愛の花束を送ります・・・。
七月。今日はなんの日か知っていますか?・・・そう、今日は千里にとっても、育美にとっても大事な日なのです。しかし、千里は今日がなんの日かまだ知らないようです・・・。
「千里、おっはよー。」
育美は朝、下駄箱の所で出会った千里に向かって思い切りダイブした。千里は育美の頭が顔にぶつかって、目玉が飛び出す所だった。
「おはよー。育美、今日はいつもより元気じゃん。どうしたの?」
「ふふふ。何でもないよ。」
実は育美、今日がなんの日かということは千里には秘密にしているのだ。そう、今日は大事な日だから・・・。
「ねぇ、今日半日で学校終わるよね。久しぶりにどこか遊びに行こうよ。」
「いいね。どこ行く?」
「それは行ってからのお楽しみ。」
育美と千里は、いつものように手を繋ぎながら、教室へと向かった。
正午。育美と千里は隣町へ行く電車に乗っていた。平日なため、電車は広々としていた。
「これからどこ行くの?」
「そうだね・・・じゃあ、あそこ行こう。」
育美は、さっきパン屋で買った焼きそばパンを一口パクっと食べた。
三十分後、二人はバッティングセンターにいた。中はがらがらで、貸し切り状態だった。
「育美、野球できるの?」
千里がヘルメットを被りながら言った。
「うーん。キャッチボールぐらいかな・・・。」
育美は、メダルを入れて、バッターボックスに入って行った。
「キャッチボールだけ!?育美、危険だからやめなよ。」
「大丈夫。前から来る豪速球のボールはバレーボールで慣れてるから。」
「いや・・・バレーボールとは違う気が・・・。」
千里が言っている間に離れた所から第一球目が来た。すると、
「カキーーーン」
金属の甲高い音がセンター中に響く。そして、育美が打ったボールは空高く飛んで行った。
「千里、勝負しようよ。十球打って一番多く打った方が勝ち。負けた方は勝った方に好きなアイスを奢る。」
すると、千里がヘルメットを被り、バットを握った。
「その勝負、載った!」
十分後、勝負の結果・・・千里が勝った。実は育美、千里が勝つようにちょっとわざと外したのだ。二人はコンビニでアイスを買っていた。
「千里、何アイス食べる?」
「うーん・・・じゃあ、これ。」
千里は、ミカンの果実がぎっしり入ったアイスを選んだ。
「じゃあ、私はこれ。」
育美は、千里のアイスより二十円高いチョコアイスを選んだ。
「悪いね育美。俺、ちょっと高いアイス選んじゃって。」
「いいよ。だってルールだもん。それより、次行こう。」
その後、二人はいろんな所へ行った。
ボーリングやゲーセンで遊んだり、映画を見たり、外でクレープを食べたり。二人は時間を忘れて遊びまくった。だって今日は大事な日だから・・・。
夜六時。二人は若葉公園にいた。
「ふー。たくさん遊んだねぇ、千里。」
「そうだね。ところで、今日って何の日?」
待ってました、そのセリフ。
「それは・・・。」
すると、育美は鞄の中から、あるものを出した。それは、豹柄の熊のぬいぐるみでぬいぐるみの手には『ハッピーバースデー千里。』の文字が書かれたカードを持っていた。
「あ、そういえば・・・。」
千里はやっと思い出したらしい。
「七月十七日。誕生日おめでとう、千里。」
そう、今日は千里の誕生日だったのだ。
「そうだった。いやぁ、最近忙しくて忘れてたよ。でも、育美はちゃんと覚えていてくれて嬉しかったよ。ありがとう。」
そういうと、千里は育美の頬っぺたにキスをした。
「ちょっと、千里・・・もう。」
育美は顔を赤くしながら、千里の頬っぺたにキスをした。
夏休み目前のちょっと嬉しいプレゼント・・・。