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LOVE DAYS  作者: 美環
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育美の過去


あの日から一週間後、真奈美は変わった。短かかった髪をエクステをつけてロングにしているし、制服の着方も派手になった。


「真奈美、何かあったのかなぁ・・・。」


加奈達も心配していた。育美は不安でたまらなかった。まるで、あの時のようで・・・。




三日後の夜、外は雨だった。育美はベッドの上にいた。フードのついたシマシマパーカーに白のホットパンツと、ちょっと寒い格好だが、暖房の効いた部屋の中にいるので大丈夫だ。


育美は、ペンダントの中の写真をずっと見ていた。


「・・・麻美。私どうしたらいいかな?」

その時、育美の母親が、なにやら慌てた様子で部屋に入って来た。


「育美、大変。さっき真奈美ちゃんのお母さんから電話があって、真奈美ちゃん、まだ家に帰ってないって。」


ふわふわの髪に綺麗な顔立ち。服装もブラウスに紺のスカートと、さっき仕事から帰って来た服装だった。


「嘘・・・真奈美・・・。」


育美は携帯とペンダントを持って玄関を飛び出した。


「どこ行くの?育美。」



育美は夜の雨の中を走っていた。びしょ濡れになりながらも育美は必死で真奈美を探した。


「真奈美・・・どこにいるの?」

育美は携帯を取り出し、千里に電話をかけた。


「もしもし千里、育美だよ。実は、真奈美が行方不明なの。千里も一緒に探して、お願い。」

育美は、電話を切ると、再び走り出した。


三分後、育美はマックの前で千里と出会った。千里は、黒のジャンバーにジーンズ。そして手には、二本の傘を持っていた。


「千里、真奈美見かけた?」


育美は、千里から傘を一本もらった。


「それが、真奈美さんに電話をかけたんだけど、全然連絡がとれなくて。」


「う〜ん。じゃあ、どこにいるんだろう?」


育美は、雨の中でひたすら頭を抱えていると、


「孝太郎、マック行こう。」


「あぁ、行こうか。」


育美と千里は、聞き覚えのある声に驚き、思わず建物の壁に隠れた。二人は、一本の傘の中でらぶらぶな雰囲気の孝太郎と綾香を見た。育美は、すぐさま二人に詰め寄った。


「孝太郎、真奈美見なかった?」


「はぁ?」


孝太郎が馬鹿にするように言うと、千里も詰め寄った。


「お前、真奈美さんを勝手に捨てといて、早速彼女作るなんてふざけんじゃねぇ。」


「なんでお前達に指図されなきゃいけないんだよ。あいつはもうどうでもいいんだよ。別れて正解なんだよ。」


孝太郎は吐き捨てるように言うと、綾香の手を引いてマックに入ろうとした。その時、育美が孝太郎の服の襟を掴むと、そのまま壁にぶつけた。


「いい加減にしなよ。どうしてあんたはそんなことが言えるの?どうして真奈美の恋心を簡単に裏切れるの!真奈美がどれだけあんたのこと好きだったか、あんたにはわからないの!」


育美は、狂ったように叫び続けた。すると、孝太郎は育美を突飛ばした。


「うざかったんだよ、あいつのこと。べたべたべたべた付きまとってきやがって本当にキモかったんだよ。いっそのこと死んじまえば・・・ぐはっ!」


千里は、孝太郎の顎に一発パンチした。孝太郎は宙に飛び、そのまま地面に落ちた。


「俺の彼女を殴った罪は重いからな。」


千里は、地面に倒れた育美を起こして、また走り出した。

それから五分後、なんと真奈美からメールがきた。


「育美・・・ありがとう。」


なんとも切ない内容だった。すると、


「ねぇ、育美。」


千里は廃ビルの上に何かを見つけた。育美は上を見ると、なんとそこに真奈美がいたのだ。


「大変、真奈美!」


育美は大急ぎで廃ビルの屋上に向かった。千里も育美のあとを追いかけた。




ボサボサの髪に唇の端が切れて、雨でびしょ濡れの顔。高そうな茶色のジャケットに白いスカートに花模様のベルト。踵が擦れたブーツの真奈美。真奈美は丸い形のペンダントの写真を見ていた。

