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県立図書館のお話  作者: 村咲 遼
20/27

穐斗は穐斗、杏樹は杏樹、結愛は結愛でのんびりです。

「ねえパパぁ」


父親にだっこされていた杏樹あんじゅは大きなエレベーターに、


「エベレーター‼ブーン‼わぁぁい‼」


と喜んでいる。


「違うよ~?杏樹。エスカレーターだよね?パパ?」

「あれ?エレベーターじゃなかった?エスカレーターだった?」


穐斗あきとも素でボケれば、母親のほたるまでも首をかしげる。


何てボケた……いや、それはそれで可愛い親子に、祐也ゆうやは、


「蛍の、ママの言う通りエレベーターや。確か、エスカレーターはこの病院にあったで?」

「えっ?エスカレーター‼あるの?」

「でも降りるところを登ったり、迷惑かけたらいかんで?」

「うん‼でもパパ、穐斗観覧車乗りたい‼」


両手をあげてはしゃぐ息子に、


「穐斗?観覧車は遊園地やろ?」

「あ、兄さん……」


ごそごそと持っていたバッグを探した立羽たてはは、一枚のチケットを差し出す。


「これ……あっちの複合施設に併設されとる大きな観覧車に乗れるチケット……夏休み前まで無料で乗れるんよ……お使いや」

「えぇんかな?家族で乗るんやないんか?」

「……瑠璃るりはまだ小さいし、夏蜜なつみは怪我やけん……」

「でも……」


幼馴染みを見上げ、どんな表情をして良いのか分からないと言いたげに首をかしげ、


「本当はね?もと旦那と瑠璃と行こうと貰っていたの。でもね、あの男は私の実家に毎週のように行っては、おばあちゃんの家とか侵入して……来年すぐに揚羽あげはの受験だから控えてって言ったのに……」

「あぁ、あいつな……」


実は、圭典けいすけは祐也の兄の一平いっぺいと同じ年。

人のことを好悪で表現することのなかった一平が、一回会っただけで、


「あいつ、気に入らんわ。立羽が悲しまんように、祐也、なんかあったら、嵯峨さがさんに頼むんやで?」


と、嫌悪感露に吐き捨てた。

一平は妹のくれないと相談し、自分達の配偶者を忙しいからと式には出席させなかった。


後日、一平の妻が有名なイングランドの俳優のヴィヴィで、紅の夫もウェインだったと知ったときに、圭典は悔しがった。


「何でぞ‼」

「仕方ないじゃない。くれちゃんの旦那さんは、長編ドラマの撮影中よ‼それに、一平兄さんの奥さんは妊娠中‼こんな一般の結婚式に来るわけないでしょう‼」


一応、実家には、実家から門外不出の二組のカップルとその子供たちが、


「おめでとう」


メッセージはあったが、圭典には見せられることはなかった。


「本当に……ごめんなさい。兄さんたちにまで、迷惑かけるつもりなんてなかったのに……」


途方にくれた顔に、ひめが、


「たっちゃん……子育て疲れ?蛍ちゃんより老けて見えるで?おばさん呼ばれるんやない?」

「い、いやぁぁ‼そんなの困るわ‼いや、蛍姉さんは可愛いけれど、負けたって思うくらいだけど、おばさんは嫌よ、まだ言われたくないわ‼」


顔色を変え叫ぶが、悲しげに、


「子育て疲れよりも、もと旦那と暮らすのに疲れたわ……あ、はい。ここの階なの」


首をすくめ、案内していく。


「おばあちゃんと瑠璃と夏蜜がいるわ」

「夏蜜ちゃん?どんな子?年は?なつみって漢字?平仮名?」


媛は興味しんしんに問いかける。


「12才よ。6年生。とっても可愛い子よ。名前は季節の夏に蜜柑みかんの蜜。綺麗な名前でしょう?」

「まぁ、大きい子なの?」

「そうねぇ……華奢な子よ。6年生にはきっと見られないわ」


扉をノックする。


「なっちゃん。おばあちゃん。お客様なの、良いかしら?」


ひょいっと覗き、客たちに振り返る。


「ちょっと元気そう。どうぞ」


扉を開けた。




立羽の顔が覗き、そして扉が開かれるのを、ぞうさんのリカさんとヴィヴィちゃんと瑠璃と遊んでいた夏蜜は振り返る。


知らない人たち……不安げに福実ふくみを見ると、


「あぁ!ゆうちゃんに媛ちゃんやないかね。それに、蛍ちゃんと確かシィちゃんやったなぁ。だんだん、よう来てくれたなぁ」


とにこにこと笑い、夏蜜を見ると、


「なっちゃん?なっちゃんのお父さんのお友だちの朔夜さくやおじさんがおってなぁ……。その朔夜おじさんの子供のゆうちゃんと媛ちゃんや。で、ゆうちゃんの奥さんの蛍ちゃん。あっちの兄ちゃんが媛ちゃんの旦那さんのシィちゃんや。それに大きゅうなったなぁ……」

