7話 出会いは突然になの
7話目。少し長くなりましたw
森の奥から悲鳴が聴こえた。おそらく魔物に襲われているのだろう。
一般人、それとも同業者か?後者なら少し気が楽になるのだが・・とにかく急ごう!
「助けてぇ~~」
見つけた!って、ちょっと待って・・・なにしてるの!
要救助者を発見できたが、その光景に驚いてしまった。
逃げてくる人の後方、グレーウルフがざっと目算でも30体弱はいるだろうか・・・
こんな状況にどうやったらなるのか教えてほしい。
「そこのあなた、早くこっちに来なさい!」
「助かりますぅ~~」(涙
あの数の動く敵に魔法で正確に射貫くのは、まだ練習が心もとない。
接近戦で先に数を減らすのが妥当だろう。
魔物と私の距離、約200m。逃亡中の人と魔物との距離、約50m。
帯刀している刀の柄を掴み、魔力を流し込む。
さっきは純粋な魔力だけだったが、今回は風属性の魔力。
属性魔法の魔力を流し込むことで、刀に込めた属性の特性を付与できる。
風属性は刀身からの斬撃を飛ばすことができる特性を持つ。
流し込む魔力量を微調整する余裕もないので初めての時の約2~3倍くらい?流し込んだ。
私の横を通り抜けた救助者は、近くの木の裏に隠れ、恐る恐るこちらを見てくる。
まずは先手必勝!【居合い-風牙】
左腰、右腕からの神速の抜刀により生まれた風。(所謂、鎌鼬)
魔物の集団に襲い掛かり、手始めに10体、薙ぎ払う。
『俺のターンはまだ終っていないぜ!海〇』(闇〇戯風
すかさず駆け出し、跳躍する。上空から今度は右腰、左腕からの【風牙】を地上に向け、放つ。
プラス7体撃破。敵の後ろに着地し、回り込む。
鞘から2本の刀を抜き去ったことで【武術の才:二刀流】+【刀剣舞踊】スキル発動。
残りの集団に突っ込む。敵の側面を駆け抜けながら、刀身を振るう。
鋭い爪の攻撃も難なく回避し、体を捻り、カウンターで一撃を入れる。
斬撃→回避→回転→斬撃を繰り返す。
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見入ってしまう———
白髪の少女が織りなす、蒼と紅の世界に。
私は瞬きをすることすら忘れ、視線を一点に向ける。
「すごい!!」
初撃のあれは風属性魔法かしら?なんて威力なの。
刀を媒介にして発動してる様だけど、あんな魔法、私は知らない。
続けて、魔物の側面を駆け抜けた彼女、コンマ何秒か遅れて次々と血しぶきが上げる。
一体いつ斬撃を繰り出しているのか判らない剣速。
青く透き通った2本の刀身に、木漏れ日で照らされ、淡く煌めく。
戦闘開始2分足らずで、30体弱ものグレーウルフが地に沈む。
2本の刀を持ったまま、こちらに歩み寄り、目の前で仁王立ちする少女。
未だ警戒を解いていないのか、少しピリピリとした殺気が感じ取れる。
「あなた、名前は?」
「あっ!すいません。助けていただいてありがとうございます」
「申し遅れました。私の名前は、セナって言います。見ての通り、兎人です」
「セナね、私はミキ・シラサギ。ミキでいいわ」
「はい、ミキさんですね」
「そうだ、何か拭くもの!返り血で汚れましたよね」
「大丈夫。血なんてついてないから」
「えっ・・!!」
彼女の全身を改めて凝視する。血のシミがどこにもない。
ウソっ!あれだけ激しい戦闘を繰り広げておいて!!驚愕の顔を彼女に向ける。
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戦闘を終わらせた私は、助けた人の元へ歩み寄る。
死骸の血の臭いを嗅ぎつけて、いつまた増援が来るか分からないので、抜刀したまま警戒する。
助けた人の名前は『セナ』と言うらしい。
初めて見たとき、長い耳を確認できていたので案の定、兎人の獣人だった。
今彼女は、私の体を穴が開くんじゃないかと思えるくらい、全身を酌まなく凝視している。
いい加減、鬱陶しいので引きはがす。
「セナは、どうして魔物の大群に追われてたんですか?」
「それは・・・。その・・・」
