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LOVE DAYS  作者: 美環
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愛を誓うナイト


「ちっ。ナイトのおでましかよ。」


七瀬は育美の体に巻き付けてあるロープをほどくと育美を無理やり立たせる。


「育美、ちょっと一緒に来てくれ。」


「いや。離して!」


「おとなしくしてろ!!」


育美は慌てて逃げようとするが、七瀬はそれを許さなかった。七瀬はナイフを右手から左手に持ち変えて、右手で育美のお腹を殴る。育美は突然気を失い、七瀬に身を任せられる。


「育美、ちょっとの辛抱だから。野暮用が終わったら、二人でゆっくり暮らそうね。」


語尾に音符のマークをつけたような声で言うと、七瀬は育美を抱き抱えて歩き始める。




一方その頃。千里は建物の中をうろうろしていた。


「育美、どこにいるんだ?」


千里は焦りながらも辺りを慎重に見渡す。



落ち着け、俺。育美を幸せにするって心に誓ったのに、それなのに危険な奴から守れなかった。育美は必ず俺が助ける。そして・・・。


千里はポケットの中から小さな四角い箱を取り出した。蓋を開けると、中には二つのシルバーのリング。結婚指輪だ。まだ早いと思っていたが、好きな想いが募りすぎて待ちきれなかったのだ。


高校を卒業したら、結婚しよう。


そう決意すると、千里は指輪を再びポケットにしまう。その時、かすかに歩いてくる音がした。千里は、側にあった鉄パイプを握りしめて敵が来るのを待つ。すると、気絶して眠っている育美を抱き抱えている七瀬が現れた。千里は、育美が哀れな姿になっているのに気がつくと、一気に怒りが込み上げてくる。


「おい、お前。育美に何した?」


「いや、別に。ただ暇潰ししてただけだよ。大人の体験のね。」


その言葉を聞いて、千里はますます怒りが増し、鉄パイプをギリッと握りしめる。


「何が暇潰しだよ。お前、育美が嫌がってるのがわからないのかよ。」


そういうと、七瀬がおちょくるように言ってきた。


「もしかしてお前達、初体験まだとか?」


その言葉に反応し、千里は思わず顔を赤らめる。


「図星だろ?桜井君ごめんね。せっかくの初体験、俺が取っちゃって。」


「そんなことどうでもいい。早く育美を返せ!」


「それは嫌だね。俺は育美と結婚するって決めてるんだ。幼稚園の時からね。」


こいつ・・・。


千里はついにブチキレて鉄パイプで七瀬をやっつけようと飛びかかる。


「ふざけんじゃねぇーーーー!!」


千里は剣道の面の形で七瀬を鉄パイプで殴ろうとする。しかし、その攻撃もあっさり交わされ、千里は七瀬からお返しの横蹴りを喰らう。千里はかなり遠くまで飛ばされ、そのまま壁に激突。千里はあまりの痛さに目に涙を浮かべる。


すると、七瀬は育美を遠く離れた所に移動させ、育美を地面に寝かせる。


「しばらく我慢しててね、育美。」


七瀬は育美にそう言い残すと、直ぐ様千里の所へと向かう。七瀬は拳をパキポキと鳴らしながら歩く。千里は起き上がろうとするが、体中が痛くて起き上がれない。すると、七瀬は千里の胸ぐらを掴むと、千里の顔を殴る。赤く腫れるくらい何度も何度も。七瀬は一通り殴り終わると、千里を上から目線で見下す。


「どうした?かっこいいナイトもここまでか。どうする、これ以上傷つきたくなかったらさっさと育美を俺によこせ。」


すると、千里は蚊の鳴くような声で言う。


「嫌だ・・・育美は・・・俺の・・・大事な女・・・だ・・・。」


その言葉に七瀬は眉をピクリと動かし、千里の背中を踏みつける。


「ぐあっ!!!」


千里はあまりの痛さに思わず声を上げる。すると、七瀬は鼻で笑って言った。


「だいたいお前は育美のこと何もわかってないんだよ。俺みたいに幼なじみじゃないお前に、育美の何が分かるっていうんだ?それに、お前どうさ育美のこと遊びだと思ってるんだろ。お前みたいにかっこいい奴にはいくらでも女が寄ってくるからな。この女たらしが!」


次々に罵る七瀬は蹴るのを止めない。千里は掠れていく意識の中で思っていた。



育美はただの遊び・・・?俺にとって育美は、ただ利用するためだけの女?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・違う。違う違う違う違う違う違う違う!!


「違う!!!!」

千里は突然ガバッと起き上がる。その拍子で、七瀬は後ろに倒れそうになる。すると、千里が七瀬をキッと睨み付ける。その顔はまさに鬼そのものだった。


「俺は・・・俺は育美のおかげで今まで過ごしてこれだんだ。俺、高校入った時不安だっんだ。友達できるかなとか、彼女できるかなとか。

中学の時、クラスでいじめられてて、もしまたいじめられたら自殺しようって決めてた。でも、そんな俺に生きる希望を見つけた。それが育美だった。最初は俺が育美のこと好きだったけど、育美が俺のこと好きだって言ってくれてすごく嬉しかった。育美が俺の側にいて、初めて自分がいるって気がした。だから、俺は育美を守るために生きる。そして・・・俺は育美と結婚するんだ!!!」


千里の叫び声は建物中で木霊していた。



「へぇ。言いたいことはそれだけか?育美を俺から奪おうってか・・・面白い、やれるもんならやってみろ。お前を天国に送り届けてやるよ。」

そういうと七瀬はナイフの刃先を千里の前に突き立てる。すると、千里は自分のワイシャツの襟の所に絞めているネクタイを勢いよくほどく。

「上等だ。育美が助かるのなら俺の命なんていらない。俺は育美のためなら・・・死ねる。」






この瞬間、二人の壮絶な戦いが幕を開けた・・・。

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