長い一日のデート〜ついに告白編〜
午後一時十五分。二人はカフェで軽くお昼ご飯を食べて、そこから五分歩いた所にある大きな公園にいた。
「『アドベンチャー・チョコ』。やっぱり面白いよね。」
「だよねぇ。」
二人はベンチに座って、一緒に『アドベンチャー・チョコ』を読んでいた。
話の続きには、チョコは旅の途中である男の子と出会い、友人を助けた後、二人はめでたく結婚したのであった。
私もこんな風になれたらなぁ。
「ポタッポタッ。」
突然、空から水滴が降ってきた。それと同時にたくさんの雨が降ってきた。
「大変!!早く雨宿りできる場所探そう。」
「うん、あそこまで走ろう。」
二人は、千里が指差した屋根付きのベンチの所まで走った。その時、ちゃっかり手を繋いでいた。
「ふぅ、いきなり降ってきてびっくりしたね。」
「だよね、天気予報思い切りハズレたよね。」
ううん、大当たりだよ。だってウチら手繋げたんだもん。
二人は持っていたハンカチで濡れた体や服を拭いた。
しばらくすると、あんなに降っていた雨が、いつの間にか止んでいた。
「よかったね、雨止んで。」
「本当だ。あ、虹だ。」
西の空に、七色に染まった虹が掛かっていた。
「綺麗だねぇ。」
「・・・うん。」
二人はしばらくの間、輝く虹を眺めていた・・・。
午後五時三十八分。二人は帰るべく、駅まで向かった。
今日は楽しい一日だった。雑貨屋でペアリングを買ってもらったり、カフェでお茶したり、公園で一緒に本を読んだり、一緒に虹を見たり。いつもはあっという間に過ぎていく一日が、今日は長く感じた。
「今日は楽しかったね、ありがとう。」
育美は定期券を持ちながら話した。すると、
「私ね、嬉しかった。千里君が、脚立から落ちそうになった私を助けてくれて。千里君、学校ではあんまり目立たない人だけど、本当はすごく優しい人だったんだって知れてよかった。」
育美は、少し照れくさそうに言った。すると千里は育美の手を握った。
「俺、中学の時クラスから浮いてて友達も恋人もできなかった。高校入って正直不安だらけだった。でも、育美さんみたいに可愛くて優しい人に会えてよかった。育美さんだけが俺の存在を理解してくれた。それで俺・・・育美さんのこと好きになったんだ。」
突然の告白にびっくりしたが、育美はすぐ答えた。
「ありがとう、私も千里君のこと好きだよ。」
二人は互いに告白した後、手を繋いで駅のホームまで歩いた。
「俺さぁ、クラスでけっこう嫌われるから、あまり人前では話したり一緒に居られないけど、それでも俺と付き合う?」
「うん。周りがなんと言おうと、私は本当の千里君を知ってるんだもん。」
育美はそういうも、少し胸がズキッと痛かった。
千里は育美のクラスでかなりの嫌われ者だった。育美のクラスは派手で面白い奴が多いため、千里はみんなには合わないらしい。
「・・・授業中に手紙こっそり回したり、一緒にお弁当食べたり、メールしたり、電話したり。それぐらいしかできないけど、いい?」
「うん、いいよ育美さん。」
「育美でいいよ。千里君のこと千里って呼んでいい?」
「うん、いいよ育美・・・・・さん。」
「だから、育美でいいって言ってるじゃん。」
こうして二人は恋人になれた。しかし、二人に待っていたのは、波瀾万丈の日々だった。