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LOVE DAYS  作者: 美環
21/44

夏休みはドキドキがいっぱい


夕方、二人は近くのスーパーで買い物をしていた。別荘で生活するためにだいたい三日分くらい買いだめしておくのだ。


「今日の晩ご飯、何作る?」


千里は、野菜コーナーでキャベツを選んでいた。


「うーん・・・野菜スープ?」


「って簡単すぎるだろ!」


千里は買い物籠をレジの所へ持って行った。






そして、二人は買い物袋を自転車の籠の中に入れて、自転車に乗って帰ることにした。


「私、立ち乗りしてもいい?」


「馬鹿!スカート捲れるだろ。」


千里は顔を赤くしながら、育美の短い赤のスカートを見た。

「千里エロいよ!何考えてんの!」


育美は千里にビンタした。


「お前が変なこと考えさせるからだろ!」


「私は立ち乗りしてもいいって聞いただけで、別にエロいこと考えろとは言ってないもん。」


二人は五分くらいケンカした後、育美は仕方なく立ち乗りをやめた。


「千里本当は見たかったんじゃないの?私のパンツ。」


「変なこと言うと、振り落とすぞスケベ!」


二人のケンカは、自転車の運転中でも行われていた・・・。






その夜、二人は広いキッチンで晩ご飯を作っていた。メニューは、野菜サラダとコンソメスープと・・・レンジでチンするピラフ。


「なんで最後だけレンジなんだよ。」


「だってケンカしてたらもう七時だし、早くご飯食べたいんだもん。」


育美は野菜を切りながら言った。


「先にケンカの原因作ったのそっちだろ。」


千里はぶつぶつ言いながら、ニンジンの皮を剥いていた。その時、


「いったーーー。」


千里は手元が狂って指を切ってしまったのだ。


「千里、大丈夫?」


そういうと、育美は棚の奥から絆創膏を取り出し、シールを剥がして千里が怪我した指に絆創膏を張った。


「よし、OK。千里は休んでいいよ。あとは私がやっておくから。」


そういうと育美は、再びキッチンへと向かった。千里はダイニングテーブルの前に腰掛け、せっせと料理を作っている育美を見ていた。


「・・・やっぱ女って付き合って見ないとわからないことっていっぱいあるんだなぁ。」


「何言ってんの。千里最初見た時、ただの優等生かと思ってたけど、こうして付き合って見て優しい奴だって知ったんだもん。付き合って変わるのは女だけじゃないんだよ。」


育美は、出来上がったコンソメスープを大きな器に盛っていた。


「育美最初の頃は優しくて素直で・・・でもいざ付き合ったら、わがままでスケベで凶暴で・・・あたっ!」


キッチンの方から飛んできたニンジンが千里の頭に当たった。


「誰がわがままでスケベで凶暴だって!!!」


怒った育美が、おたまを持って千里の方に向かった。育美は、おたまを千里の頭目掛けて振り落とした。しかし、千里が育美の手をガシッと掴んだ。そして、


「・・・・・・。」


千里は育美にキスをした。重なった唇が二人の動きを止める。

しばらくして、我に帰った育美が千里の唇から離れ、リビングの壁の方に隠れてしまった。


「育美、ごめんな。突然だったからびっくりしただろ。でも俺、お前のそういう恥ずかしくて照れる所が好きなんだ。だから、キスしたって理由じゃ・・・いや・・・あああ、頭こんがらがる〜〜!」


