いつもの帰り道
「千里ー、帰ろう。」
十月後半。もうすぐほとんどの学生が嫌がるテストがある。育美は、千里と一緒にテスト勉強をしようと考えたのだ。
「うん、ちょっと待ってて。すぐ行くから。」
学校から歩いて五分。二人はいつもの商店街の道を歩いていた。そこにはいつものお店がたくさん並んでいた。
「あら、育美ちゃんこんにちは。」
「こんにちは。」
商店街で有名なパン屋の雪子おばちゃん。今日も白いエプロンが似合う。
「そうだ。育美ちゃん、これ食べてみて。」
すると、雪子おばちゃんが小さなパンが入った袋を育美に渡した。
「それ新作なの。よかったら、食べてみてね。」
そう言うと、雪子おばちゃんはお店の中へと入って行った。
「育美、あの人知ってる人?」
「うん、お母さんの高校の先輩。」
その後、二人はいろんな人達に会った。八百屋の勝蔵じいちゃん。雑貨屋のすみれ姉さん。定食屋の藤井夫妻。ドラッグストアの京介兄さん。(etc・・・。)
「はぁ〜。さすがにこれはもらい過ぎだって。」
「だよね。でも、もらわずにはいられないんだよね。」
二人は若葉公園の黄色いベンチに座っていた。二人のそばには商店街の人達からもらったものが山ほどある。
「でも、俺全然知らなかった。育美がこんなにも顔が広いなんて。」
千里がミルクティーを飲みながら言った。
「最初は知らないことばかりだったもん、私。でも、お母さんがこの町で人気者だったから、なんとか私もうまく溶け込めたんだ。」
育美は、レモンティーを飲みながら言った。
その後、二人は若葉公園で遊びまくった。一時間くらいかな。いや、それよりも遊んだかも。
その夜、千里からメールが届いた。
「今日は楽しかったよ。あと一ヶ月でクリスマスだね。」
あぁ、そうだ。もうすぐクリスマスだ。
育美は、カレンダーを見ながら思った。育美はメールを返信すると、部屋のカーテンを開けて窓の外を見た。
クリスマス。楽しみだなぁ。
しかし、クリスマス一ヶ月前、大事件が発生する・・・。