「最初は3体くらいだったんですよ。逃げながら戦っていたら、他の群れとも遭遇しちゃって・・・」
「対処できる限界を超えたので、逃げ回っていたと」
「その通りでございます」
「逃げ回るうちに、どんどん群れが大きくなっちゃって。死ぬかと思いました!」
「本当の助けていただいて、ありがとうございます」(ペコリ!腰の角度は90度)
やれやれ、彼女からドジっ娘の匂いがする。
えっ!私もドジっ娘だって!!何を言ってるんですか(プンプン)
彼女のほうが絶ぇ~対!ドジっ娘属性ついてますよ。
徐にセナを鑑定する。
―ステータス―
名称:セナ
Lv :10
性別:女性
年齢:15歳
種族:獣人族【兎】
職種:弓術師
冒険者ランク:【F】
身長:150cm(全長:180cm:耳の長さ込みw)
体重:ひみつ♡
スリーサイズ:B90(E)・W63・H78
HP:920/1450
MP:1,850/2,100
ATK:110(+500)
DEF:160(+900)
INT:210
SPD:400
武器:ウッドアロー(木製の弓矢-下級)攻撃力+500
防具:革鎧の軽装備一式 防御力+400
金属製の胸当て 防御力+500
~魔法~
・風魔法(Lv.2)
~耐性~
・火魔法:Lv.1
・風魔法:Lv.2
~スキル~
・弓術の才:中級
・毒、麻痺、催眠(矢に効果付与)
・魔術の才:下級
見た目は、大人しそうな感じ。
髪は腰まである明るい茶髪のロングヘアー。後ろで編んで1本に纏めてある。
眼は紫。肌もきれいで顔の整った美少女さん。
白い耳は、左はピンと伸びているのに、右は途中で折れて垂れている。
耳と同じく白い毛玉のようなしっぽ。
服装は黄緑を基調とした上着とスカート。白いハイニーソに革製のロングブーツ。
何この小っこい生き物。可愛い!(確信)
レベルは魔物と同じかぁ~・・。弓であの数を相手するのは、確かに無理だ。
ん?私より1つ年下なんか。でも・・・。(チラッ!
視線があるところに向けられる。胸当てと上着ぎに隠れている双子山。
『その年齢で、何を食べたらそんなに育つのよ・・・・・』
ロリ巨乳ここに現る!
じっくり観察していると、セナの顔が紅潮し、内股になってモジモジ動く。
「あのぉ~、あんまり見つめられると照れてしまいます」(//×//)モジモジ
「あぁ~、ごめんなさい。とりあえず所々、かすり傷で怪我してるから治そう」
「アリア、悪いけどお願いしてもいいかな?」
ポケットにいる相棒に声をかけると、飛びだしてきた。
「分かった、任せて!」
「かの者に癒しの祝福を ヒール 」
セナに治癒魔法を掛けてあげる、みるみる傷が無くなる。
その様子を見ていたセナの視線がアリアに注がれる。
「ピクシー!?」
「私生まれて初めてお会いしました」
「そうなの?確かにピクシーの数は少ないうえに、魔術の才がないと見えないからね」
「その子の名前は『アリア』。最近、私と一緒に旅をしている相棒よ」
「初めましてアリア様、治癒魔術、感謝いたします」
「アリアです。こちらこそ、よろしくですぅ~」
セナがアリアに対して、片膝をつき、拝礼する姿勢をとる。
神の使いって信仰はあながちウソでもないのか?私がおかしいのかな?(ポリポリ
頭を掻いていると、背筋にヒヤッとする感覚が襲い、振り返る。
「アリア、セナ。何か来る!」
二人にも注意を促す、すぐに寒気の正体が現れた。
―ステータス―
名称:グレーハウンド
Lv :25
種族:魔物【狼】
HP:3,500/3,500
MP:400/400
ATK:1,000
DEF:500
INT:40
SPD:700
~スキル~
・遠吠え(支配下の仲間を呼び集める)
こいつがこの群れの親玉か。今までの奴と比べ、かなりデカイ。
地上から頭まで3mはありそうだ。レベルも高い。
それにあのスキルも使われたら厄介だ。急いで片づけたほうがいい。
即座に駆け出す。が、グレーハウンドの前足の攻撃が襲い掛かる。
後ろに飛びのき構え直す。
「アオォォォォォォォォォン!!」
グレーハウンドの遠吠えが響く。
しまった!!