「こんにちは。ばぁちゃん。お久しぶりです。それと、はじめまして。夏蜜ちゃん。兄ちゃんは祐也です。なかようしてな?」


ニッコリと笑う祐也に、


「は、はじめまして。わ、えと、た、竹原夏蜜たけはらなつみです。よろしくお願いいたします。あの、ごめんなさい。背中を強く打って、痛いので変な格好で……」

「ひどい怪我だったんだね……ちゃんと治さなきゃね」

「あ、それに、元気になったら、家に遊びにおいでや、ね?立羽ちゃんもね?」

「蛍姉さん……良いんですか?」

「かまんかまん。夏で一杯遊ばな、勿体ないで?」


ニッコリと笑う。


「あ、そうや。ばぁちゃん。菓子を作って来ましたんやけど、どうかな?」

「おや、シィちゃん。今度はなんやろなぁ?」


クスクス笑う福実に、


「おばあちゃん。お菓子?クッキーとか?」

「違うんよ。シィちゃんは、京都の老舗菓子舗のボンで、職人なんよ。媛ちゃんと結婚して、こっちに引っ越してきたんよ」

「……お、お、おばあちゃん‼媛ちゃんって……安部媛あべひめ選手?柔道の‼夏蜜、一回だけ会った事がある……え、お姉ちゃんも、知っとるん?」

「幼馴染みなのよ。この破壊魔神と」


大袈裟にため息をつく立羽に媛は、


「お姉ちゃんとたっちゃんが破壊し尽くしたんでしょ⁉うちは怒られ役やがね。もう……あ、夏蜜ちゃん。好きな映画ってある?」

「あ、えっと、『アーサー王伝説』‼あのね、あのね?小学校に入ってすぐ死んじゃった……ママが、DVDでよく見てたの。ランスロット役のガウェイン・ルーサーウェインさんって言う俳優さんが、かっこいいって‼夏蜜も見てて、ガウェイン・ルーサーウェインさんと、グネヴィア王妃役のヴィヴィアン・マーキュリーさんも綺麗だったの‼大好き‼」


即動くのが、蛍。

テレビ電話つきのスマホを操作し、


『もしもし~?ウェイン。ぼくー』

『おーい、蛍。僕は止めなよ。それよりどうしたの?こっちは、義兄さん家族と皆でホームパーティだけど』

『祐也の幼馴染みの立羽ちゃんの妹の夏蜜ちゃんが、ヴィヴィちゃんと何故か、ウェインのファンなんだってー。大怪我してて入院中ー。お話ししてよ』


蛍がニッコリと、


「はい、夏蜜ちゃん」

「えっ?」


祐也が見えるようにスマホを差し出すと、画面にニッコリと笑う青年。


「こんにちは‼なつみちゃん。ウェインです。初めまして」

「……‼ガウェイン・ルーサーウェインさんっ‼ど、どうしよう‼こんな格好……イタタタ」

「あぁ、ダメダメ。怪我をしてるって聞いたよ?無理はしないでね?それに、僕は、実は蛍の甥なの。時々内緒で遊びに行くからね?会ってくれると嬉しいなぁ?あ、いたいた。ヴィヴィ‼」

「なあに?」

「ほら、義兄さんの幼馴染みの立羽ちゃんの妹の夏蜜ちゃんだって。スッゴク可愛いよ。お友だちになったんだ」

「あら‼」


覗き込まれたのは、プラチナブロンドと青い瞳の美貌の女性。

ラフなパンツルックだがそれでも美しい。


「こんにちは‼ミス夏蜜。ヴィヴィって呼んでね?怪我は大丈夫?無理はしちゃダメよ?今度、一平と紅とそちらに行くの。会いましょうね」

「あ、会ってくれるんですか?」

「えぇ。風遊と打ち合わせもあって、戻るのよ。会える日を楽しみに。それに、元気になりますように」

「僕も一緒にお願いするからね。可愛い夏蜜は僕たちの家族。よろしくね?」

「は、はい‼う、嬉しいです……」


夏蜜は、ラフでも美形の二人のツーショットと、メッセージに感激するのだった。

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