大人の仕事
この話から、少しずつ読みやすいようにします。m(_ _)m
「千里、問4の答えって何?」
「えーと、34だよ。」
「ありがとう。」
十月初めの放課後。育美と千里は教室で勉強していた。
「ふぅー。終わった。」
「これからどうする?どこか寄ってく?」
「ごめん、今月お小遣いまだなんだ。」
「そっかぁ。」
育美は宿題を鞄の中に入れると、
「ヴーヴーヴー。」
育美の携帯の着信音がした。画面には『お母さん』と書いてあった。
「もしもし、うん、・・・えっ・・・うん。・・・わかった。また考えておくね。」
育美は電話を切った。
「誰から?」
「あぁ。お母さんがね、友達のお店の従業員さんがインフルエンザで来れなくなっちゃったんだって。それで、私と千里でしばらくお店手伝えないかって。」
千里はうーんと頭をひねりながら考えていると、すぐOKした。
「いいよ。バイト代もらえるし、一度バイトやってみたかったんだ。それで、お店って?」
「えーと・・・キャバクラ。」
「・・・・・・・・・・・・キャバクラ!!!」
次の日の夕方。千里は学校が終わると、育美に言われたお店の前に来た。千里は中学の時の紺のズボンに白いシャツ。それから育美からもらった赤のリボン。育美に勧められたウェイターっぽい格好だ。
「まさかキャバクラとは思わなかったなぁ。」
千里はタメ息をつきながら、育美を待っていた。すると、
「千里、お待たせ。」
千里のいる所からちょっと離れた所から育美が小走りで駆け寄って来た。
髪をぐわんっと上に上げてクルクルパーマをかけたようなウィッグをつけている育美。薄いピンク色に胸元に毛むくじゃらがついたワンピースにちょっと高めのヒールを履いた育美。千里の目には、その姿は妖精か女神にしか見えなかった。
「育美・・・なんか綺麗だね。」
千里は顔を赤らめて言った。育美は彼女なのに、今さら恥ずかしくなる千里。
「へへっ。キャバクラだって言うからちょっと気合い入れてきちゃったけど、綺麗って言ってくれてありがとう千里。」
そういうと、育美は千里に抱きつき、頬っぺたにキスをした。
「い、い、い、育美〜〜〜!?」
千里は顔をトマトのように赤くしてふらふらになってしまった。
「ち、千里。ごめん、大丈夫?」
育美はタコみたいにヘロヘロになった千里を支えながらお店の中へと入って行った。
「みんな、注目ー。」
ライオンの鬣のようなクルクルパーマの頭の下の顔はメイクバッチリの化粧顔。衣装は赤の派手なドレスを着たキャバクラのオーナー、ミズキさんが他の従業員さん達に声をかけた。
「今日から臨時バイトとして入ってきた育美ちゃんと千里君でーす。」
ミズキさんは今年で二十九歳になるがまだまだ元気だ。ミズキさんが簡単に自己紹介をすると、他の従業員さん達が二人を見てキャーキャー叫ぶ。
「育美ちゃん、可愛い〜。」
「千里君もかっこいい〜。」
そういうと、従業員さん達の中の女の人が、千里に近づいてくる。
千里は私のものだ!!
育美は千里に馴れ馴れしく近づいてくる従業員さん達を睨み付ける。まるで獲物を狙う虎のようにキッとした目で、背後には怒りのオーラを出している。
「ほらほら、もうすぐ開店時間だから早く持ち場についてください。」
ミズキさんがそういうと、従業員さん達は素早く散って行った。
ナイス、ミズキさん。
育美は心の中でガッツポーズをした。そして、二人のバイトが始まった・・・。