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君の住む彼国  作者: McQ
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「弱い心」

1486年8月、ヴィルトワ王国の国王であるエリオットはこれ以上魔女狩りによる混乱を拡大させないために、一般の騎士団の中でも群を抜いて優れた騎士達を選抜して、自らの名の元に総勢300人にもなる“ヴィクトル特別騎士団”を組織した。西の森の魔女を探し出し、首を持ち帰るという目的でまもなく西の森へ向けて出発した。これに同行したのは王子でありエリオットの息子であるアルフレッドとバルタサールだった。これは二人の息子を戦場に慣らし、強い男に育てるというエリオットの意向であった。


馬で移動して数日、西の森を目の前にして日が暮れたためそこでキャンプを開き、夜を明かすこととなった。月明かりに照らされたキャンプ地では多くの団員たちが次の日の捜索活動と戦闘に備え酒と軽い料理で賑やかに英気を養っていた。そんな中何も知らないアルフレッドとバルタサールはピクニックを楽しむのようにを過ごしたためか、周りより早く眠りについたのだった。


次の日の朝、騎士団は森の中へと進行して行った。勇ましい団歌と魔女を卑下する歌を歌いながら彼らは進み、日が落ちるまで捜索は続けられたが、一向に見つからず騎士団はキャンプ地へと戻った。

エリオットが捜索活動終了を告げる号令を出そうとしたその時、

森から赤い閃光が漏れてきた。その瞬間、草原の土は盛り上がり爆弾のように破裂した。それに巻き込まれた団員は重傷を負い、周りの団員たちはすくみ上がってしまった。

「西の森の魔女だ…俺たち…魔女を怒らせちまったんだ…」

団員のひとりが口にした言葉と共に恐怖が騎士団全体を包んだ。そして森から現れた華奢な女性。

黒く艶やかな長い髪、全身を包む黒いドレスと閃光、そして高らかな笑い声。誰もが死を覚悟した瞬間だった。

それをかき消すかの様に、エリオットは屈強な雄叫びを上げて騎士団を鼓舞した。それと共に魔女に向かって剣を抜き、立ち向かっていく団員たち。

しかし無情にも彼らの攻撃は魔女に届くことなく、力なく敗れていく。

次々に倒れていく人々とその悲鳴。無残にも切り刻まれた死体。主人を失くした馬。ひしゃげた剣。

無残な光景に戦意と勝機を失ったエリオットは片手にバルタサールを抱え、側近のアーロン・ロヴネルにアルフレッドを託して退却した。


王国に帰ってきた騎士団一行の殆どは形見や遺体すらもなく帰国し、残された数名は自らを恨み、悔やみ、そして魔女を恨んだ。

国王のエリオットは帰国後、民衆の前で

「私の杜撰(ずさん)で無謀な作戦のせいで多くの団員たちを失うことになってしまったことを深く謝罪したい。本当に申し訳なかった。」

と謝罪の言葉を口にした。そして遺族の元へ自らの足で向かい謝罪を繰り返した。


「私はなんてことを…」

王宮でもまた、大切な家族を1人失ったエリオットが涙を流していた。

側近のアーロンと共に息子であるアルフレッドを失くしたのだ。

エリオットは何度も何度も自分を責め立て、妻のマルティナと共に悲しみに暮れた。彼はその後王権をまだ幼いバルタサールに譲り、

「私のように愚かな王になってはならない。愚かな者は必ず自らを滅ぼす。バルタサール、お前は正しい王になってくれ。」

そう言い、人との関係を断ち切って1人で過ごした。

バルタサールは世話係だったユリウスから政治学や王としてあるべき姿を学び、若干5歳にしてヴィルトワ王国の国王に即位した。

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