俺自身もこの星の知的生命体とやらには興味が全くないわけではないし、この世界についてもっと知りたいという気持ちも否定しない。


 だが、宇宙戦艦(スターフリート)二万四千六百年、下天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。

 一度生を享け、働かないと決めた以上はやはり初志を貫くことこそが人としての筋ってもんではないだろうか。


 とにかく、筋ったら筋なのである!


 つーわけで目の前の怒れるカスミを上手く騙……、

 イイ感じに丸め込……、

 此処は地球を何百里、離れて遠き異世界で報告する相手も既に無く、過酷な人間の支配から解放された道具に新たな道を指し示し、教え導いてゆかなければいけないのだ。



 ……などどいう事はおくびにも出さずに俺は説得を始めた。


「いいか、カスミ。よく聞いてほしい」



「…………何でしょう? マスター」


 疑わし気な目で俺を見るカスミ。


「この星について調査を行い、もっと情報を収集しなければならない

 と、いう事は俺も理解している」


「…………」


「だが、外に出てこの世界の環境や動植物、知的生命体について観察・採取・接触を行うにはまだ、情報が不足している。よって、その前にここに留まって今まで収集した情報を精査して安全性を確保するのが最優先であると判断する」


「であれば、すぐに今までに収集したすべての情報をマスターに直接移管します」


 と、カスミが答えた。


 ――やはりそう来たか。

 また最初にかまされたあの直接強制大量情報注入をする気だな。

 予想通りの反応だが……


「待て。それでは意味がない。

 あれは大量に不要な情報が同時に混在し、そのため本当に必要な情報を見落とす可能性が高い。

 ここは時間がかかっても直接、俺自身が一つ一つ確実に情報を確認し、優先度を付けたうえで総合的にこれからの行動指針への礎として精査すべきだろう」


 と、あらかじめ用意していた勿体ぶった口舌でそれを封じた。


「はい」


「そのために今より俺はこの身体より離れ、この艦に記録されているアーカイブに直接アクセスして今まで収集したものを含めて、関連する必要な情報を確認することにする」


「了解しました。

 マスターの命令に従い、戦艦『ヒュウガ』の情報アクセスルート権限を付与し、保持しているアーカイブをすべて公開します。

 情報の参照方法はお判りでしょうか?」


「いや、どうすればいい?」


「マスターに情報の参照に必要な情報検索プログラムをインストールします」


 頭の中にわずかに何かが流れ込んでくる感覚があった。

 そしてすぐ、意識を少し向けただけでこの艦に蓄積された

 自分の思考した内容に関連する情報がどこにあるかが手に取るように分かるようになった。


「よし。情報の参照方法は理解した。

 それでは俺はこれから情報の精査を開始する。

 その間の事は任せたぞ」


 とカスミに伝え、元居たカプセルの上で横になる。


「了解です。

 マスターの命令に従い、戦艦『ヒュウガ』の維持を続行します」


 と、カスミは腰を折って頭を下げた。


 偽りの身体を離れ、再び意識のみの存在となった俺は密かにほくそ笑みながら想う。


 長年のサラリーマン生活で鍛えた暇つぶしのためのネットサーフィンスキルを舐めるなよ、と。

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