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県立図書館のお話  作者: 村咲 遼
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大きな荷物を抱え、立羽が帰ってきました。

しばらくして、乱暴に扉が開いた。


「たっだいまー‼揚羽あげは。おーほほほ‼久々に可愛いお洋服を一杯選んじゃったわー‼瑠璃るりの服を選びに行く時に、『あぁ、可愛い……。こんな服着せたいわー。でも、私に似ちゃったから、駄目かしら』って思っていたのよー‼」


と言いながら、荷物を抱え現れたのは立羽たては

化粧をしている……少し目が赤い。

ソファの空いているところに荷物をおき、


「あぁ、買い物って必要最低限じゃないと、アイツが借金ばっかりしてて……やめてくれなかったのよ。ギャンブル。私が稼いでたお金もね……お母さんやお父さんには言えなかったんだけど。あぁ‼楽しかったわぁ」

「姉貴。病院だから。大騒ぎはダメだよ」

「あら、そうだったわね。で、夏蜜なつみちゃんは?」

「痛みで一度目を覚まして……そうしたら、『パパに会いたくない。怖い、嫌い』って泣き出して、『パパは言ってた。パパが再婚するお姉さんが、夏蜜はいらないって言うから……嫌われてる』って言ってた」


ショックを受けた顔に、揚羽は、


「大丈夫。姉貴が何回も引き取りたいって言ってたことと、うちの家族も夏蜜ちゃんを歓迎してたんだよ。でも、『夏蜜は、前の嫁の両親に引き取られていて、養女にしたいと言われていて、向こうにいます。向こうの家もその気が強いそうです。ですので、無理に引き戻すのもまだ小さい夏蜜に環境を変えることになるので』って言っていたんだ。でも、姉貴が会いたいって言う度に、あれこれ言うから言えなくなってて……て、もう、目に涙を溜めてて……」

「……嫌われてるかしら?」

「それはないみたいだよ。あの人には会わせないからね?って言ったら嬉しそうに笑って、落ち着いて眠ったし。父さんから聞いた?」

「あ、黒田さんだったかしら?父さんが運転しているからって代わりに伺ったわ。叔母さんの養女にって。そしたら、妹として一緒にいられるわー‼うれしい……でも、この怪我はかなりかかるわね……小学生だから、今通っている学校には……」


保育士として働きながら育児をしている……現在、育児休暇中である……立羽は、色々と事情のある幼児や家庭を知っている。

その為、心配しているのだ。


「転校でも、母さんに姉貴がいるから大丈夫じゃないの?」


揚羽は軽く告げる。

反対側の窓側で、瑠璃に外を見せていた真澄ますみは振り返り、


「私が?」

「母さんと姉貴なら、夏蜜ちゃんに何かあったら突撃しそうだし。夏蜜ちゃんは控えめだから、遠慮しそうだけど、それも先回りしそうだし。良いんじゃないの?」

「まぁ、怪我が早く良くなれば一番なのよね……」


心配そうに顔を覗き込む。


「骨折が良くなれば、良いけれど。顔に傷が残るようなら、図書館ではなく、あの男を訴えてやるわ‼」

「姉貴。静かに。病院だから。それに、鼻骨は軟骨で、ずれた部分を治した上でギプスだから、鼻骨は約一週間でギプスはとれるよ。でも打撲と二ヶ所の骨折が酷いから……動けるようになるまでしばらくかかるんじゃないかな。足は大丈夫だから落ち着いたら歩いたり、散歩して、特に姉貴や母さんがついててあげるといいと思うよ」

「あら、揚羽は?」

「俺は学校があるだろ⁉一応首の捻挫って言っても、授業はあるんだよ。明日は日曜日でも、明後日から湿布を貼って行くつもりだよ」


揚羽は告げる。


「帰りとか、時間があったら来るけど、仲良くしてよ?」

「あ、そうだわ。見てよ‼これこれ」


紙袋から取り出したのは、小さい小花模様の少し緩そうなワンピース。

しかも袖にもスカートの裾もレースがあしらわれ、可愛いが……。


「大きくない?」

「ここに後ろに回してリボンに結ぶのよ。サイズは大体見ればわかるけれど、少し長く着れたら嬉しいかしらと思って。それにね?バッグが可愛いのをと思っていたら、ほら、見てちょうだい。丸いかごバッグ。お財布も、お揃いにしちゃったわ。他にくつのサイズはチェックしていっていたのだけど、サンダルも、靴も可愛いのよね。この年頃の子の靴って。目移りしちゃったわ」


見せていく。

出していく娘に近づき、


「あら、可愛いじゃない。半ズボンも似合いそうね。上のシャツも絵柄が可愛いわ」

「でしょう?母さん。揚羽は男だから着せ替えもつまらなかったけど……」

「何いってるんだよ。姉貴は。俺にスカートとか自分の七五三の着物を着せただろ⁉」

「似合ってたんだもの……本当にあんたって地味な性格なのに無駄なほど綺麗な顔よね。モテてない?」


姉の言い出しそうなことは充分分かっている揚羽は、


「モテるわけないだろ。そんなのいってる間に、夏蜜ちゃんのパジャマとか当座の身の回りのものをしまっておきなよ」

「このワンピースとかは飾っておくと良いわね。バッグも置いておいて、片付けて貰うのがいいと思うのよ」

「片付けましょうね」


と、着替えなどの数々を逆に広げていく母と姉にため息をついたのだが、翌日、日曜日に一旦宿題と、月曜日の通学の制服を取りに戻った揚羽は、父が、何故か嬉しそうに、何かを待っていた。


「どうしたの?父さん」

「いや……夏蜜の部屋を、お前の横に決めたんだが、机や家具類を母さんと見に行こうと思って。どこに行こうかと思っているんだよ」

「姉貴の机は……」

「駄目だ‼父さんは‼娘に買ってやりたいんだ‼」




うちの家族は、夏蜜溺愛が決定しているのだと思い知った揚羽だった。

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