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彩子 あの約束まだ覚えてますか?

エピローグ


  明日香と瞳は手術室の前のベンチで俺の両側に座り、ずーと手を握っていた。


 手術は六時間にも及んだが何とか無事成功した。


 経過も順調で彩子はどんどん元気になって行った。


 明日香と瞳は

「曖の力って凄いね!!」って感心していた。


 検査の結果も良好で1ヶ月後、彩子は退院した。


 俺と彩子は退院した次の週に小さな教会で結婚式を挙げた。


 明日香と瞳が全て準備してくれてたよ。


 披露宴は俺の店に戻って親族と友達だけのパーティー。


 明日香も瞳もとっても喜んでた。


 明日香は酔っぱらって、誰彼無しにバグしている。


 瞳は終始泣いていて、くまの息子に慰められていた。


 くまとケンパパは気があったのかダンスしだしたが、相撲を取ってるようにしか見えない。


 彩子は照れくさそうにしながらも嬉しそうで、俺の手をずっと握りしめていた。


 パーティーは誰もが笑顔で、終わる事なく朝方まで続いた。


 みんなが今までの空白を埋めるように。




 それから暫くして、彩子と瞳は俺の店に引っ越して来て、店を手伝ってくれている。


 明日香はケンパパとアメリカから戻って来て、店の近くに家を借り、毎日のように遊びに来る。


 くまの息子は瞳の事が好きなようだか、相手にされて無いようだ。




 俺は随分遠回りしてしまったが、どうやら幸せになれそうだ。


 いや、今は人生で最高に幸せだ。


 ずっと1人ぽっちで死んで逝くと思ってた。


 それが今は優しい妻と元気な娘と可愛い孫に囲まれている。


 もう、いつもの独り言は言わなくなっていた。






 数年が過ぎた。


 みんな元気だ。


 店の裏にある桜の花が満開になった日に家族みんなで花見をした。


 彩子と瞳はご馳走を用意してくれた。


 勿論魔法のドレッシングのかかったサラダもお母さんのコーヒーもある。


 満開の桜の木の下でみんなが笑っているのが何よりも幸せに感じる。


 俺は彩子の顔を見つめながら

「彩子。ありがとう。こんなに幸せな時間を俺にくれて」

 と、心底、彩子に感謝した。


「健ちゃん。私こそありがとう。私を許してくれて」

 と、彩子は目に涙を溜めながらも笑って言ってくれた。


 桜の花びらが一枚ひらひらと舞いながら彩子の頭に止まる。


 俺は笑顔で花びらを取ってあげながら、彩子を抱きしめた。


 そして


「彩子 あの約束まだ覚えてますか?」と聞いた。

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