「孝太郎・・・。」


真奈美は孝太郎との思い出を思い出した・・・。




『俺と付き合って下さい!』

孝太郎が言ってくれた言葉。


『これ、誕生日プレゼントだよ。』

孝太郎が初めてくれたペンダント。


『元気だせ。俺がついているから。』

風邪を引いた日、孝太郎がくれたメール。


『クラスが違っても、俺は真奈美だけだから。』クラスが違うって言って泣いた時、孝太郎が言ってくれた一言。真奈美にとって、孝太郎はすべてが愛しかった。真奈美にとって、孝太郎は宝物だった。しかし、


『別れよう、さよなら。』孝太郎から言われた一言。孝太郎は真奈美を捨てて、あの女の子を選んだ。悔しかった。辛かった。でも、いいんだ孝太郎。孝太郎があの子と幸せになってくれれば、もう思い残すことはないよ。ありがとう、大好きだったよ孝太郎・・・。


真奈美はペンダントをポケットの中に閉まうと、手すりに掴まった。


「駄目。真奈美!」


育美は、飛び降りる寸前の真奈美を止めた。


「来ないで!」


真奈美は掠れるような声で叫んだ。二人は、その声に驚き、ぴたりと止まった。


「育美、お願いだからほっといてよ。私、育美には迷惑かけたくないの。」

「ほっとけないよ。だって親友だもん。大事な友達なんだもん。」

育美は涙が溢れてきた。ここで真奈美を死なせたくない。死んだら、あの時と同じになる。


「真奈美、お願いだから馬鹿なことはやめて。これからまた新しい恋を始めたらいいじゃん。」


育美は真奈美を必死で止めようとした。しかし、


「孝太郎がねぇ、私と別れたら幸せになれるって言ってたんだ。だから、孝太郎の願いを叶えないといけないんだ。」


育美は一瞬、頭の中が真っ白になった。


「どうしてそこまでしてあいつのことかばうの?もうあいつのことはどうでもいいんだよ。」


育美は飛び降りようとする真奈美を力ずくで止めようとした。すると、真奈美の態度が一変した。


「私には孝太郎しかいないの。私は孝太郎だけが愛すって決めたのに。育美みたいに幸せな恋しかしてない人にはわからないんだよ!」


真奈美は育美を思い切り突飛ばした。育美は地面に倒れた。すると、育美のポケットからペンダントがこぼれ落ち、ペンダントの蓋が開き、写真が真奈美の方を向いた。


「これって・・・。」


真奈美は見たことのあるような顔をして言った。


「・・・二年前、このビルで飛び降り自殺したっていう中学生、私の・・・小学校の時からの親友だった。」


育美は、自分の過去を語った。


「二年前、この子が死ぬ前に真奈美と同じように、失恋して死んじゃったの。真奈美と同じように、ひどい別れ方してもう生きたくないって言って死んじゃったの。」


育美は目にたくさんの涙を浮かべながら語る。それに吊られて真奈美や千里も涙を流す。


「・・・だから、もう死なないで。もし真奈美がまた失恋したら、私が慰めてあげるから、私は真奈美の涙を拭いてあげるから、だから・・・だからもう死なないで!」


育美の声が、空に響く。


「・・・うっ・・ううっ・・・ごめん・・・ごめんね、育美・・・。」


二人は雨が止むまで泣き続けた。




朝、三人は湖がある公園にいた。真奈美はペンダントを見つめていた。そして、それを湖に捨てた。


「私、前向きに生きるよ。そして、新しい恋人を見つけんだ。」


「うん、頑張ってね。」




それから十日後、真奈美は新しい恋人を仲良くしていた。相手は隣の学校のイケメンだ。


「真奈美、幸せになれて良かった。」


「本当だよね。」




クリスマス一週間前に起こった、ちょっと悲しい事件でした・・・。

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