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LOVE DAYS  作者: 美環
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昼下がりの惨劇


昼休み。育美と千里は昼御飯を食べ終わると、学校の裏庭の花壇の所にいた。二人は園芸委員会といって、ただ単に花を植える簡単な委員会の仕事中だ。


「しかし、園芸委員会も楽じゃないね。」


「だよね〜。花植えるって一言でいってもまじ体力いるよ。」


育美と千里は、ポットに入っていたパンジーの苗を花壇の土に植えていた。二人共、ワイシャツの裾を捲って手を泥だらけにしながら作業を進めていた。


「あ、水忘れてた。」


「嘘!俺取りに行って来るよ。」


そういうと、千里はじょうろを取りに走った。

「千里、逃げないよね・・・。」


育美は、千里が来るまで作業を中断した。しばらくの間、携帯をいじっていると、


「ねぇ、桜井君は?」


「へ?」


育美は声のした方を向くと、そこにいたのは女の子だった。黒いショートヘアにキリっとした目に千里と同じ銀縁眼鏡。きちんとした制服に手にはデジカメを持っていた。


「えっと・・・千里は今ちょっといなくて」


「あんた、桜井君の何?」


女の子は育美の話を割って言ってきた。しかも、少しムカつき気味に。


「えっ。な、何って?」


すると、女の子はポケットの中に手を突っ込んだ。


「うざいんだよ、ブス。」


女の子はポケットから手を出すと、右手に持っていたのはバタフライナイフだった。


「ちょっと、あなた何する気?」


育美がそういうと、女の子はナイフの刃先を育美に向けた。


「惚けないで。あんた、桜井君捕ろうとしてるんでしょ?」


は・・・はい?私、捕ったっていうより捕られたって方ですけど。だって向こうから告ってきたんだもん。


「い、いや。私は千里とお付き合いしてるわけで・・・。」


すると、女の子がナイフを育美に向かって降り下ろした。

「きゃああああ。」


育美の悲鳴が、裏庭中に響く。育美は間一髪の所でナイフから逃れられた。


「ちょっと!何するよ危ないじゃない!」


「桜井君と付き合ってる?調子にのるなよ、この泥棒猫!」


泥棒って・・・。私いつ千里を盗んでっていうのよ。っていうか、千里は物じゃありませんから!


「あんた、私がどれだけ桜井君が好きだったか知ってるの?」


知りません。だってまだ知り合って五分も経ってないもん。


すると、女の子はナイフを下ろすと、語り始めた。


「私は桜井君と同じ中学校で当時入学した頃から桜井君のことが好きだった。私、本気で桜井君と付き合いたかった。でも桜井君、クラスでかなり嫌われていて、友達も桜井君のことが嫌いって言っててとても告白なんてできなかった。」


中学校の時からってことは・・・四年前から!私なんてまだ一年なのに。


「そして受験。私は桜井君と同じ高校に通いたくて、必死で勉強した。私馬鹿だから、この高校に通うのが厳しいって先生に言われたけど、桜井君のために死に物狂いで頑張ってやっと合格した。これで桜井君と付き合える。桜井君と結ばれるって思ってた。・・・でも」


すると、女の子はまたナイフを育美に向けた。


「・・・あんたのせいでその願いは壊された。あんたが私の桜井君を奪ったんだ。私の桜井君を・・・。」


その時だった。女の子は育美に向かって襲いかかってきた。女の子は狂ったようにナイフを振り回す。


「い、いや!!」


育美は右往左往に動くナイフから逃れようとした。しかし、ナイフが育美の手を捕らえた。


「きゃああああ。」


育美は、怪我した手から流れ出る血を必死で抑えた。


「惜しかったな〜。もうちょっとで当たるところだったのに〜。」


や、やばい・・・。こいつ狂ってる。もはや正常じゃない。


育美は恐ろしくなり、その場から逃げようとした。しかし、


「ガッ」


女の子が投げた大きな石が育美の頭に直撃。育美は勢いよく滑り転んだ。


「あんたみたいな女に桜井君は渡さない。渡すもんか・・・。」

女の子は、ツカツカと育美に近づく。


「や、やめて・・・。」


育美は必死で許しを訴えた。しかし、女の子は聞き耳を持っていなかった。


「桜井君は・・・私のもの。」


そういうと、女の子はナイフを育美めがけて降り下ろした。


「いやあああああ。」


その時だった。


「ザクッ」


育美は、目を恐る恐る開くと、目の前に千里がいたのだ。千里は、育美を覆い被さるように立っていた。


「ち、千里。腕怪我してるよ。」


育美は千里の腕を指差した。千里の左腕からポタポタと血が流れ出ているのだ。


「これぐらい平気だよ。それより、育美怪我ないか?」


育美は首を横に降った。


「よかった。俺の大事な育美に傷がついちゃ困るからな。」

「・・・馬鹿。」


育美は、今にも泣きそうな顔で千里に抱きついた。


「桜井君は、私のものなんだから。」


女の子は、何かに操られたかのようにぶつぶつ言っていた。


「君、二組の小山千春さんだよね。俺と中学同じだった。」


「え、はい。そうです。」


千里がそういうと、女の子は態度が一変して、急におとなしくなった。


「あの、君が俺のこと好きだって言ってくれてすごく嬉しい。でも、俺には育美だけなんだ。だから、もう育美に嫌な思いはさせないで。そして、もう俺のことは忘れて。」

すると、女の子はうつむきながら言った。


「・・・もう、諦めるしかないのか。でも私、桜井君好きになったこと後悔してないから。今まででこんなに人を好きになったことないんだ。ありがとう。育美さん、ごめんなさいね。桜井君と幸せにね。・・・さようなら。」


女の子は泣きながら学校の方へと走って行った。


「・・・なんか、俺悪いことした気分。」


千里は、少ししょんぼりした。すると、育美は千里にでこぴんした。


「今さらそんなこと後悔しないの。恋に逆風は付き物なんだから。・・・あの子、いつかまたいい恋ができるよ。きっと・・・。」

二人は、手を繋ぎながら、教室へと向かった。




しかしこの後、二人に恐ろしい事件が降りかかる・・・。

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