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異世界宇宙戦艦の大家さん  作者: 井上尭彦
戦闘詳報第一号 異界覚醒編
13/64

宇宙戦艦の生き様

「マスター、命令の内容が正確に確認できませんでした。

 もう一度、ご指示をお願いします」


 と、感情が一切削ぎ落とされた口調で問いただす無表情のカスミ。


「寝る」


 即答する俺。



「マスター、命令の内容が正確に確認できませんでした。

 もう一度、ご指示をお願いします」



「寝る」


 ……


 ……



「マスター、命令の内容が正確に確認できませんでした。

 もう一度、ご指示をお願いします」



「寝るったら、寝る」


 ……


 ……


 ……



「なあ…、カスミ」



「…………何でしょう? マスター」


 怖っ!

 相変わらず感情の感じられない、抑揚のない口調のはずなのに

 何故か背後に怒れる般若が見えるような気がする……


 だが、ここで譲るわけにはいかない。

 俺はまたあの苦渋の日々を繰り返すわけにはいかないのだ。


 こうなる前の自分は三文芝居ですら通行人Aとしても登場が叶わない一介のサラリーマンであった。


 決して、ブラックで過酷な勤務とかだった訳では無い。

 一年か、二年にひと月かふた月ほど忙しい時期もありはするが、それを除けば10時出社の19時退社で土日祝日は休みという感じのゆるい労働である。

 社会人となって何年かして、もともと要領の良かった俺はベテランと呼ばれるようになったが、仕事への情熱はとっくに失われ、砂を噛むように味気ない作業を惰性で消化するようになった。

 そして平日はいつも朝にメシを食ってからスーツに着替えて電車に乗って会社に行き、机に座ってパソコンに向き合って適度に仕事を消化して、定時になるとまた電車に乗って家に帰ってメシを食ってテレビや本を見てから寝るという代り映えのしないルーティーンを繰り返す。


 まあ、普通だねと他人は言う。


 だがしかし、たまに平日の打ち合わせなどで会社から外出するとどうだろうか。

 何故、学生達が休みでない平日でも新宿や池袋や渋谷は相も変わらず人混みに溢れているのか。

 そこに朝から闊歩するのは全員が定年退職した老人とか暇な専業主婦とかモラトリアムな大学生だろうか?


 否、大学生には見えない働き盛りの成人男性や中年がコーヒーショップで休憩時間には長すぎる時間を費やし、制服の高校生が集団でジャンクフード店に居座って延々ととめどもない会話を続け、ゲームセンターにはあまつさえUFOキャッチャーに興じる小学生らしき姿さえ見えるではないか。


 そんな光景を横目に見ながらも、檻の中のハムスターが必死に回し車の中を走り続けるように続く労働の日々に擦り切れてゆく自分の運命から抜け出せずにいたあの頃。


 労せずして不自由なく生きられるという選択肢は一度も目の前には訪れなかった。



 しかし!

 天よ聴け!

 地も知れ!

 人も耳を傾けよ!

 ついでに御旗楯無御照覧あれ!



 人間を超越した存在となり、人間社会から逸脱し、その創造者どもの頸木からも解き離れたこの俺が望むことはただ一つ!



 ”もう! 一生! 働かないぞーーーーーーーーーーーーー!!”



 と、深く心に誓ったのだった。


 ……


 ……


 ……


 などど面と向かって、宣言できる勇気もないので

 まずは目の前の可憐な般若を調伏せねばなるまい。

 

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