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『Chaos Hero UNIverse』〜厨二で一番強くナルッ!〜  作者: きょうぞう
第3章 ドラゴンマスター登場!
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25 ウラ側を知った日

「僕の名前のグリモワールは、そのものズバリ魔導書(グリモワール)から来てるんだ。生まれ持っての魔導の知識の深さ故に一族の長に名付けられ……」


「へ、へぇー」


 ドラゴンとの戦いを終えて、狭苦しい音楽倉庫に戻った俺とグッさん。


 部屋の主であるニャミィさんを待つことになったが、ずっとこんな調子で喋り続けている。よくもまぁ次から次へと設定が口をついて出るものだ。呆れつつも、それが自分の作ったキャラへの愛だと思うと尊敬してしまう。


 対戦が終わってから約三十分。最初会った時に比べると、大分くだけて話せるようになった。


 グッさんの子供姿のアバターは、自分で書いた小説のキャラクターらしい。趣味でネットに上げてると言う。本業はサラリーマンだ。

 初対面の嫌味な対応もあくまで小説のキャラのものだ。グッさん本人は人懐っこい性格をしている。俺が思うに、今の方がよっぽど子供っぽい。本人に言ったら怒るだろう。


「そういうわけで、我がザッハバーグ家は王家にも繋がりのある血筋なんだけど……聞いてる?」


「……な、なんとか」


「もー、ここからが面白いのにぃ。ネタバレを回避するとだねぇ」


 解説はいいから、出来ることならせめて元の小説を読ませて欲しい。何も知らない状態ではネタバレも何もない。


 その時部屋の入り口が光った。待ちに待った家主のお帰りだ。


「いや〜ゴメンねぇ、子供が熱出しちゃってさぁ。早めにご飯つ……っっナルちゃん!?」


 俺の顔を見るなりニャミィさんは飛び退いた。猫の様な身軽さだ。あ、猫か。


「こん〜、ニャミィさん」


 目を丸くする家主とは対照的に、グッさんはダボついた袖で手を振った。


「こんばんわグッさん。あぁそう、ナルちゃんも居たのね」


「せっかく昨日、フレンドになったので」


 気まずいと思いつつ、俺はペコリと頭を下げた。ニャミィさんも会釈しながら愛想笑いを浮かべて席に着く。

 何か聞いてはいけない事を耳にした気がするが、ここは華麗にスルーするとしよう。


「この子スゴイんだよ、ニャミィさん。なんと初見で四大精霊竜(エレメントドラゴン)を倒したんだ」


「えっあの怪獣やられたの?

 そっかぁ、ナルちゃんやるわねぇ」


 あの合体ドラゴンは他人から見ても怪獣の認識らしい。

 負けたはずなのにどこか誇らしげなグッさんと、まるで自分のことのようにボリュームある胸を張るニャミィさん。

 その間に居た俺はつい照れてしまう。


「いやあ運が良かっただけですよ。NALさんも手伝ってくれたし」


「NALさん?」


 キョトンとした顔でグッさんが聞いてくる。しまった、つい口が滑ってしまった。


「ナルちゃんのデバイスはサポートAIがついた特注品なのよ」


「そうなんだ。最近はそんなのも出てるんだねぇ、オジサンすっかり取り残されちゃったよ」


 俺は思わずニャミィさんを二度見したがうまく誤魔化せたようだ。

 それよりもまた何かノイズが聞こえた気がしたが、これもスルー推奨だろう。


「ねぇねぇナルちゃん。グッさんの第一印象どうだった?」


「どうって言われても」


「イヤ~な感じだったでしょ」


 俺はすぐにコクコク首を縦に振った。ニャミィさんは満足したように笑い出したが、頬を膨らましたグッさんがすぐに反論する。


「ヒドイですよ〜ニャミィさ〜ん。僕のはあくまで、グリモワールのキャラですって。それに初対面のニャミィさんには素で接してましたよ」


「私の時は普通でも、他の人にはワザと性悪キャラで接してるじゃない。キャラの成りきり過ぎは良くないわよ」


「一応相手を見て演じ分けてるよ。特にニャミィさんには悪い虫が着き易いんだ。僕が注意しとかないとね」


 悪い虫って、もしかして俺のことかよ。確かにちょっとだけエッチな目で見てたことは否定しないけどさ。


「何だよニャミィさんだけ特別扱いしてさ。グッさんこそニャミィさんの何なんだよ?」


 俺の抗議に、グッさんはフフンとドヤ顔をする。こういうところは素もキャラも同じらしい。


「僕は熱烈なファンの一人に過ぎないよ。なんせ彼女は


「ハイハイ、分かった分かった。私のことはもう良いから、ちょっと話させてくれる」


 手をパンパン叩いてニャミィさんは話を遮った。自分の話題が続いたせいか、照れて顔が赤くなっている。

 初心者エリアでは前から初心者に手ほどきしてたみたいだし、彼女のファンが居ても不思議ではない。


「ちょっと順番が逆になっちゃったけど、彼が昨日話してたカード構成に詳しい友人よ」


「グッさんだよー、あらためてよろしくね」


「一昨日始めたナルです。こんな格好ですが中は男です」


 カード構成に詳しい人だとニャミィさんは紹介したが、グッさんはそれだけでは無い。デバイスの扱いや自作する拘り、自分のキャラ愛やドラゴンの作りこみ、そのどれもがチューニを知り尽くしていると言わんばかりのクオリティだ。実際に肌で感じた俺だからこそ、その凄さは理解できる。


「明日は土日だし、お二人ともまた色々教えて下さい」


 俺は元気よくお辞儀した。

 こんなにも親切で腕が立つ人に出会えたのは幸運に他ならない。この分なら、瑠璃に追いつく日もそう遠くではないのではないか。


 そんな俺の淡い期待は、グッさんの一言で脆くも崩れ去った。


「いや、それはやめておこう」


 素の無邪気でのんびりした顔から一転、目を細めたシリアスな表情になる。グリモとも違う冷めたものだった。俺も入れた気合いを削がれて、思わず耳を疑った。


「ナル、君はしばらくの間チューニにログインするのを辞めるんだ」


 その言葉はとても重く、俺は目の前が暗くなるのを感じた。

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