転校。そして、初めてのケンカ
それから三ヶ月が経ち、二人は高校三年生になった。高校最後の一年ということで二人は部活を引退し、二人は無邪気に遊び呆けていた。もちろん、遊びだけじゃなくて大学受験に向けて勉強も頑張っている。
「ねぇ、育美はどこの大学行くの?」
「私?私は近隣の文学系の大学。千里は?」
昼休み。二人は屋上でお互いの進路について語っていた。しかし、千里はさっきから黙りっぱなしだった。
「ねぇ、千里。どうしたの?」
すると、千里は育美の方を向いて頭を下げた。
「育美ごめん。俺、ずっと前から言わなきゃいけないことがあるんだ。」
「何?」
育美は体を千里の方に向けて聞いた。
「実は俺、将来カウンセリングの先生になりたくて一生懸命勉強してるんだ。そして、ある日最近、父さんが探してくれたカウンセリングの専門学校に行けることになったんだ。」
「へぇー。よかったじゃん。」
「でも、ここからが大変なんだ。その専門学校、今から勉強することになっていて俺、そこに行かなくちゃいけないんだ。しかも、場所は長野県。つまり・・・」
その時、強い突風が吹いた。しかし、育美には千里の言葉がはっきり聞こえていた。
「俺、転校しなきゃいけないんだ。」
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「そんな・・・。」
育美は残念そうな顔をして今にも泣きそうだった。
「引越しは一ヶ月後。俺、これから転校の手続きとかしなきゃいけないからこれで早退する。じゃあな、育美。」
すると、千里は屋上を出て行こうとする。
嫌だ・・・・・・。
「待って千里!!」
育美は出て行こうとする千里の手を引く。
「どうして!どうしてそんなこと急に言うの?」
「俺だってまさかこんな早く決まるとは思ってなかったんだ。でも、夢のためだから。」
「私と夢、どっちが大切なのよ?」
「どっちも大切なんだよ。だから俺は、育美と幸せになるためにちゃんとした仕事に就こうと思っているんだ。」
二人の会話がどんどんエスカレートしていって、だんだん口論になってくる。
「私は今千里がここにいてくれることが幸せなんだよ。お願いだから行かないで・・・。」
「パンッ」
千里は育美の頬を叩いた。パンッという音が空まで響く。
「いい加減にしろよ!育美はわがままなんだよ。いつもいつも俺に指図して駄々こねて俺の意見全く無視。育美のこと好きだけど、わがままな育美は嫌いだ!!」
育美は赤く腫れた頬を抑えながら、震えていた。すると、育美は泣きながら言った。
「私は千里のこと全部嫌いだよ!千里の馬鹿!!」
そういうと育美は屋上を飛び出した。すると、千里はその場で崩れ落ちる。千里の目から、大量の涙がこぼれる。
「ごめん・・・ごめんな・・・育美。」
やっぱり千里は転校するのが辛かったらしい。でも、育美を悲しませたくない一心でついカッとなってしまったのだ。初めて大切に思っていた人を泣かせた自分が憎く思う千里。
その頃育美は、階段の隅で泣いていた。育美は千里と離れたくない一心でついわがままを言ってしまったのだ。
「ひっく・・・ごめんね・・・千里。」
その後、二人はケンカしてギクシャクしてしまい、お互い謝ることができなく、ついに千里が引越す一週間前になった・・・。