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『Chaos Hero UNIverse』〜厨二で一番強くナルッ!〜  作者: きょうぞう
第1章 ゴスロリは可変大剣と共に
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6 初めての金髪猫耳褐色ギャル

「ありがとうございました!」


「……ありがとうございました」


 勝負が終わり、開始位置に戻っての一礼。まったく、スポーツの試合かよ。


 結果は見事な惨敗。手も足も出なかった。俺のチューニデビューは、残念ながら黒星で始まることとなった。


「しゃーない。切り替えていこう!」


 対戦ゲームなんだ。何もいきなり勝てるとは思っちゃいない。

 こういうのは場数だと相場が決まっている。俺は再び神殿の中央に向かった。


 その後も何度かマッチングした相手と対戦したが、結果は最初と変わらず散々なモノだった。


 ある時は水の魔法で炎を消され、またある時は斧で剣を折られた。それでも収穫と呼べるものが一応はあった。

 十字架のアイコンが回復魔法なのと、使ったカードは一定時間、再使用出来ない事は理解出来た。


「だからって、勝てなきゃ意味ないだろ」


 俺は今神殿の隅でしゃがみこんで居る。

 マッチングポイントでとばされたのではない。()()()()ここへ来たのだ。


 ただでさえ目立つ格好してるのに、立て続けに無様な負け方をしたのだ。俺の精神はボロボロだった。


 視界の端に、最初に戦った近衛兵が映った。四人程のグループで楽しく談笑している。戦いの中で自信をつけて、早速友人を作って居るようだ。


 それに比べて俺ときたら。


 俺はあまりの惨めさに顔を背けた。神殿から眺める空は何て青いんだろう。

 テキトーに端末をポチってみる。もしかしたらゲームを辞めれるかもしれない。


「ねぇキミ」


 後ろから声をかけられた。それが女性のものだったので、俺は反射的に振り返る。しかし声はすれども顔は見えない。

 代わりに俺の眼前には黒々とした双玉がぶら下がっている。

 一体何かって? オッパイだよ!


 繊維が悲鳴をあげる程引き伸ばされた黒タンクトップ。その中にはこれまた窮屈そうに、褐色の柔肌が谷間を作っていた。


 半ば不可抗力で視線が注がれる中、ポンと頭に手を置かれる。

 ハッとして顔を上げると、そこでやっと声の主と対面出来た。


 肩まで伸びた輝く金髪に、プックリとした唇。そして何より目立つのは頭から生えた黒い猫耳だった。


 金髪猫耳の褐色ギャル。間違いない、さっきすれ違うときに手を振ってくれた人だ。


「なんか困りごとかしら?」


「え、ええっと、その」


 目のやり場に困って、自然と視線が泳いでしまう。


「負け続けて落ち込んでる、とか?」


「うっ」


 図星を突かれ言葉に詰まる。今にも泣き出しそうな顔を見て、お姉さんは慌てて訂正した。


「あっ、別に追い打ちかけにきたわけじゃないのよ。隣良いかしら?」


 俺が黙ってうなづくと、お姉さんは隣に腰かけた。二人で神殿から青空を眺める。

 先に口を開いたのは俺の方だった。


 自分が今日から始めた事、ゲーム自体初心者な事、全然勝てなくて悔しい事、そして一番大事な中断の仕方。


 あるがちな初心者の愚痴を、お姉さんは静かに聴いてくれた。普段から新人救済をしているプレイヤーなのだろう。


「大体のゲームの操作は端末で出来るんですね」


「まぁそんなところね。今日はもうおやすみかしら?」


「そうですね。もう夜も遅いですし」


 端末の時計では既に夜の9時を回っていた。明日も学校があるので普段なら寝る支度をしてる頃だ。

 最も神殿内の人の数は少しも減ってはいない。むしろ増えていた。


「ねぇ、もし良かったら。最後にアタシとカラダ動かさない?」


 お姉さんが顔を近づけながら聞いてくる。髪をかきあげると、耳のピアスがキラリと光った。


「えっええっと……」


 これはアレだ。勝負とか戦闘とかいう言葉を気を遣って避けてくれてるんだ。

 他意は無いんだ、冷静になれ俺。


「直接の方が、アタシも色々教え易いし。ね?」


「はっハハハハハッ、ハヒッ! よろしくお願いにしましゅ」


 ダメだった。今の俺は完全に挙動不審なエロガキだった。ゴスロリ少女の姿だったのが不幸中の幸いだろう。


「ありがとう。私の名前はニャミィよ、改めてよろしくね」


「こちらこそよろしくお願いします。木戸隆二です」


「リュージ?」


 ニャミィさんがキョトンとした顔をする。


 やっ、ヤッベエエエエエエエエエエ!

 男とバレるどころか、普通に本名言っちゃったよ。こういうのはオンラインではタブーなんだろ。学校とか住所とか家族構成まで晒されてしまう。


「ごきげんよう。私、ナルと申しますデスワ」


 咄嗟にキャラを作り、スカートの端を摘んで頭を下げた。

 でも棒立ちで脚が開いたままだから、ニャミィさんからは凄くマヌケに見えてると思う。


「アハハハハハ。いーよいーよ、気にしなくても」


 ニャミィさんは大笑いした。お腹を抑えて身体をくの字に曲げている。笑いのツボに入ったようだ。

 俺は恥ずかし過ぎて頭を上げることが出来ない。いっそ殺して欲しいくらいだ。


「最初見かけた時から男の子なの分かってたし」


 えっとそれはどういう意味だろうか。まさかゴスロリを通り越して、ヤラシさが滲み出ていたのか。


 こちらの気持ちを知ってか知らずか、ニャミィさんは俺の手を取って立ち上がった。


「アタシもこう見えて38のオッサンだし」


「ゲエェ! マジッすか?」


「モチロン冗談よ」


 そう言って小悪魔的なウインクをするニャミィさん。俺はホッと胸を撫で下ろした。

 見た目が派手で近寄り難い感じだけど、話してみたら全然そんな事無かった。優しくて楽しくて色々俺の事を気遣ってくれる理想のお姉さんだ。


「……ウソとは言って無いけどね」


「何か言いました?」


「何も〜。さぁ、これから混む時間だから急ぎましょ」


 先を歩くニャミィさんを見失わないように、俺も早足でついて行く。一抹に不安を感じつつも、俺はプリプリ揺れる尻尾とお尻から目を離せずにいた。

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