千里は頭を掻きながら言う。育美は壁の奥に隠れたまま。


「と、とりあえず晩ご飯食べよっか。な、育美。」


「・・・・・・うん。」


二人はなんとも寂しい晩餐を過ごした・・・。




夜十時。育美はみさきの部屋のベッドの上で雑誌を読んでいた。育美は雑誌を一枚一枚ゆっくり捲りながら、千里のことを考えていた。


『お前のそういう恥ずかしくて照れる所が好きなんだ。』


育美は千里が言ったこの一言が頭から離れなれなかった。


「はぁ、なんか悲しくなってきた。もう寝よ。」


育美は、部屋の電気を消すと、ふかふかのベッドに倒れ込んだ。




しばらくすると、誰かが育美のいる部屋の鍵を開ける音がした。


「ん、千里かな?」


育美はそう思い、部屋の電気を付けた。すると、そこにいたのは千里ではなく、育美の知らない人だった。


「あんた、誰?」


黒い少し癖がかかった髪にキリっとした細い目が特徴的な綺麗な顔。身長百七十センチ以上はありそうな高身長な男が、育美の部屋の扉の前にいた。


「見たな・・・。」


そういうと、男は育美に襲いかかってきた。


「きゃああ・・・んぐっ!」


育美は叫ぼうとしたが、男に口をふさがれてしまったのだ。


「俺は待っていたんだよ・・・お前が俺のものになる時を・・・。」


男をぶつぶつ言いながら、育美の首を絞める。


俺のもの・・・。


育美は必死で男の手をほどこうとするが、男の力は思ってたよりも強い。


「ずっと一緒になろうな・・・みさき。」


みさき・・・?みさきちゃん!こいつ、私をみさきちゃんと勘違いしてる!


「違う!!」


そういうと育美は、自慢の長い脚で男の腹を突飛ばした。

「ぐはっ!」

男は部屋の入り口までぶっ飛んだ。


「違う!私はみさきちゃんじゃない。みさきちゃんには首筋にほくろがあるけど、私にはないよ。」


そういうと育美は、長い髪を束ねて首筋が見えるようにした。そして、育美は棚の上に置いてある写真立てを男に見せた。確かに、写真の中のみさきには首筋にほくろがあるが、育美にはない。


「そっか。みさきはもういないのか・・・。」


そういうと男は、そのまま部屋をあとにした。結局なんだったのか、育美にはわからなかったが殺されかけたという恐怖に少し怖くなった。


「どうしよう・・・。」

育美は仕方なく、千里が寝ている部屋に行くことにした。


「コンコンッ」


育美が千里の部屋の扉をノックすると、千里が出てきた。


「育美、どうした?」


寝ぼけ眼で眼鏡をかけた千里があくびをしながら出てきた千里に、育美は迷った様子で言った。


「あのさ、その・・・一人で寝るの怖いから、一緒に寝てもいい?」


「いいけど、何かあったのか?」


育美は千里の部屋に入り、さっきの出来事を千里に話した。


「・・・たぶんそいつ、みさきのこと好きだったのかもしれない。昔、みさきのこと好きだった奴いっぱいいたからな。」

そういうと、千里は布団の中に入った。


「ほら、育美入れよ。広いから狭くないぞ。」


千里は自分の横の敷き布団をポンポンと叩く。しかし、育美はなかなか入ろうとしない。


「どうした、育美?」


「・・・だって、千里私が寝ている間に変なことするかもしれないもん。」


「ってお前じゃあるまいしそんなことする訳ないだろ!」


そういうと、千里はベッドの上にあった大きな枕を育美に投げつけた。


「いったーーー!何すんのよ!!」


育美は反撃に自分が持っていた枕を千里に投げつけた。


「やったな、育美!」


「そっちこそ!」


二人はしばらくの間、枕投げを楽しんだ・・・。






三十分後、育美は千里の布団に入ると疲れて眠ってしまった。千里は眠れずぼーっとしていると、育美のさらさらの髪を撫でる。


「みさき・・・。」


千里の目には『育美』ではなく、『みさき』が映っているようだ。すると、千里はベッドから起き上がり、窓の外を見た。


「みさき・・・待ってろよ・・・。」


「う・・・ん。」


育美は、千里の恐ろしい決意を知らずに寝返りを打ちながら深い眠りについていた・・・。

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