苦虫を嚙んだように、顔をしかめる。
仲間を呼ばれてしまい、木々の間から1匹、また1匹と姿を現す。
総勢60匹弱のグレーウルフたちに囲まる。逃げ道を塞がれてしまった。
「ミキさん、どうしましょう」
「殺るしかない。アリアはセナのサポートをお願い」
「セナは弓で少しでもいいから迎撃。あの親玉はなんとかする」
「「わかりました」」
正念場だ!せっかく転生したのに、こんな所で死ぬなんてゴメンだ。
グレーハウンドを正面に見据え、周囲にもアンテナを張り巡らせる。
「攻撃開始!」
ミキの開始の合図と共に、3人が一斉に行動する。
セナは弓を引き絞り、正確に1体ずつに矢を射貫く。
アリアはいつでも治癒魔法が使えるように待機。
私は土魔法を行使するべく、イメージを固めていた。
とりあえず数を減らしたい。全体に攻撃できる魔法を考える。
イメージは【針】。地面より突き出す針山。
敵の腸を貫く鋭い針。よし、いける。地面に刀を突きたてる。
「アースニードル」(範囲攻撃)
自分達が立っている地面以外の周囲に、無数の鋭い針状の突起が隆起する。
半数が貫かれ、宙吊りになっていく魔物たち。まさに針地獄だ。
残り半数を狩るべく、舞踊る。
確実に数を減らし、セナたちへの負担を軽減させたい。
だが、囲まれている状況では対処が難しく、とり零してまう。
「「きゃぁぁぁぁぁ」」
セナとアリアにグレーウルフが4体同時に襲い掛かるのが見えた。
『クソがぁ~~、間に合え!』
「アイスランス」×4
投擲された魔法は全弾命中し、2人への危険を排除する。
しかし————
ミキの視界が一気に反転する。
横から、グレーハウンドの爪攻撃による猛攻が襲った。
一瞬の隙を突かれ、薙ぎ払われ、木の幹に背中から激突する。
「かはぁっ!!」
衝撃で肺から空気が一気に吐き出される。背中にも多少痛みを感じる。
かなりの威力のある攻撃だったのだが、体のどこにも致命傷はない。
「グガァァァァァァァァ!」
魔物の叫び声が轟く。
グレーハウンドのものだった。
よく見ると、攻撃した方前足の爪が砕け散り、鮮血が流れている。
なんで攻撃して来た魔物の方がダメージ喰らってんだよ!?
