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LOVE DAYS  作者: 美環
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ハプニングTheクリスマス


十二月二十四日。千里は決心していた。全くモテなかった自分に、可愛くて優しい彼女ができた。見た目はサバサバしたギャル系だけど、心の中はめちゃくちゃ優しい。俺はそんな彼女に惚れて、彼女も俺のことが好きだと言ってくれた。 俺は、彼女に喜んでもらうためにクリスマスデートを計画した。


「育美。」


千里は、いつもより二十分も早く待ち合わせ場所に着いた。黒いダッフルコートに白のタートルネック。ちょっとダボダボしたジーンズに黒いシューズ。千里はいつもよりちょっとかっこよく決めていた。


五分後、育美が小走りでやって来た。

「千里ごめんね、待ったでしょう?」


襟の所に薄茶色のファーとボンボン付きのリボンがついた白いニットコートに白のキャミソール。ピンクのふわふわスカートに黒い水玉のハイソックス。靴はピンクのミュールに首には十字架のペンダント。いつもよりお洒落に気を配っていた。


「いいよ。いつも俺の方が待たせてるから。」


そう言うと、千里は育美の手を引いて、近くのカフェに入った。


「いきなりだったから、焦ったでしょう?」


「ううん、もう慣れた。」


千里はコーヒー、育美はココアカプチーノを飲みながら、お喋りをした。

「あのさぁ、育美。」


「何、千里?」


千里は何かを取り出そうした。その時、


「クリスマスに再会するとは、なかなかの偶然だね。」


二人は聞き覚えのある声にびっくりした。すると、目の前にいたのはあの時の不良達だったのだ。

(『最初の・・・。』で登場したレストランの不良三人組である。)



「何?あの時もう面見せるなって言ったでしょう。」


育美は毅然とした態度でカプチーノを飲んだ。すると、一人の不良が千里の腕を掴んだ。


「ちょっと時間頂戴よ。」


不良達は二人を店の外に連れ出した。




「おらおら、まだこれからだぞ。さっさと立て!」


暗い路地裏。不良達はこの間のお礼だからと言って、ひどいことをしている。一人の不良が育美を取り押さえていて、残りの二人が千里をタコ殴りしている。


「ほら、どうした?可愛い彼女を守るんだろ。しっかり守れよ!」


不良の一発のパンチが、千里のお腹にヒットした。千里はその衝撃でゲホゲホと咳込んでいた。


「ほら、どうしたグズ!もう立てないのか?」


不良達は丸くなった千里を次々と蹴り飛ばす。


「もうやめて!千里に手を出さないで!」


育美は必死で訴えた。すると、一人の不良が育美に近づいた。


「そういやあ、俺一番ムカついてるのお前だっけ?まぁ、お前けっこう美人だし。」


すると、不良が育美の巻いた髪を鷲掴みした。


「おい、お前こいつの彼氏だろ。お前がこいつを俺達に譲るか、それとも今ここで死ぬか、どっちかにしろ。」


はぁ!?こいつ等最低!


育美はなんとか逃げようとするが、不良の力は案外強い。


「逃げんじゃねぇよ。お前にはあとで気持ちいい思いさせてあげるからな。」


不良が育美の顔に手をかけた。その時、


「バキッ」


「ぐあっ」


一人の不良が、宙を飛んだ。千里が、ボロボロの体で不良を殴ったのだ。


「育美に手を出すな。育美に手を出す奴は・・・俺が許さない!」

ふらふらの足で、千里は今にも倒れそうだったが、千里の声は凛々しかった。


「そんな口叩けるのも今の内だぞ。見ろよ、これ。」


不良の一人が、ポケットの中から何かを取り出した。それは、可愛くラッピングした四角い箱だった。


「か、返せ。それは大事な物なんだ。」


千里の慌てぶりを見て、育美はすぐそれがクリスマスプレゼントだとわかった。


「へぇー。そんなに大事な物なんだ〜。」


すると、不良はプレゼントを落とし、それを思い切り踏みつけた。


「あ、ごめーん。足が滑っちゃった〜。」

不良は馬鹿にするように言うと三人揃ってゲラゲラ笑い出した。


許せない・・・。


育美は堪忍袋の尾がプチンッと切れるのがわかった。育美は不良の胸ぐらを掴むと、その不良を仲間のいる所へ投げつけた。


「うわあああああ。」


不良は投げられ、仲間とぶつかった。その隙に育美は千里の手を引き、走りだした。


「いい加減にしろ!死ね!!」


育美はそう吐き捨てると、路地裏を出て、街へと走り去った。その後、不良達は近所の人達の通報により、警察に逮捕された。




「千里大丈夫?」


二人は公園のベンチに座っていた。育美はハンカチで千里が怪我をした所を拭いた。


「育美、ごめんな。クリスマスプレゼント、駄目にしちゃって。」


「いいよ。千里は悪くないから。それより、あのプレゼントなんだったの?」


「・・・ペアウォッチ。」


えっ・・・。それ私が迷ってたプレゼント。被らなくてよかった。


「そうだったんだ・・・。あ、ちょっと待って。」



育美は白いバッグの中から、小さな袋を取り出した。


「開けてみて。」


千里は育美に言われたとおり、小さな袋を丁寧に破いた。すると、中から携帯ストラップが出てきた。


「あれ、これって・・・。」


「そうだよ。私と同じやつ。」


育美は、自分の携帯につけているストラップを千里に見せた。白と黒のビーズに熊みたいな動物のマスコットがついていた。


「あれ、でも俺のと違うよね。」


千里は、ストラップのマスコットについているリボンが、千里のは青で、育美のはピンクで違うことに気づいた。

「だって、千里の携帯と私の携帯、色と形が同じだから分からなくなっちゃうもん。」


確かに。千里と育美は同じ機種だから、前にデートした時もどっちがどっちだか分からなくなった時があった。


「・・・ありがとうな、育美。これ、大事にするから。」


すると、育美は立ち上がった。


「駅前にね、クリスマスツリーのイルミネーションがあったから、見に行こう。」


そう言うと育美は千里を支えながら歩き始めた。


「悪いな、育美。最後まで迷惑かけて。」


「ううん。私にとって千里といることが、最高のクリスマスプレゼントなんだもん。」




俺にとって、クリスマスデートは最悪だった。しかし、育美が喜んでくれたからよかった。俺にとって、育美の笑顔が・・・最高のクリスマスプレゼントなんだ・・・。

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