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プロローグ
誰もが羨むような容姿をしていたら。
誰かに誇れるようなことがあったら。
誰かと幸せに満ちた恋愛をしてたら。
少しくらい、生きた心地がしたんだろうか。
「ーー……」
カーテンの隙間から溢れる光が眩しくて目が覚めた。少し気怠い体を起こすと、ぱたぱたと水滴が落ちた。汗かと思ったが、どうやら違うらしい。
「……涙……」
目から零れ落ちるその水滴は、拭っても拭っても止まらなかった。次から次へと溢れ出てきて、布団を濡らしていく。
時々、こういうことがあった。朝起きると、泣いている。
何か悲しい夢を見ていたのだろうか。わからない。
だって、いつだって目を覚ました時には何も覚えていない。夢の内容を覚えていないから、どうして自分が泣いているのかもわならなかった。
でも、なぜだろう。今日は違った。
忘れてしまっていたのならよかったのかもしれない。こんなに苦しく切ない気持ちになるのなら、覚えていなくてもよかった。
私は今日も、夢を見ていた。
そしてこれがおそらくきっと、君の夢を見る最後の日だったのだろうと思う。