『・・・・・・・・・・・・・・』
ポン!(頭の上に電球が光るw
【自動防御(体表に常時薄い透明な魔力の鎧を纏う-ダイヤモンド並み)】
そんなのありましたねぇ~wwすっかり忘れてたわ。
( ̄ー+ ̄)ニヤリ
『ねぇ。今、どんな気持ち!』
『自分が攻撃したはずなのに、自慢の爪が砕けて。今、どんな気持ち』
『ほぼ無傷で、ぴんぴんしてる私の姿見て。今、どんな気持ち』
一転してこのゲス具合である。
「さて!おふざけはこの辺にして、お前には早々に退場してもらいましょうか」
闇魔法。
相手の行動を制限・阻害・拘束する魔法をイメージする。
「シャドーバインド」
グレーハウンドの陰から触手の様な物体が這い出し、絡みつく。
四肢の動きを封じられ、身動きが取れず、踠く敵。辺りに土埃が舞い上がる。
トンッ———————
グレーハウンドの眼前にその姿はあった。それを視るグレーハウンド。
般若のごとき形相。金眼の瞳孔は縦長に絞られ、獲物を睨む。
その手には一振りの刀。刀身には蒼白い火花が散る。
「さっきのお返しだ!存分に味わえ!!犬ッコロ!!!」
雷魔法が付加術による効果で蒼龍刀を覆う。
雷の特性、それは貫通力。神速の突きが放たれる。
「雷斬」
グレーハウンドの意識はそこで暗闇にのまれ、生涯を終えた。
あとは残党狩りの時間だぁ~。
頭が居なくなって、統率の取れなくなった魔物なんて、烏合の衆も同然。
数分で美味しくいただきました。
損傷が少ない魔物からはもちろん、毛皮もいただきました。
意外と、グレーハウンドの毛皮も無事だったので回収し、アイテムボックスにしまう。
「アリア、お疲れ様!」
アリアの頭を撫でてあげる。
「私より。ミキは大丈夫なの?思いっきり吹っ飛んで木にぶつかってたのに!」
「大丈夫だと。ほら、どこもケガしないし!」
アリアがまた難しそうな顔をするが、「そう」と言って、私の頭の上に乗ってくる。
セナも怪我することなく、切り抜けれたようだ。良きかな×2。
彼女に近寄り、背中に手を回し、抱き寄せる。頭を撫でながら声をかける。
「セナもお疲れ様。怖かったね。頑張ったね」
優しい言葉をかけて安心させてあげる。
余程怖かったのだろう。よく見ると未だ震えていたが、治まり始める。
顔を覗き込むと、大粒の涙を流し始めていた。
「ぐずっ。怖かったです。うわぁぁぁぁぁん」。・゜゜・(>д<;)・゜゜・。
ありゃりゃ・・・我慢してたのが溢れてしまったらしい。
もう一度、強く、優しく抱き留めてあげる。
私の胸に顔を埋めて再び泣き出してしまったので、落ち着くまでそのまま。
10分後———————
「もう大丈夫?」
「はい、すいません。恥ずかしい所をお見せしました」
「まだ15の子供だもの。気にしなくていいよ」
笑みを浮かべて、セナの頭をポンポンと撫でる。
今度は急に顔を紅潮させるセナ。私の方をボゥーっと見つめてくる。
『ミキ、15歳はもう成人だよ』
ありゃ、そうなの。(初耳だよ
アリアが念話で教えてくれる。
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この気持ちは何だろう。
さっきまで感じていた恐怖が薄れていき、温かい何かで心が満たされていく。
私は今、ミキさんの胸の中で泣いている。すごく心地いい。
涙が頬を伝い、彼女の服を濡らしてしまう。
泣き止んだ私を心配してくれる手が頭を撫ででくれる。
自分でも分かるくらい、顔が熱くなる。
未だ分からないこの感情。彼女の顔を見ると心臓が高鳴る。
あぁ~そうか!
『好き』になってしまったのだ。
自分も危険な目に遭遇しても尚、私を助けてくてた彼女を。
強く凛々しく、それでいて刀を振るう姿は舞の様に可憐で、時折見せる笑顔は可愛いらしい。
「お姉さま」(ボソッ
誰にも聞き取れないほど小声で呟く。
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いつまでもここに居る理由もないので、そろそろ街に戻る提案をする。
反対意見もなく、3人で街までの道を駆け出した。