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LOVE DAYS  作者: 美環
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番外編2〜一人の夜と思い出のアルバム〜

『LOVE DAYS』番外編第2段。前回よりも短いですが、どうぞ!!


ある夜。育美は自分で作ったピラフと野菜スープの夕食を摂ると、本棚にあるアルバムを手に取り、一枚一枚捲った。


「あ、これお父さんだ。」


一番最初の写真。家をバックに取った家族写真。かっこいいお父さんと綺麗なお母さん、そしてちびの育美。


「あ、これは海水浴の。」


四歳の夏。育美一家は近くの海に来ていた。育美がスイカを割っている写真と綺麗に割れたスイカを頬張る育美を抱いている母親の写真。


「運動会のもある。これはクリスマスの。」


五歳の秋。育美の幼稚園の運動会育美がリレーで一等賞を取った時、家族で取った一枚。その年のクリスマス。育美の父親がサンタの格好をして育美を抱き抱えている写真。


「あ、入学式の。」


六歳の春。育美の小学校の入学式の写真。短かった髪を二つに結んだ髪型でピンクの制服を着た育美と紺の婦人スーツを着た母親が写っている写真。


「あ・・・お父さん・・・。」


育美は最後の写真を見た。育美と育美の父親が二人で眠っている写真。唯一育美が父親とまともに写った一枚の写真。


「お父さん・・・。」


育美はその写真を抜き取ると、窓から満月の綺麗な夜空を見た。それはまさに、あの日のようだった・・・。






育美、六歳の秋。育美はその時自分の部屋にいたが、一階のリビングから聞こえた声に育美は目を覚ました。

「お父さん・・・お母さん?」


育美はリビングに父親と母親がいることがわかり、ゆっくりと下に降りて行った。二人の声は次第に大きくなっていく。育美はリビングの扉を開けようとした。その時、


「ガッシャーーーン」


リビングから何かが割れる音がして、育美はびくっとした。育美は、扉のガラスから中を見た。


「ーーーふざけるな!!ーーーー!!おい、聞いてるのか!?」


声はよく聞こえないが、父親の声は育美が今まで聞いたことのないような台詞を吐き捨てている。育美は父親のその声に思わず息を飲んだ。

「ーーーーいや!ーーーきゃあああああ。」


母親の叫び声を聞いて、育美は自分の部屋に戻り、頭から布団をすっぽり被った。


「お父さん・・・お父さん・・・。止めて!お母さんをいじめないでーーー。」


育美は布団の中で泣き叫んだ。育美の父親はいつも優しくて家族思いのいい夫だった。育美は父親のことが大好きだった、なのに。


「・・・嫌い。・・・お父さんなんか大嫌いーーー!!」




その三日後に、両親が離婚し、父親が家を出て行った。


「今日から、お母さんと二人で暮らそうね。」


「うん・・・。」

その日から、育美の孤独な生活が始まった。






「ただいまー。」


育美、小学二年生。育美はいつものように学校から帰って来た。家の中は火が消えたようにシーーーンとしていた。

離婚して一ヶ月。育美の母親は朝早くから仕事に行っていて、今家には育美しかいない。


「はぁ。まぁ、仕方ないよね。」


育美はキッチンに向かうと、テーブルの上にラップした白いご飯と味噌汁。おかずは唐揚げとタコさんウインナーと春雨サラダ。その横には今月分のお小遣い、五千円が置いてあった。


「いただきます。」

育美は鞄を床に置いて、テーブルに座って夕食を食べた。育美の母親の作る料理は美味しいが、一人で食べるとなんか味がしない。


「ごちそう様でした。」


それから二十分後。育美は食器を流しの中に入れると、鞄を持って自分の部屋へと向かった。


育美の部屋には、部屋中所狭しと置かれたぬいぐるみと収納ボックスに入っているゲーム機。


「はぁ、宿題でもやろっと。」


育美は机に座り、学校で出された宿題をもくもくと解いていく。そして、十分後。育美は宿題を鞄の中に入れると、ゲームを始めた。内容はほのぼの系ゲームだった。

育美は、白いゲーム機のコントローラーをカチカチと押して、ゲームの主人公を動かす。走ったり、ジャンプしたり、住民と会話をしたり。そんなことの繰り返しだった。


十分後。ゲームに飽きた育美はベッドに横になった。


「う・・・うぅ・・・ひっく・・・。」


育美はベッドの上でシクシク泣き出した。


お父さん、どうして離婚したの?育美、寂しいよ。悲しいよ。育美、いい子になるから、お願いだから戻ってきて・・・。






「ピリリリリリリ。」


気がつけば、朝になっていた。育美は昨日セットしたままの目覚まし時計に起こされた。


「朝か・・・。」


今日は日曜日。休日にも関わらず、育美はいつもと同じ時間に起きた。小さい頃は朝が来るのが辛かったが、何年もこうしてきたのでちょっと慣れた。


「ピリリリリリリ。」


育美が顔を洗って、朝ごはんを食べて、ベッドの上で雑誌を読んでいると、千里からメールがきた。


「なになに・・・今日の午後、若葉公園で一緒に遊ばない?・・・うん、行く行く。」


育美は早速、返信すると、コートを羽織って若葉公園に向かった。






十分後。育美は若葉公園にいた。白いヒラヒラのワンピースに黒い短めのコート。黒のタイツにブーツ、頭には毛むくじゃらの帽子。いかにも暖かそうな格好だ。


「あ、千里。」


その三分後に千里が走ってきた。千里は待たせてごめんっと言ったが育美は気にせず遊具で遊んだ。


「ねぇ、千里。一緒に写真撮らない?」


遊び疲れてベンチでココアを飲んでいると育美がポケットの中から使い捨てカメラを取り出して言った。


「写真?いいよ。じゃあ、俺が撮るから貸して。」


育美は千里にカメラを渡すと、千里にちょっと近づいた。


「はい、チーズ。」


カシャッ




数日後、千里と撮った写真が出来上がった。育美は二人で撮った写真を袋の中から取り出すと、それをアルバムの中に挟んだ。


「お父さん。この人ね、私の彼氏なんだ。」


育美はアルバムを持って窓の外を見た。






お父さん、元気ですか?私は元気です。私は時々お父さんがいて欲しいって思う時があります。でも、今はお父さんと同じくらい好きな人ができたので寂しくないです。体に気をつけて、いつまでも元気でいてください。

追伸・・時々でいいので、家族のアルバムでも見てみてね。


育美

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