積極的な育美
「どうしたの、育美。」
育美は、授業終了のチャイムと同時に教室に入ると、真奈美が言ってきた。
「あー。ちょっとサボった・・・。」
育美は舌を出してへへへっと笑った。
「もう。ほら、国語ノート取って置いたから。」
真奈美は国語のノートを育美に渡した。
「ありがとう。またおごるね。」
「じゃあ、パイナップルパイとレモンティー。」
「えー。そんなお金持ってないよ。」
育美は真奈美と喋りながらも、千里のことを考えていた・・・。
その夜、育美はお風呂に入っていた。 育美は頭にタオルを乗せて、湯船に浸かりながらぼーっとしていた。
「千里君かぁ・・・。」
育美は、タオルをお湯につけて、ブクブク泡を作っていた。
もし千里君と付き合ったら・・・。うーん、映画とか遊園地とか行ったり一緒にお昼ご飯食べたり放課後一緒に歩いたり・・・そうそう、メールしたりたまに電話したり休日に家に遊びに行ったりそして・・・。
「ぎゃああああああ。」
育美はものすごい恥ずかしいことを考えてしまい、思わずタオルを振り回した。
「育美ー。何暴れてるの?早く上がりなさい。」
母親に言われ、育美は我に返った。
育美はお風呂から上がり、自分の部屋で濡れた髪をドライヤーで乾かしていると、
「ヴーヴーヴー。」
机に置いておいた携帯が鳴った。
「あ、加奈からだ。」
育美は、友人に返事を送ると、育美はあることに気がついた。
「そうだ。千里君のメアド聞いてないじゃん私。ああ〜ミスった〜。」
育美はものすごくショックを受けた。
「まぁ明日聞けばいいかぁ。」
育美はあっさり決めると、部屋の電気を消してベッドの中に入り、深い眠りについた・・・。
次の日、育美は早めにお昼を済ませて、千里のいる図書館に向かった。
「千里君、あのさぁメアド交換しない?」
「う、うん。いいよ。」
千里はポケットの中から黒い携帯を取り出した。
「千里君、それってドコモ?」
「うん、そうだよ。」
千里は育美の携帯にアドレスを送信しながら言った。そして今度は育美が千里の携帯にアドレスを送信した。
「やったーーーー。」
育美は心の中でガッツポーズをした。こんなにアドレスをもらって嬉しいと思ったことは初めてだったのだ。
「育美さんっていつもどんな本読むの?」
育美は心の中にいたため、千里の言葉にびっくりしてしまった。
「え、えーと・・・。」
育美は棚がたくさん並んだところへ走って行った。しばらくすると、育美は本を持って戻ってきた。 育美が持ってきたのは、『アドベンチャー・チョコ』というファンタジーものの本だった。主人公のチョコが、友達のココアを原因不明の病気から助けるために、恐ろしい魔法使いと戦う話である。
「あ、これ俺も読んだことある。これ、すごく面白いよね。」
なんと偶然にも、千里もこの本を読んでいたのだ。
「そうなんだ。あのチョコが龍を振り回すところ面白いよね。」
「そうそう。あと、チョコが箒に乗って食用の鷲捕まえるところも面白いよね。」
二人は『アドベンチャー・チョコ』の話で盛り上がっていた。これは一歩前進だと、育美は思った。
次の日から、育美の恋作戦が始まった。
1、千里に
「おはよう」メールを送る。
2、千里の登校時間に合わせて登校する。
3、千里がジュースを買ったら、自分も同じジュースを買う。
4、千里に
「次の授業なに?」や
「テストいつだっけ?」などの他愛のない話をする。
それから一週間後、育美はドキドキしながら図書館に向かった。するとそこには、『アドベンチャー・チョコ』を読んでいる千里がいた。
「ねぇ、千里君。今度の日曜日、一緒にどこか行かない?私、その日時間あるから一緒に本買いに行こうかな・・・って。」
「うん、その日空いているから行こう。」
「本当!?よかった。」
なんて言っているが、育美はもう知っているのだ。育美は少し前に剣道部の友達に日曜日は休みだと聞いていたのだった。
そのあと、千里と別れた育美はグッと握りこぶしを作った。
緒形育美、これからが勝負だ!!