お見送りいたします
「はぁ!?育美達、ケンカしたの?」
昼休み。育美は真奈美達と一緒にご飯を食べていた。千里は引越しの準備とかいろいろあって学校に来ていない。
「で、ケンカの原因は何なの?」
硬いフランスパンを食べていた加奈が聞いてきた。育美は詳しく原因を話した。
「なるほどね。それじゃあ育美も悲しくなるね。」
「夢を叶えるために最愛の人と離れる。これって女にとっては辛いね。」
「でも、私は千里の夢を応援する。千里のためならいざぎよく見送ろうと思ってた。でも、できなかった。応援すればする程悲しさが増してきてついわがままになっちゃって・・・。」
育美は目から涙をこぼしていた。すると、真奈美が育美の肩をポンッと叩いた。
「育美が桜井君を思う気持ちはよく分かるよ。でも、彼女であるあんたが桜井君にしてあげることは、素直に笑顔で見送ることなんだよ。」
素直に笑顔で見送る・・・。
「うん、分かった。私、千里のことちゃんと見送るよ。」
そういうと、育美は鞄を持って家に帰る。
「育美、なんか幸せそうだねぇ。」
「うん、まさに恋の力だね。」
そういうと、加奈が手をポンッと叩いた。
「よし、決めた。私も絶対、彼氏をつくる!」
「加奈に彼氏なんてできるの?」
「失礼な!!」
真奈美達はケラケラと笑っていた。
千里が引越す二日前。千里は引越しの荷物を庭に置こうと外に出ると、そこに育美がいた。
「育美・・・。」
千里は玄関の門を開けて外に出る。
「千里、ごめんね。私、彼女として失格だよね。別れるのが寂しいからってついわがままになって・・・。」
すると、千里が育美に抱きつく。
「俺の方こそごめん。俺、育美の気持ち全然考えてなくて。」
「千里・・・。」
そういうと、千里が口を開く。
「明日さ、一緒にどこか行こうよ。最後の記念にさ。」
「うん、いいよ。場所は千里が決めていいよ。」
そういうと、二人は互いに別れを告げた。千里は自分の部屋に入るとポケットの中から指輪を取り出す。
「明日、絶対に言うぞ。」
明日が、二人にとって最後の日になろうとしていた・・・。