通り魔の正体
次の日。育美達五人は夜の道を挙動不審に歩いていた。育美達は通り魔を捕まえようと待ち伏せしているのだ。おとりはというと・・・
「育美、可愛いよ。」
育美だった。可愛い紺のセーラー服は真奈美のお姉さんの。スカートは膝上二十センチとギリギリラインまで短くし、靴下はルーズソックス。スカートにコロンをシュッとひと吹き。髪を二つに縛り、赤い花のヘアゴムは忘れずにつけている。
「でも、こんなんで通り魔が来るかな?」
「大丈夫だって。育美みたいな可愛い子、襲わない通り魔の方がおかしいよ。」
その時だった。
「きたよ。」
育美は千里の合図を聞き、夜の真っ暗な道を歩き始めた。すると、謎の男が育美のあとをついて来る。まさしく通り魔だ。
「真奈美さん、いい?あいつが育美に触れた瞬間に取り押さえるからね。」
「わかってる。」
真奈美にきっぱり言われた千里は、しょぼんとしながら、タイミングを計っていた。しかし、しばらくしても、通り魔は一向に育美にちかづこうとしない。
「ねぇ、真奈美さん。あいつ、通り魔じゃないんじゃない?」
「嫌。絶対あいつよ。あんな不審な行動とるの通り魔以外いないもん。」
一方育美は、なんの素振りもせずただひたすら歩いていた。
「おかしい。あいつ本当に通り魔か?」
育美は、チラチラと後ろを気にしながら、歩く。その時だった。
「きゃあああああ。」
育美はいきなり男に腕を掴まれ、身動きが取れない状態だった。すると、
「また会えたね・・・育美。」
え・・・・・・?
育美はただ呆然としていた。
「こらぁぁぁぁぁぁ。」
自分にやられた恨みを晴らすかのように、真奈美は男に竹刀を向ける。それに驚いた男が、その場から逃げるように走り去る。
「大丈夫?育美。」
真奈美はさっきの怒りをかき消し、育美にそっと近づく。
「うん、大丈夫。ただ・・・。」
「ただ?」
「・・・・・・あの男、私の名前を知ってた。」
それから一週間して、世間を騒がせていた通り魔事件は、風の如く消えていってしまったのだった。本当、あの苦労はなんだったんだって感じだ。
「しかし、なんであいつ育美の名前知ってたんだろう?」
「うん。ねぇ、育美。なんか心当たりある人いる?」
「うーん。わからない。」
育美達は事件のことを深く考えていたが、これと言って答えは出て来なかった。
「はい、おはようございます。」
ホームルームを告げるチャイムが鳴ると、そのすぐ先生がやって来た。みんなくもの子を散らすかのようにぞろぞろと自分の座席へと向かう。
「えー。今日は、転入生を紹介します。」
先生がそういうと、転入生はすたすたと教室の中へ入って来た。
「篠崎七瀬です。よろしくお願いします。」
短い髪にどこか子供っぽい顔つき。身長は推定だと百七十センチありそうな高身長の男の子だ。
「へぇ、けっこういい奴。ねぇ・・・育美?」
育美は青ざめた顔をして、呆然としていた。
「どうした?育美。」
「あいつ、私の幼なじみ。・・・あの時私を襲った通り魔だよ。」
「ええーーーー!」
なんと、通り魔の正体は育美の幼なじみだったのだ。