「確執」
あの夜から魔女はアルフレッドを立派な大人に育ててきた。
アルフレッドは勉強こそできるものの、王宮からあまり出ることが無かったためか一般的な知識はあまり身についていないようだった。
そこで魔女はたびたびアルフレッドを森へ散歩に連れていった。その度に彼は新しい物発見しては魔女を質問攻めにした。
散歩をしていたある日、
「魔女様、あの黒くて大きな鳥はなんというのですか?」
森の木に止まって休んでいるのを見て幼いアルフレッドは問う
「あれはカラス、私と同じ嫌われ者だよ。」
答えを聞いてむっとするアルフレッドは
「なら私が魔女様を守ります。」
幼いアルフレッドに動物の名前や植物の名前、そして《守りたい》という気持ちを教えたのも魔女であった。
その気持ちからアルフレッドは剣術などの戦い方も魔女から教わった。最初は1人で持つこともままならなかったが、大きくなるにつれアルフレッドの剣の腕は上がり、立派な騎士になれるほどの腕前となった。
「お前はもう立派な騎士だね。」
「ありがとうございます。」
そう言った彼の真っ直ぐな瞳はただひたすらに魔女に対しての愛と忠義を示すようであった。
「頼もしいねえ…あんなに可愛らしかった姿はどこへ行ってしまったんだい? 」
そう冗談を言いながら魔女は部屋の隅にある棚から一着のサーコートを取り出した。その昔魔女が愛した男の形見だという。
「お前にはなにか重なるものがあってね。やっと着れるような頃合いだろう。」
カラスのように黒いドレスの魔女とは対照的に、純白の白い翼があしらわれたとても昔とは思えないほど美しいサーコートであった。
「お前はきっと、強い騎士になるよ。」
アルフレッドは感銘を受け、魔女の前に跪いてこう言った
「魔女様、必ずあなたを守り抜いて見せます。この身に代えても。」
アルフレッドははにかみながら魔女の手を取り、その甲にそっと口付けをした。
時を同じくして、ヴィルトワ王国ではある噂が流れた。
“アルフレッド様は生きている”
王国中はこの話題で持ち切りとなり、国王であるバルタサールの耳にもこの情報は渡った。
「バルタサール様。アルフレッド様が生きているとの情報が入りました。」
幼い頃から世話係を務め、側近となったユリウスからの情報だった。
「兄様が…!」
驚きを隠せない様子でバルタサールは椅子から飛ぶように立ち上がった。間髪をいれずバルタサールは
「そうとなれば捜索隊を出そう。一刻も早くだ。」
と言い放ち、騎士団に捜索班を組織し、その班長に自ら立候補した。
「13年もの長い間、兄様は西の森にいらっしゃったと言う!一刻も早く救出し、我らの王国に魔女に屈しなかった英雄を迎え入れようではないか!」
これを皮切りにバルタサール率いる捜索班は西の森へ進軍した。
西の森に到着するとともにバルタサールはこう言い放った。
「よし、この森を焼き払え。」
班員たちは困惑し、もう一度命令を確認した。
「焼き払うのだ!この森を!!悪しき魔女の棲む森など必要ない。」
冷酷な表情をひとつも変えず彼は声を荒らげた。
「殿下、アルフレッド様はどうなさるおつもりですか!」
班員たちはバルタサールの暴挙に戸惑っていた。
「兄様の件はその後だ。」
あまりの威圧感に屈した班員は困惑を残したまま準備に取り掛かった。
「放て。」
冷酷かつ非常にも彼の声は響き渡った。




