8 NALの目覚め
『人工知能NAL起動。主に勝利を』
変なアナウンスはそこで途切れた、七色の光も消えている。俺は端末に手を伸ばした。
何だか嫌な予感がする、早く中断しないと。しかし……
身体が、動かない?
「ゴメンね〜。初期カードの割に中々の戦術だったから、つい本気出しちゃった」
頭をポリポリ、舌を出しながらニャミィさんが駆け寄ってくる。
すいませんニャミィさん、助けて下さい。
クソッ、身体おろか声まで出ない。何とか周りにこの異常を知らせないと。
『攻撃対象を捕捉、戦闘開始』
え?
俺、というかゴスロリアバターのナルは瞬時に距離を詰めるとニャミィさんを斬りつけた。
あまりに速さに、俺は何が起きたかすぐには分からなかった。
しかしニャミィさんは違う。咄嗟に二丁の拳銃を交差させて斬撃を止めた。
「この速度にパワー、本気出したって感じ? でも……」
ニャミィさんの顔に焦りと困惑の色が浮かぶ。そりゃそうだろう、ワンワン泣いてた奴が急に暴走したら誰だって同じ顔をする。
しかし口元は笑っていた。
「まだまだ動きはシロウトねっ!」
腕を捻って剣身をそらす。ナルの身体は小さいので簡単にバランスを崩した。そこに渾身の回し蹴りが直撃する。
バギィ!
またもやブッ飛ばされるナル。しかし今度は何の衝撃も感じなかった。既に俺には感覚すらも残されてはいなかった。
ダメージは少ないのか、ナルはすぐに立ち上がった。無言で折られた剣を見つめている。謎の暴走モードになっても、初期設定では歯が立たないようだ。
『ソードシェイプを継続、クロス・エーテル・システム及びCHU内部リンクを再設定……プロトデバイスにアバター制御接続、ナルメタニウム・アームズ再構築、テキストパラメータ更新、高画質画像データ及び3Dモデル修正、可変運動モデル接続、カードリンクシステムオンライン、多重兵装剣コスモ・メビウス起動』
???!!!
なんかメチャクチャ早口で言ってる。
アナウンスの途中から折れた剣が輝き出す。光の中でうねる様に形を変化させると、ナルの右手には新しい剣が握られていた。
長さにしてナルの身長を超えている、片刃の両手剣だ。
剣といっても鋼鉄製の無骨な物ではない。歴史やファンタジーというよりはSFチックなデザインだ。
全体こそ白を基調としているが、剣身に彫られた黒い溝には時折青い光が走っている。
剣身に負けない程肥大した鍔は、手元の一箇所だけ赤く塗られていた。そして剣の中央には七色に光る玉が埋め込まれている。
「戦闘中にカード情報を書き換えた? まさかチート?」
ニャミィさんも困惑したのか、手を口にあてて目を見開いている。観客達の騒めきも一層大きくなった。
チートの意味はよく分からないが、非常事態なのは伝わったみたいだ。
『誹謗中傷を確認』
ナルは軽々と大剣を担ぐと剣先をニャミィさんに向けた。このアナウンスは外の人にも聞こえるらしい。
『悪質プレイヤーと断定、排除開始』
驚いていたニャミィさんの顔がみるみる赤くなっていく。表情は笑顔だが、眉間にはしっかりとシワが刻まれていた。これはかなりお怒りのご様子。
「言ってくれるじゃないナルちゃん。これはキツーいオシオキが必要なようね」
わーっごめんなさい、違うんです。これは勝手に動いてるんです。俺の意思とは無関係なんですよう。
俺の声は当然ながら届かない。
眉をピクピクさせながら、ニャミィさんは構えた拳銃から弾丸を発射した。ナルは手首を捻って大剣を盾代わりに身を隠す。
チューニ初日の猫耳ギャルとのレッスンは、気がつけばトンデモないガチバトルと化してしまった。
ナルのカード構成
【剣】→【多重兵装剣 コスモ・メビウス】
【ファイヤーボール】
【ファイヤーボール】
【ヒール】
【ヒール】




