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『Chaos Hero UNIverse』〜厨二で一番強くナルッ!〜  作者: きょうぞう
第3章 ドラゴンマスター登場!
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21 炎と氷と転がるナル

「【ファイヤーボール】セット」

『コスモ・メビウスーーフレイムスラッシュ』


 火を纏った俺の上段斬りは、またしても炎の竜に阻まれた、俺の刃を翼で受けると再び大空高く舞い上がる。

 刹那、飛び立つ火竜の陰から凍りつく程の突風をお見舞いされた。氷竜の(ブレス)攻撃だ。


 さっきからずっとこんな調子だ。炎の攻撃で氷竜を狙うも、すぐに火竜に邪魔される。


「アハハハッ、さっきからずっと同じ調子じゃないか。いい加減、初期デッキを卒業しなくちゃ」


 一番太い木の枝に座りながら、グリモはその様子を観戦していた。まったくもって腹立たしい限りだ。

 同時に俺はグリモの行動に疑問を感じていた。


 口ぶりからして奴は俺のカード構成や戦術を把握している。悔しいが俺のメビウスではあの杖には手も足も出ない。それにカードの枚数的にもまだ一体ドラゴンを残している。

 本気で勝つつもりなら一気に勝負をつけにくるはずだ。


 格下相手と見くびって遊んでいるのか、もしくは勝敗とは別の狙いがあるのか。

 グリモの考えがどうにも読めない。


 今度は空から火の(ブレス)が降り注いだ。俺は転がりながら紙一重で回避する。

 クソッ、考えてる余裕はなさそうだ。


「NALさん、何か良い手はない?」


『【氷結竜(アイスドラゴン)】には【ファイヤーボール】が有効です』


 知ってる。


 それでもNALさんが俺の拙いイメージを補助してくれるお陰で、メビウス変形は幾分かスムーズに行えるようになった。


 逆転の一手は思いつかないが、足を止める訳にもいかない。【ファイヤーボール】の待機時間(クールタイム)を気にしつつ、俺は飛んでくる(ブレス)の回避に集中する。


 炎しかないから手詰まりなのでは?

 俺は【ヒール】のカードを手にとって握りしめた。俺は冷たい氷をイメージする。

 NALさんも最初はただの剣をメビウスに変化させたのだ。不可能ではない。

 心の中でNALさんに助けを求める。


『了解しました。氷の大きさ、形状、温度、数などを詳しく


「知るかぁー」


 叫ぶと同時に、背中が急にチリチリし出した。(ブレス)に当たったのだ。急いで転がりながら、引き続き草原を駆け回る。

 ニャミィさんの言う通り、戦闘中のカード変化は相当ハイレベルなテクニックらしい。


「ハハハハッ逃げろ逃げろー」


 グリモの煽りには慣れたが、空からの攻撃には全く慣れない。

 二匹の竜は必ず交互に降りてきては、正面から(ブレス)攻撃を仕掛けてくる。動きのパターンは前々から見切っていたが、火竜の邪魔があっては意味がない。


 ならば次は逆転の発想、火竜の方からを仕留めにかかるか。

 先の大地竜(グランドドラゴン)を見るに、ドラゴン供の体力は見た目程ではない。二匹の竜の連携は見事、迂闊に手を出せば反撃は必至だ。

 幸い二匹の身体はカメよりも一回り小さい。被弾覚悟で臨めば一撃で仕留めれるはず。


 作戦としてはこうだ。

 敵の(ブレス)をやり過ごし、空へ逃げる前にカウンターを弱点に叩き込む。なお相方の動きは一旦無視するものとする。

 言葉にすれば簡単だが……いや、可能か不可能かはこの際置いておく。やるしかねぇ!


「むむっ?」


 グリモの声色が変わった。理由は俺が逃げるのを止めたからだろう。俺は棒立ちのまま、敵の動向を鋭くチェックした。

 グリモに動きはない。真正面には降り立った火竜、後方の空には睨みを利かす氷竜。よし、完璧な並びだ。


 敵も警戒してか一旦、様子見に入る。おかげで俺も一呼吸して落ち着けた。

 この作戦は一度きり、外せば二度目はない。

 大きく首を突き出しながら、二匹は同時にブレスを吐く。


 今だっ!

 俺は迫る火竜の炎に飛び込んだ。戸惑ってる時間は無い、頼むぞNALさん。


「コスモ・メビウス」

鋼盾形態(シールドモード)


 刃を中心にして、メビウスの剣身が二つに開く。一旦大きな団扇みたいになると、鍔を軸にしてお辞儀するように折れ曲がる。

 柄がそのまま持ち手になった即席盾の完成だ。


 大剣の状態でも、それなりにナルの身体を隠すことは出来る。それが盾ともなれば竜の(ブレス)も怖くない。

 さらにここで一手間、俺は待機時間(クールタイム)を終えた【ファイヤーボール】を盾に挿入する。これで炎対策は完璧、全て計算通りだ。


 グヲオオォ!?


 炎の(ブレス)を突っ切って、火竜の眼前に躍り出る。さしものドラゴンも攻撃の最中に突撃してくるとは思うまい。


 あとは勢いに任せるだけ。俺は火竜の下顎を思い切り盾で叩きつけた。

 自慢の牙を砕かれ、首が大きく揺さぶられる。行き場を無くした炎を宙空に撒き散らしながら、火竜の身体は光の中に消えていった。


 風を切る音を耳にして振り返ると、急降下する氷竜が迫っていた。仲間の仇と言わんばかりに大きく口を開けている。

 地面スレスレを滑空する影からは、必ず仕留める覚悟を感じた。だが火竜を倒した今、コイツはカモ同然だ。


 地面に伏せて(ブレス)を躱す。

 凍気の残る風の中、俺は突進に合わせて剣を掲げた。竜の鱗に大剣の刃が突き刺さる。


 ギョオオオオヲヲ!!


 高速で腹部を突き破られた氷竜は断末魔を上げる。

 慣性影響で鱗を割かれながら、そのまま尻尾の先まで引き裂かれた。


 俺が剣を下ろした時、あたりは眩い光と肌寒い空気に包まれていた。


 パチパチパチパチ。


 杖を小脇に挟みながら、グリモが俺に歩み寄る。耳触りな拍手をやめると、ドンと地面を杖で叩いた。


「やっぱり噂以上だね。君……の、その剣」


 間の開け方に悪意を感じる。俺はその噂以上の剣先を、グリモの眉間に突きつけた。


「ゴタクはもういいんだよ。サッサと最後の竜を出しな」


 俺はドスの効いた声で睨みつけた。つもりだが、喉から出たのは姿相応の可愛らしい声。つくづく締まらない。


「そろそろ終わらせる頃合いかもね」


 グリモの不敵な笑み、その自身は未だ揺らがないようだった。

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