その時まで・・・さようなら
翌日。二人は電車で二時間くらいのある場所へ向かった。そう、そこは・・・
「ここ、夏休みの時に行った。」
「そうだよ、カモメ海岸。」
思い出した。二年の夏休みに千里と初めて旅行に行ったカモメ海岸だ。
「最後の記念に二人でここで思い出を作ろうと思ったんだ。」
そういうと、二人は海岸に走り、海に飛び込んだ。
二時間後。二人は海の家でお昼ご飯を食べていた。
「千里、記念写真撮ろうよ。」
「また?さっきで五十枚も撮ったじゃん。」
千里は焼きそばを食べながら言った。
「えー。何枚撮ったっていいじゃん。」
そういうと、育美は千里に近づき、海岸で寝そべる。
「私たちが付き合ってもう二年か。」
「そうだね。」
二人は仰向けの状態で互いに見つめ会う。すると、育美が突然起き上がる。
「千里、これあげる。」
育美はポケットの中からペンダントを取り出す。そのペンダントは育美が中学の友達からもらった大事なペンダント。
「育美、これ大事なものなんじゃ?」
「いいの。千里が持ってて欲しいの。」
すると、千里はペンダントの蓋を外す。その中には、二人が記念に撮った大切な写真が入っていた。
「育美・・・分かった。大事にする。それと、育美に渡したいものがあるんだ。」
そういうと、千里はポケットの中からあの大事なものを取り出し、それを育美に渡す。そう、指輪だった。
「千里、これ・・・。」
すると、千里が起き上がる。
「俺、育美と結婚したいんだ。今は無理だけど、ちゃんと勉強して仕事を見つけてちゃんとした人間になってまた帰って来る。それまでずっと待ってて欲しいんだ。」
すると、育美が千里の手を握る。
「うん。私、待ってるよ。私も千里と結婚したかったんだ。」
そして、二人は海岸を歩き始める。
「千里、向こう行ったらメール頂戴。あと、長期休みになったら遊びに行くね。」
「うん。それから育美、誕生日にはちゃんとプレゼント送るからな。」
「うん。私もちゃんと送るね。」
そうして、二人の時間はあっという間に過ぎ、ついに引越し当日。千里は行く前に育美の家に来た。
「育美、じゃあな。」
そういうと、千里は育美に背を向けて家に帰ろうとする。すると、育美が走って来て千里に抱きつく。育美はやっぱり泣かずには要られなかったのだ。
「千里・・・向こうに行っても・・・私のこと・・・忘れないでね。」
すると、千里も急に涙が溢れてきて、育美に抱きつく。
「馬鹿野郎。育美のこと・・・忘れる理由ないだろ。育美は俺にとって・・・大切な女なんだから・・・。」
「千里・・・大好きだよ。」
「俺も・・・大好きだよ、育美。」
そして、二人は別れのキスをした・・・。
さよなら、千里。私、あんたのこと・・・忘れないよ。また帰って来て、二人で結婚しようね。その時まで・・・さようなら・・・。